故郷の話
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ロー視点
「無理を言うでない。奴の言動を一番把握できた者達は既に死んでおる。そやつ等でさえ後から行動理由を想定できた程度なのじゃから、ワシや十代目、大海の小僧などでは到底無理な話よ」
タルボは気にせず笑う。
「若き船長。この世界の多くの者達がアレに手を差し伸べてもらった者じゃ。例外はワシくらいじゃろう。そんなある意味『英雄』を無理に連れて行くなど、考えぬほうがいいぞ?」
何かを言い返さなければと思うものの、言葉が浮かばなかった。タルボはそんなローの様子へ満足そうに口角を上げる。
喧嘩を売られたのだと、漠然と思った。
部屋の外が騒がしくなり扉が開かれる。振り向けば高級そうなスーツ姿で防寒帽を被っていないペンギンが、目元を擦りながら扉を開けたところだった。その後ろにはキャスケットの上に猫を乗せたシャチがいる。
テーブルの上に置いたままだった手紙を、さりげなくポケットへ押し込めて隠した。ペンギンはローのそんな行動に気付かなかったようでタルボを見る。
「あれ、タルボ爺さんここに居たのかぁ。ガナッシュが探してたぜぇ」
「あやつは毎回ワシを探しとる。人を徘徊老人扱いしようて」
「爺さんの身を案じてんだろぉ。あまり困らせてやんなよぉ」
「仕方ないのう」
ソファから立ち上がり、老人にしてはしっかりとした足並みで部屋を出ていくタルボを見送り、ペンギンがシャチと一緒に入ってきた。
「何の話を?」
「雑談だ。お前こそ用事は済んだのか」
「会議は終わりましたよ。後は居なかった間に溜まった仕事を片付けりゃ……」
「船長、凄いんですよ! ペンギンと一緒に歩いてると皆お辞儀してくんです!」
頭に猫を乗せたシャチが興奮しながら話す内容に、寸前のタルボの言葉が脳裏へ浮かぶ。
『無理に連れて行くなど、考えぬほうがいい』
ペンギンは防寒帽を脱いで、ローが以前言った『素顔を晒すな』という言いつけも破っていた。ハートのクルーが揃いで着ているツナギも今は着ていなくて、いつもの私服とも違うスーツ姿に腕の刺青も隠されていてハートの海賊団であるという印は見えない。
尻尾を振っているシャチの頭の上の猫を撫でている『男』を、ローは呼んでみる。
「『シルビ』」
振り返った紫の目。
「何ですか」
「いや、何でもねえ」
「なんでもねぇなら――」
「そんな事より領主は来ないのか」
言葉を遮るように聞けば、シャチが肩をビクつかせてローを見た。ペンギンは無表情だ。
「もう直ぐ来ると思います。俺も同席――」
「いい」
「では、用事があるので俺は行きます」
ペンギンが一人でさっさと部屋を出て行ってしまう。シャチがローとペンギンを交互に見やっていたが、ローは溜め息を吐いて顔を伏せた。
「船長……」
「アイツの意思だ。好きにさせとけ」
「無理を言うでない。奴の言動を一番把握できた者達は既に死んでおる。そやつ等でさえ後から行動理由を想定できた程度なのじゃから、ワシや十代目、大海の小僧などでは到底無理な話よ」
タルボは気にせず笑う。
「若き船長。この世界の多くの者達がアレに手を差し伸べてもらった者じゃ。例外はワシくらいじゃろう。そんなある意味『英雄』を無理に連れて行くなど、考えぬほうがいいぞ?」
何かを言い返さなければと思うものの、言葉が浮かばなかった。タルボはそんなローの様子へ満足そうに口角を上げる。
喧嘩を売られたのだと、漠然と思った。
部屋の外が騒がしくなり扉が開かれる。振り向けば高級そうなスーツ姿で防寒帽を被っていないペンギンが、目元を擦りながら扉を開けたところだった。その後ろにはキャスケットの上に猫を乗せたシャチがいる。
テーブルの上に置いたままだった手紙を、さりげなくポケットへ押し込めて隠した。ペンギンはローのそんな行動に気付かなかったようでタルボを見る。
「あれ、タルボ爺さんここに居たのかぁ。ガナッシュが探してたぜぇ」
「あやつは毎回ワシを探しとる。人を徘徊老人扱いしようて」
「爺さんの身を案じてんだろぉ。あまり困らせてやんなよぉ」
「仕方ないのう」
ソファから立ち上がり、老人にしてはしっかりとした足並みで部屋を出ていくタルボを見送り、ペンギンがシャチと一緒に入ってきた。
「何の話を?」
「雑談だ。お前こそ用事は済んだのか」
「会議は終わりましたよ。後は居なかった間に溜まった仕事を片付けりゃ……」
「船長、凄いんですよ! ペンギンと一緒に歩いてると皆お辞儀してくんです!」
頭に猫を乗せたシャチが興奮しながら話す内容に、寸前のタルボの言葉が脳裏へ浮かぶ。
『無理に連れて行くなど、考えぬほうがいい』
ペンギンは防寒帽を脱いで、ローが以前言った『素顔を晒すな』という言いつけも破っていた。ハートのクルーが揃いで着ているツナギも今は着ていなくて、いつもの私服とも違うスーツ姿に腕の刺青も隠されていてハートの海賊団であるという印は見えない。
尻尾を振っているシャチの頭の上の猫を撫でている『男』を、ローは呼んでみる。
「『シルビ』」
振り返った紫の目。
「何ですか」
「いや、何でもねえ」
「なんでもねぇなら――」
「そんな事より領主は来ないのか」
言葉を遮るように聞けば、シャチが肩をビクつかせてローを見た。ペンギンは無表情だ。
「もう直ぐ来ると思います。俺も同席――」
「いい」
「では、用事があるので俺は行きます」
ペンギンが一人でさっさと部屋を出て行ってしまう。シャチがローとペンギンを交互に見やっていたが、ローは溜め息を吐いて顔を伏せた。
「船長……」
「アイツの意思だ。好きにさせとけ」