空白の二年間編2
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ロー視点
自分が『死告シャイタン』なのだと告げたペンギンは、ローがすんなりと信じてみせたことに対して、いつもの試す眼にしかしいつもとは少し違う色を浮かべていた。
実際、頭ごなしに信じている訳じゃない。千年前からその姿を現しているという伝説の賞金首が、こんなところにいると言われて信じられる訳が無かった。
万が一本当だったとしても、『千年前から存在している』ことへの説明もして欲しい。それ以外にだって聞きたいことは少し考えるだけでも増えていく。
七武海になるという段階でこんな大問題を目の前に持ってこられて、ローだって困惑しているのだ。第一、ペンギンが本当に『死告シャイタン』であるのなら、何故『頂上戦争後になってから』名乗り出したのか。
名乗る機会は今までにもあった筈だ。ハートの船へ乗る前やハートの船へ乗ってからも、いつだって。
そういった疑問が浮かんでは消えていく。聞いてしまいたい。訊くべきだとも思う。
なのにペンギンと付き合ってきた年月の分の勘が、『聞いてはいけない』と告げている気もするのだ。
「……お前が『死告シャイタン』だとして」
ペンギンが『死告シャイタン』だとして。
「それを知ったオレをどうにかしたりするのか?」
噂だか伝説では『見た者は死ぬ』という話もあった筈だ。その事を暗に示したわけではなかったが、流石にここで殺されたら困るなという保身はあった。ペンギンはそう聞かれるのは予想外だったとばかりにローを見上げている。
こんな自分よりも背が低くて、しみじみと思ってしまうほど女顔で、天然の癖に面倒見が良くて、ローを信頼すると笑みを浮かべながら、いつも何かに怯えているような奴が『死告シャイタン』だとして。
「オレが困る事が、あるのか?」
「……ありません」
心臓から搾り出すような、ともすれば掻き消えてしまいそうな声だった。
「ありません。させません。俺が貴方を害することは貴方が俺を信頼しているうちはありません。貴方が俺を信頼してくださる間は俺の咎が貴方に降りかかる事もさせません。そんな事をするくらいなら俺はこの世界を滅ぼしたっていい」
「いやそこまですんな」
思わず突っ込んだらペンギンは目を瞬かせ、それからやっと肩の力を抜いて震える様に微笑んだ。試すような眼からいつもと違う『怯え』の色が消える。
部屋のドアがノックされてイルカが顔を覗かせた。
「ペンギン? お茶渋くなっちゃう……どうしたの?」
「――眼にゴミが入って船長に見てもらったとこだぁ」
「そ? 船長もお茶淹れたから飲みましょー」
「ああ。今行く」
髪を纏め上げて防寒帽を被りなおすペンギンを見てイルカが戻っていく。しっかりと被り直したところでペンギンがローを見た。
「フレバンスを助けられなくて、ごめんなさい」
自分が『死告シャイタン』なのだと告げたペンギンは、ローがすんなりと信じてみせたことに対して、いつもの試す眼にしかしいつもとは少し違う色を浮かべていた。
実際、頭ごなしに信じている訳じゃない。千年前からその姿を現しているという伝説の賞金首が、こんなところにいると言われて信じられる訳が無かった。
万が一本当だったとしても、『千年前から存在している』ことへの説明もして欲しい。それ以外にだって聞きたいことは少し考えるだけでも増えていく。
七武海になるという段階でこんな大問題を目の前に持ってこられて、ローだって困惑しているのだ。第一、ペンギンが本当に『死告シャイタン』であるのなら、何故『頂上戦争後になってから』名乗り出したのか。
名乗る機会は今までにもあった筈だ。ハートの船へ乗る前やハートの船へ乗ってからも、いつだって。
そういった疑問が浮かんでは消えていく。聞いてしまいたい。訊くべきだとも思う。
なのにペンギンと付き合ってきた年月の分の勘が、『聞いてはいけない』と告げている気もするのだ。
「……お前が『死告シャイタン』だとして」
ペンギンが『死告シャイタン』だとして。
「それを知ったオレをどうにかしたりするのか?」
噂だか伝説では『見た者は死ぬ』という話もあった筈だ。その事を暗に示したわけではなかったが、流石にここで殺されたら困るなという保身はあった。ペンギンはそう聞かれるのは予想外だったとばかりにローを見上げている。
こんな自分よりも背が低くて、しみじみと思ってしまうほど女顔で、天然の癖に面倒見が良くて、ローを信頼すると笑みを浮かべながら、いつも何かに怯えているような奴が『死告シャイタン』だとして。
「オレが困る事が、あるのか?」
「……ありません」
心臓から搾り出すような、ともすれば掻き消えてしまいそうな声だった。
「ありません。させません。俺が貴方を害することは貴方が俺を信頼しているうちはありません。貴方が俺を信頼してくださる間は俺の咎が貴方に降りかかる事もさせません。そんな事をするくらいなら俺はこの世界を滅ぼしたっていい」
「いやそこまですんな」
思わず突っ込んだらペンギンは目を瞬かせ、それからやっと肩の力を抜いて震える様に微笑んだ。試すような眼からいつもと違う『怯え』の色が消える。
部屋のドアがノックされてイルカが顔を覗かせた。
「ペンギン? お茶渋くなっちゃう……どうしたの?」
「――眼にゴミが入って船長に見てもらったとこだぁ」
「そ? 船長もお茶淹れたから飲みましょー」
「ああ。今行く」
髪を纏め上げて防寒帽を被りなおすペンギンを見てイルカが戻っていく。しっかりと被り直したところでペンギンがローを見た。
「フレバンスを助けられなくて、ごめんなさい」