空白の二年間編2
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夢主視点
自分の息の酒臭さに窒息しそうになって目を覚ました。自分の部屋である副船長室のベッドの上で、しかし掛布を被って寝ていた訳ではない。
船長と話していた記憶はある。二日酔いになってはいないので『×××』を使って自分が意識を無くした後の事を知ると、どうやら船長が直々に運んだらしい。放置しても良かったのに。
謝らなければと思ったものの、それが『どれに対して』謝るべきなのか分からなかった。部屋まで運んでもらった事は当たり前として、酔った勢いで随分と彼を貶した気がする。いや、貶したというのはまたおかしいのか。あれもある意味では『甘えた』のだろう。
「……リヴァイさんの二の舞じゃねぇかよ」
随分昔の事を思い出して悪態を吐く。とりあえず酒臭いツナギを換えのツナギへ着替えて身支度を整えた。防寒帽を被ろうとしてそれが無い事に気付いたのは外されていた腕輪が机の上にあるのを見た後で、腕輪を嵌めながら見回すも無い。
昨日の酔っている時に何処かへ置き忘れたのだろうかと、仕方なく髪を結わえるだけで部屋から出る。宴の会場でもあった食堂にあるだろうと軽く考えて食堂へ向かえば、料理番がシルビを見て驚いていた。
「ペンギン!? 二日酔いは!?」
「なってねぇけどぉ? それより俺の帽子知らねぇ?」
「酒樽で一気飲みしておいてその余裕!」
「チャンポンしなけりゃあまり二日酔いにはならねぇよ」
「フツーはなるから!」
アレだけシルビの醜態を見ておいて、普段通りの料理番は逆に大物かもしれない。
結局食堂で帽子は見つからず、起きてきたクルー達へ素顔について突っ込まれたり、昨日の暴挙について突っ込まれたりしたのを受け流して朝食を済ませ、船長へ謝りに行くかと船長室へ向かう。
昨夜が宴会だった事も相まって、どうせ寝ているのだろうと思いながら開けた船長室は、空だった。
「あれ……」
「船長なら島に降りたよ」
振り返った先には欠伸を噛み殺したバンダナが立っていて、そういえば彼にも迷惑を掛けたなと謝ろうとした矢先に、再び話しかけられる。
「なんか用だったのかい?」
「昨日のことを謝ろうと思って。バンダナさんもご迷惑をお掛けしました」
「そうだね。まさか酒樽一気飲みするとは思わなかったよ。っていうかアレだね。ちゃんと覚えてるんだ」
「やけ酒して忘れてみたらって言われましたけど、そういや俺酔っても記憶は無くならねぇんですよねぇ。ところで俺の帽子知りません?」
「船長が持ってたよ」
「はぁ?」
箱から取り出した煙草を咥えたバンダナは、その煙草の先でペンギンを指すようにして口角を上げた。
「返して欲しけりゃ手合わせしろ。ってさ」
バンダナに案内される形で向かった場所は、停泊している砂浜から少し遠くにあった拓けた場所で、船長はそこでいつもの通りに大太刀を抱きかかえる様に肩へ立てかけていた。その大太刀の柄へシルビの防寒帽が引っ掛けてある。
「来たか」
「来たか、じゃねぇでしょう。手合わせってなんですか」
帽子一つを返してもらう為だけに暴れる趣味は無い。変なことを思いつく人だと呆れもしたが、次の言葉には意識を変えざるを得なかった。
「お前が負けたら『船を降りろ』」
「……。それは船長命令で?」
「ああ。だから正確には決闘だな。バンダナが立会人だ」
「どうしてそんな事を?」
シルビをここまで案内してきたバンダナは何も言わずに、少し離れた場所へあった岩へ腰を降ろしている。話を聞いてはいるのだろうが、口を挟もうともしない。
柄に掛けた防寒帽を回しながら、船長が自分の帽子へ手を掛ける。
「お前が負けたら俺はお前を『恨んで』やるよ」
それは昨日の話の続きか。
この『手合わせ』はシルビに殆どメリットが無かった。シルビが負ければシルビはハートの船を降ろされ故郷の仇として恨まれる。だがシルビが勝ったところで、シルビがハートのクルーであるままなだけだ。
いずれにしてもトラファルガーのいいような結果になるのかと考えかけて、果たしてそんな理由かと思う。そんな些細な事で『死告シャイタン』であるシルビへ喧嘩を売るか。
シルビだったら売らない。多少の不満があったとしても相手が自分へ追い目を感じたまま利用することの出来る状態で、それを捨てる真似は愚考だ。流石に自分が使える奴であることは自覚している。
ではどうしてトラファルガーはこんな事を言い出したのか。
「恨まれるのが怖いか?」
「何俺が負ける事前提で話してんですか。そうじゃなくて」
「乗り気じゃねえな。じゃあこう言ってやる。――オレの故郷を奪いやがって」
「この戦いの意味を――ああ、それは分かりやすいですね」
思わず納得してしまうと同時に、この人はいつの間にこんなに『できた』船長になったのだろうかと少し感動すら覚えた。
確かにこの辺で自分達は色々と踏ん切りをつけるべきなのかも知れない。七武海になった船長にはもう既に次の目標があるようだし、シルビがいつまでも足を引っ張っているのは『迷惑』だ。
ナイフと銃を取り出して構える。柄に掛けられていた防寒帽がバンダナの手元へ投げられた。
「海水はぶっ掛けるなよ。それ以外は全力で来い」
