空白の二年間編2
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つる視点
目の前で不敵に笑う“若い男”は約半世紀前に世間を騒がし、そしてあの頂上戦争の後再び姿を現した伝説の賞金首『死告シャイタン』だった。
とはいえその姿はかつてつるが見たものとは違い白いツナギにダサい防寒帽姿という、彼を一度でも見たことがある者がイメージする黒衣の姿とは真逆である。更には最後に会った時はつるよりも年上だったにも関わらず、現在の彼はつるの孫といっても過言ではないほどに若かった。
新しく七武海へ加わる事になった『死の外科医』トラファルガー・ローの“部下”として海軍本部へのうのうとやって来たその男は、つるがその正体を追求してもあっけらかんとした態度を取っている。それ自体は昔からなので構わないが。
「トラファルガーが七武海になったのは、アンタの差し金かい?」
「まさかぁ。“あの子”はまだ俺の正体なんて知らねぇぜぇ? 俺は彼の船に乗る部下の一人だよ」
「ボルサリーノにはトラファルガーが、アンタの護衛なんだって言ってたそうだけど?」
「正確にはおつるちゃん。今の俺がトラファルガーの命令だけを聞くことにしてんだよ」
昔の呼び方でつるを呼んだ男は、へらへらと笑う。
「だから仮にあの子が俺に命令を与えりゃ海軍本部なんてすぐに壊滅できる。あの子が俺を見張ってなけりゃすぐに俺は昔の様に好き勝手する。ちょっとした暇つぶしと言えばそれだけだけどなぁ」
その『ちょっとした暇つぶし』で何も知らない海賊の船へ乗るなんて、なんてふざけた高額賞金首だろうか。その船の船長の賞金額は彼と比べたら雲泥の差がある。
何が面白くてそんな者の“部下”をやっているのかと思ったが、つるには彼の思考なんて読めやしない。
大参謀だ何だと海軍では言われているが、そんな呼び名が付く前から目の前の男は存在していたのだ。経験も知識も彼には及ばないだろうと、若い時に既に悟っている。
今のこの会話だって、いったい全部本当なのか嘘が混じっているのかどうかもつるには分からないのだ。口以上に物を語るといわれている目が見えないというのもあるが、彼の紫の眼は思考を読むには向いていない。
「確か七武海になった海賊の傘下は、賞金首であっても捕まえられなくなるはずだったなぁ。という事は俺も“捕まえられなく”なっちまったぜぇ。――どうするぅ?」
後ろ手に指を組んで身を屈めたシャイタンが、つるの耳元で囁く。背筋へ冷たいものが走ったがつるは動けなかった。
その事実にでは無く、単にシャイタンの覇気を浴びたからである。
「冗談」
すぐに軽くなって自由を取り戻したつるの頭を、昔の様に軽く撫でてシャイタンが笑みを浮かべた。
「あんまりあの子を待たせて機嫌を損ねても、それはそれで楽しいけどもう戻るよ。俺の言った事は全部冗談だから、本当にしたくなけりゃ俺の正体を誰かにバラしたりすんなよぉ?」
目の前で不敵に笑う“若い男”は約半世紀前に世間を騒がし、そしてあの頂上戦争の後再び姿を現した伝説の賞金首『死告シャイタン』だった。
とはいえその姿はかつてつるが見たものとは違い白いツナギにダサい防寒帽姿という、彼を一度でも見たことがある者がイメージする黒衣の姿とは真逆である。更には最後に会った時はつるよりも年上だったにも関わらず、現在の彼はつるの孫といっても過言ではないほどに若かった。
新しく七武海へ加わる事になった『死の外科医』トラファルガー・ローの“部下”として海軍本部へのうのうとやって来たその男は、つるがその正体を追求してもあっけらかんとした態度を取っている。それ自体は昔からなので構わないが。
「トラファルガーが七武海になったのは、アンタの差し金かい?」
「まさかぁ。“あの子”はまだ俺の正体なんて知らねぇぜぇ? 俺は彼の船に乗る部下の一人だよ」
「ボルサリーノにはトラファルガーが、アンタの護衛なんだって言ってたそうだけど?」
「正確にはおつるちゃん。今の俺がトラファルガーの命令だけを聞くことにしてんだよ」
昔の呼び方でつるを呼んだ男は、へらへらと笑う。
「だから仮にあの子が俺に命令を与えりゃ海軍本部なんてすぐに壊滅できる。あの子が俺を見張ってなけりゃすぐに俺は昔の様に好き勝手する。ちょっとした暇つぶしと言えばそれだけだけどなぁ」
その『ちょっとした暇つぶし』で何も知らない海賊の船へ乗るなんて、なんてふざけた高額賞金首だろうか。その船の船長の賞金額は彼と比べたら雲泥の差がある。
何が面白くてそんな者の“部下”をやっているのかと思ったが、つるには彼の思考なんて読めやしない。
大参謀だ何だと海軍では言われているが、そんな呼び名が付く前から目の前の男は存在していたのだ。経験も知識も彼には及ばないだろうと、若い時に既に悟っている。
今のこの会話だって、いったい全部本当なのか嘘が混じっているのかどうかもつるには分からないのだ。口以上に物を語るといわれている目が見えないというのもあるが、彼の紫の眼は思考を読むには向いていない。
「確か七武海になった海賊の傘下は、賞金首であっても捕まえられなくなるはずだったなぁ。という事は俺も“捕まえられなく”なっちまったぜぇ。――どうするぅ?」
後ろ手に指を組んで身を屈めたシャイタンが、つるの耳元で囁く。背筋へ冷たいものが走ったがつるは動けなかった。
その事実にでは無く、単にシャイタンの覇気を浴びたからである。
「冗談」
すぐに軽くなって自由を取り戻したつるの頭を、昔の様に軽く撫でてシャイタンが笑みを浮かべた。
「あんまりあの子を待たせて機嫌を損ねても、それはそれで楽しいけどもう戻るよ。俺の言った事は全部冗談だから、本当にしたくなけりゃ俺の正体を誰かにバラしたりすんなよぉ?」