故郷の話
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ロー視点
屋敷の中へと入り、廊下を少し行けば宴会の喧騒など遠いものとなる。初日に犬の後を追いかけて進んだ廊下を、今度はライガーを追いかけて一人で通り抜けた。
中庭は暗く、酒を飲んで火照った身体には心地よい風が少しだけ木の葉を揺らしている。茂みを透かして見える灯りにローは中庭へと足を踏み出し、茂みを掻き分けた。
茂みの向こうへポツリと存在している、長年の雨や風によって浸食されたのか角が取れ、荒い丸みを帯びた大理石。それを枕にして眠っている男へ歩み寄ったライガーが鼻先をこすりつける。緩やかに上げられた手がその毛並みを撫でるのに、ローは男が気付くのを待った。
まさかとは思っていたが、本当にツナヨシの言う通り石を枕にする奴が居るとは。
「宴会はどうしたんですか」
「抜け出してきた」
起き上がってライガーを背もたれに座り直したシルビに、ローは持ってきた酒瓶を一本投げ渡す。シルビが傍に置いてあったランタンでワインのラベルを確認し、それからコルクを引き抜いて飲まずに脇へ置いた。
「仕事は終わったのか」
「後は片付けだけ、です」
ローも持ってきたワインの封を切る。
「初めて会った時、お前は『薬師』だと聞いたんだがな」
「薬師ですよ。温室見せましょうかぁ」
「明日見る。それが本業は一国の相談役だ。詐欺もいいとこだろ」
「詐欺じゃねぇです。そもそも本業じゃねぇし」
「じゃあお前の本業は何だ」
シルビは無言でローを見た。即答しろと思うものの、いつものあの『試している眼』をしている。
「呼び方まで沢山あって、困るだろ」
「もう慣れてる」
シャボンディ諸島で冥王レイリーが言っていたことは、あの時はスルーしたがおそらくこういう事だったのだろう。国の相談役、旅の薬師、『副船長』
「何て呼ばれるのが一番いいんだ?」
「……『トラファルガー』からは、『ペンギン』がいい」
風が吹く。
「『イブリス』はジャックとサブジェイの元に。『シルビ』は誰の元へも付かねぇ。『ペンギン』はトラファルガー・ローのモノ。……アンタや、ハートの皆が呼ぶのを止めたら『ペンギン』は死ぬんだろぉなぁ」
そう言って俯いた『男』を、ローは酒瓶へ口を付けたまま見つめた。ビャクランが言っていた通り面倒臭い男だと思う。
しかしその面倒臭い男を欲したのもローな訳で。
「船を降りる気は?」
「貴方が降りろと言わねぇ限りは、……厚かましく」
「島はどうする」
「電伝虫は持っていけと言われました」
伏せて目を閉じているライガーの背を撫でながらシルビが視線を彷徨わせる。
「それで、その……貴方は何か言う事はありますか?」
屋敷の中へと入り、廊下を少し行けば宴会の喧騒など遠いものとなる。初日に犬の後を追いかけて進んだ廊下を、今度はライガーを追いかけて一人で通り抜けた。
中庭は暗く、酒を飲んで火照った身体には心地よい風が少しだけ木の葉を揺らしている。茂みを透かして見える灯りにローは中庭へと足を踏み出し、茂みを掻き分けた。
茂みの向こうへポツリと存在している、長年の雨や風によって浸食されたのか角が取れ、荒い丸みを帯びた大理石。それを枕にして眠っている男へ歩み寄ったライガーが鼻先をこすりつける。緩やかに上げられた手がその毛並みを撫でるのに、ローは男が気付くのを待った。
まさかとは思っていたが、本当にツナヨシの言う通り石を枕にする奴が居るとは。
「宴会はどうしたんですか」
「抜け出してきた」
起き上がってライガーを背もたれに座り直したシルビに、ローは持ってきた酒瓶を一本投げ渡す。シルビが傍に置いてあったランタンでワインのラベルを確認し、それからコルクを引き抜いて飲まずに脇へ置いた。
「仕事は終わったのか」
「後は片付けだけ、です」
ローも持ってきたワインの封を切る。
「初めて会った時、お前は『薬師』だと聞いたんだがな」
「薬師ですよ。温室見せましょうかぁ」
「明日見る。それが本業は一国の相談役だ。詐欺もいいとこだろ」
「詐欺じゃねぇです。そもそも本業じゃねぇし」
「じゃあお前の本業は何だ」
シルビは無言でローを見た。即答しろと思うものの、いつものあの『試している眼』をしている。
「呼び方まで沢山あって、困るだろ」
「もう慣れてる」
シャボンディ諸島で冥王レイリーが言っていたことは、あの時はスルーしたがおそらくこういう事だったのだろう。国の相談役、旅の薬師、『副船長』
「何て呼ばれるのが一番いいんだ?」
「……『トラファルガー』からは、『ペンギン』がいい」
風が吹く。
「『イブリス』はジャックとサブジェイの元に。『シルビ』は誰の元へも付かねぇ。『ペンギン』はトラファルガー・ローのモノ。……アンタや、ハートの皆が呼ぶのを止めたら『ペンギン』は死ぬんだろぉなぁ」
そう言って俯いた『男』を、ローは酒瓶へ口を付けたまま見つめた。ビャクランが言っていた通り面倒臭い男だと思う。
しかしその面倒臭い男を欲したのもローな訳で。
「船を降りる気は?」
「貴方が降りろと言わねぇ限りは、……厚かましく」
「島はどうする」
「電伝虫は持っていけと言われました」
伏せて目を閉じているライガーの背を撫でながらシルビが視線を彷徨わせる。
「それで、その……貴方は何か言う事はありますか?」