故郷の話
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ロー視点
『フレバンスにて珀鉛病が流行ると思われる。この手紙がお前の元へ来たという事はそういうことだ。現在の医学では完全に治す方法は無く、体内へ長い年月をかけて蓄積された毒を排出するのは倍以上の年月が掛かるだろうからだ。
けれども発症してしまった場合にのみ、絶大に効く薬がある。俺の温室へ生えている植物の一つがそれで、煎じ方と調合の仕方が俺の書斎のノートへ書かれている筈だ。
海を越えた島へ届けるのは大変なので、恐らく死んでいるであろう俺の代わりに早急にその植物とノートをフレバンスへ届けてやって欲しい』
最後に署名されている名前は、ペンギンと同じ『シルビ』
タルボは『返事は届かずに戻ってきた』と言った。という事はこの手紙に書かれている薬は届かなかったのだ。
もう一枚の便箋を広げればもう殆ど覚えていないような父の筆跡で、この手紙を父はローの祖母に当たる母親から託されていた事。母の死に際に託されていたがその時はまだ珀鉛病が流行っていなかった事。この手紙を信じず自分の決断と行動が遅くなってしまった事が、謝罪文の様に連なっていた。
実際コレは、謝罪文だったのだろう。あの島へ、患者へ対しての。
「その手紙を書いたのは、世間では『死告シャイタン』と呼ばれておる男じゃ。この国はそやつの出身地でのう」
「……『死告シャイタン』? あの『世界政府の宿敵』か?」
「そう名付けたのは政府の奴等じゃ。アヤツはただの博愛主義者よ」
おかしいところなど何もないというのにタルボが笑う。自嘲の篭ったそれは、タルボ自身のことも嘲っている様だった。
頂上戦争の後、麦わら屋と共に『十六点鐘』の場へ現れた高額賞金首の男。新聞によれば四十年ほど前にも居た賞金首で、ローは名前を聞いた事のある程度だった。彼の功績を良くも悪くも何一つ知らない。
だからその『死告シャイタン』が、何を思ってフレバンスへこの手紙を残したのかも分からなかった。唯一つ言えるとしたら、そんな遠回しに頼まず直接動いてくれていたらと、文面に『死んでいるであろう』とあるにも関わらず思ってしまう。
そこまで考えて、ふと気付いてタルボへ尋ねた。
「ここに『死んでるだろう』って書いてあるが、ヤツは頂上戦争の後に現れたな」
「ヒヒ、そうだのう。遅かったのう」
「遅かった?」
「ワシはもっと早く名乗ると思っておったよ」
「まるで『死告屋』が代替わりしてるみてえな言い方だな」
『フレバンスにて珀鉛病が流行ると思われる。この手紙がお前の元へ来たという事はそういうことだ。現在の医学では完全に治す方法は無く、体内へ長い年月をかけて蓄積された毒を排出するのは倍以上の年月が掛かるだろうからだ。
けれども発症してしまった場合にのみ、絶大に効く薬がある。俺の温室へ生えている植物の一つがそれで、煎じ方と調合の仕方が俺の書斎のノートへ書かれている筈だ。
海を越えた島へ届けるのは大変なので、恐らく死んでいるであろう俺の代わりに早急にその植物とノートをフレバンスへ届けてやって欲しい』
最後に署名されている名前は、ペンギンと同じ『シルビ』
タルボは『返事は届かずに戻ってきた』と言った。という事はこの手紙に書かれている薬は届かなかったのだ。
もう一枚の便箋を広げればもう殆ど覚えていないような父の筆跡で、この手紙を父はローの祖母に当たる母親から託されていた事。母の死に際に託されていたがその時はまだ珀鉛病が流行っていなかった事。この手紙を信じず自分の決断と行動が遅くなってしまった事が、謝罪文の様に連なっていた。
実際コレは、謝罪文だったのだろう。あの島へ、患者へ対しての。
「その手紙を書いたのは、世間では『死告シャイタン』と呼ばれておる男じゃ。この国はそやつの出身地でのう」
「……『死告シャイタン』? あの『世界政府の宿敵』か?」
「そう名付けたのは政府の奴等じゃ。アヤツはただの博愛主義者よ」
おかしいところなど何もないというのにタルボが笑う。自嘲の篭ったそれは、タルボ自身のことも嘲っている様だった。
頂上戦争の後、麦わら屋と共に『十六点鐘』の場へ現れた高額賞金首の男。新聞によれば四十年ほど前にも居た賞金首で、ローは名前を聞いた事のある程度だった。彼の功績を良くも悪くも何一つ知らない。
だからその『死告シャイタン』が、何を思ってフレバンスへこの手紙を残したのかも分からなかった。唯一つ言えるとしたら、そんな遠回しに頼まず直接動いてくれていたらと、文面に『死んでいるであろう』とあるにも関わらず思ってしまう。
そこまで考えて、ふと気付いてタルボへ尋ねた。
「ここに『死んでるだろう』って書いてあるが、ヤツは頂上戦争の後に現れたな」
「ヒヒ、そうだのう。遅かったのう」
「遅かった?」
「ワシはもっと早く名乗ると思っておったよ」
「まるで『死告屋』が代替わりしてるみてえな言い方だな」