「島ひとつ滅ぼすか殺す気でどうぞぉ。ただし――俺もそれなりにいかせてもらうぜぇ」
自分の息の酒臭さに窒息しそうになって目を覚ました。自分の部屋である副船長室のベッドの上で、しかし掛布を被って寝ていた訳ではない。
船長と話していた記憶はある。二日酔いになってはいないので『×××』を使って自分が意識を無くした後の事を知ると、どうやら船長が直々に運んだらしい。放置しても良かったのに。
謝らなければと思ったものの、それが『どれに対して』謝るべきなのか分からなかった。部屋まで運んでもらった事は当たり前として、酔った勢いで随分と彼を貶した気がする。いや、貶したというのはまたおかしいのか。あれもある意味では『甘えた』のだろう。
「……リヴァイさんの二の舞じゃねぇかよ」
随分昔の事を思い出して悪態を吐く。とりあえず酒臭いツナギを換えのツナギへ着替えて身支度を整えた。防寒帽を被ろうとしてそれが無い事に気付いたのは外されていた腕輪が机の上にあるのを見た後で、腕輪を嵌めながら見回すも無い。
昨日の酔っている時に何処かへ置き忘れたのだろうかと、仕方なく髪を結わえるだけで部屋から出る。宴の会場でもあった食堂にあるだろうと軽く考えて食堂へ向かえば、料理番がシルビを見て驚いていた。
「ペンギン!? 二日酔いは!?」
「なってねぇけどぉ? それより俺の帽子知らねぇ?」
「酒樽で一気飲みしておいてその余裕!」
「チャンポンしなけりゃあまり二日酔いにはならねぇよ」
「フツーはなるから!」
アレだけシルビの醜態を見ておいて、普段通りの料理番は逆に大物かもしれない。
結局食堂で帽子は見つからず、起きてきたクルー達へ素顔について突っ込まれたり、昨日の暴挙について突っ込まれたりしたのを受け流して朝食を済ませ、船長へ謝りに行くかと船長室へ向かう。
昨夜が宴会だった事も相まって、どうせ寝ているのだろうと思いながら開けた船長室は、空だった。
「あれ……」
「船長なら島に降りたよ」
振り返った先には欠伸を噛み殺したバンダナが立っていて、そういえば彼にも迷惑を掛けたなと謝ろうとした矢先に、再び話しかけられる。
「なんか用だったのかい?」
「昨日のことを謝ろうと思って。バンダナさんもご迷惑をお掛けしました」
「そうだね。まさか酒樽一気飲みするとは思わなかったよ。っていうかアレだね。ちゃんと覚えてるんだ」
「やけ酒して忘れてみたらって言われましたけど、そういや俺酔っても記憶は無くならねぇんですよねぇ。ところで俺の帽子知りません?」
「船長が持ってたよ」
「はぁ?」
箱から取り出した煙草を咥えたバンダナは、その煙草の先でペンギンを指すようにして口角を上げた。
「返して欲しけりゃ手合わせしろ。ってさ」
バンダナに案内される形で向かった場所は、停泊している砂浜から少し遠くにあった拓けた場所で、船長はそこでいつもの通りに大太刀を抱きかかえる様に肩へ立てかけていた。その大太刀の柄へシルビの防寒帽が引っ掛けてある。
「来たか」
「来たか、じゃねぇでしょう。手合わせってなんですか」
帽子一つを返してもらう為だけに暴れる趣味は無い。変なことを思いつく人だと呆れもしたが、次の言葉には意識を変えざるを得なかった。
「お前が負けたら『船を降りろ』」
「……。それは船長命令で?」
「ああ。だから正確には決闘だな。バンダナが立会人だ」
「どうしてそんな事を?」
シルビをここまで案内してきたバンダナは何も言わずに、少し離れた場所へあった岩へ腰を降ろしている。話を聞いてはいるのだろうが、口を挟もうともしない。
柄に掛けた防寒帽を回しながら、船長が自分の帽子へ手を掛ける。
「お前が負けたら俺はお前を『恨んで』やるよ」
それは昨日の話の続きか。
この『手合わせ』はシルビに殆どメリットが無かった。シルビが負ければシルビはハートの船を降ろされ故郷の仇として恨まれる。だがシルビが勝ったところで、シルビがハートのクルーであるままなだけだ。
いずれにしてもトラファルガーのいいような結果になるのかと考えかけて、果たしてそんな理由かと思う。そんな些細な事で『死告シャイタン』であるシルビへ喧嘩を売るか。
シルビだったら売らない。多少の不満があったとしても相手が自分へ追い目を感じたまま利用することの出来る状態で、それを捨てる真似は愚考だ。流石に自分が使える奴であることは自覚している。
ではどうしてトラファルガーはこんな事を言い出したのか。
「恨まれるのが怖いか?」
「何俺が負ける事前提で話してんですか。そうじゃなくて」
「乗り気じゃねえな。じゃあこう言ってやる。――オレの故郷を奪いやがって」
「この戦いの意味を――ああ、それは分かりやすいですね」
思わず納得してしまうと同時に、この人はいつの間にこんなに『できた』船長になったのだろうかと少し感動すら覚えた。
確かにこの辺で自分達は色々と踏ん切りをつけるべきなのかも知れない。七武海になった船長にはもう既に次の目標があるようだし、シルビがいつまでも足を引っ張っているのは『迷惑』だ。
ナイフと銃を取り出して構える。柄に掛けられていた防寒帽がバンダナの手元へ投げられた。
「海水はぶっ掛けるなよ。それ以外は全力で来い」
「島ひとつ滅ぼすか殺す気でどうぞぉ。ただし――俺もそれなりにいかせてもらうぜぇ」