夢主視点

七武海へ、なろうと思う。
船長のその言葉の理由を、シルビは知らない。七武海になることが目標なのではなく、なった後に更に何か目的があるのだろう事は推測しているが、その目的に関してはシルビどころかクルー達も聞いていないだろう。
というか、副船長であるシルビが聞いていない時点でクルーが知っている筈も無いのだが。
自分が高額賞金首である事などを隠しているシルビに言えた話ではないが、もう少し理由を教えて欲しいとは思っていた。

『船長が途中でいなくなったりしたら、どうする？』

いくつ目になるか分からない心臓集めの乱闘の際、ワカメから聞かれた質問。その『いなくなったら』という言葉が『どこから』なのかが判断出来なくてシルビは答えられなかった。
この世からいなくなったら、なのか、この船からいなくなったら、なのか。
前者であったならシルビはきっと悲しむ。それは断言出来る。しかしその後は今までと何も変わらない。
だが後者であったなら、トラファルガー・ローが何らかの理由があるにしてもハートの海賊団からいなくなるのであれば。

「ペーンギン！ 心臓の箱詰め終わったってよ！」
「船長に言えよぉそういうのはぁ」
「船長にも言った！」

百個どころか更に幾つか集め終えた心臓は、一つ一つ小袋へ入れて持ち主の名前を括りつけてある。合計金額なら三億に届くだろうが、単品で億越えは無かった。一つくらい億越えを入れても良かったのかも知れないが、途中から面倒臭く思えてきたというのもある。
蓋を閉める前の箱の中を覗き込めばそれぞれの小袋が拍動を刻んでいた。小動物でも詰め込んであるかのようで、そう思ってみれば動物虐待のようだが実際はもっと酷い物が入っている訳で、何も知らず開けることになる海軍へは、今から謝罪したい。

「心臓ってたくさんあるとキモイな」
「まぁ普通はこんな状態有り得ないしねえ」
「キャプテン七武海になれるかな？」

ベポの言葉にクルー達の視線が船長へ向けられる。未だに七武海へなる理由を言わない男は、この時も不敵に笑うだけだった。

「なれなかったら、今度こそ海軍将校か天竜人の心臓でも奪えばいいだろ」

そうは言っても、実際にそうなった時に標的の下調べをするのはシルビなのだろう。別に構わないがそこから船長へ心臓を奪わせるというのが面倒臭い。
蓋をした箱を海軍へ送り出す。これが届いて海軍の動きが見られるまでは、のんびり出来るだろう。
ワカメの問いが少し引っかかっているのも、その間に昇華できると思いたかった。