故郷の話
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢主視点
マフィアの根本は、理不尽な法に対抗する為の自警団だった。この島へ『転生』した者達はその信条を深く胸へ刻み込んでおり、ヴェスプッチのように『前世』の無い者にはもしかしたらそういう考えが分からなかっただけかもしれない。
この国が鎖国状態であったのは、そういう転生者が多い事を隠す為でもあり、同時にこの『世界』で生きるには一部を除いて弱かったからだ。『炎』が使えたところで戦えなければ死ぬ。『炎』が使えたところで、それがどういう仕組みで灯されているものなのかを知らなければ、いたずらに寿命を減らすだけだ。
領主とその側近、もしくは転生者しか知らない事実として、『外』の者であっても、『炎』は灯せる。
炎を安定させるリングを作れる者がこの国にしかいないことと、一般的に炎の灯し方が知られていない故に『この国の者しか灯せない』とされているだけなのだ。
しかし『外』の人間が炎を灯したところで、何も知識が無い状態なので何も出来やしない。そういった者の為にこの国は完全な鎖国状態を止め、『外』の者へも門扉を開いた。
そうして自分が灯せる『炎』が『死ぬ気の炎』だと知って移住してきた者もいる。『外』でそうして困っているだろう者を探しに、『外』へ出た者だっていた。
外へ出たければ好きにすればいい。誰も束縛はしないだろう。
けれども弱いことを自覚していきなさい。
『炎』なんて特別でも何でもないのだから。
この国は臆病ではない。『守る為』に在る国なのだ。
「それを自覚しなけりゃ、領主になれる訳が無ぇんだよ」
指輪を嵌めている手ごと踏みつけて壊し、シルビは銃をホルダーへ戻した。爆発の間隔が短くなっており、窓の外に見える海面が近付いてくる。
遠くに見える空と海との境目を見つめ、シルビは左手首に嵌めている腕輪へと手を伸ばした。他のリングとは違う『特別製』の腕輪。
時々手枷のようにも思えてしまうそれは、けれども知らなければただのアクセサリーだ。
『炎』なんて無くても人は生きていける。でもシャチが言ったようにこの国の国民はそれを忘れかけていて、そんな状態では『外』へなんていけない。
そしてその『外』へいけない者達は、シルビの大切なものだ。下手をするとこの島から出ることなく一生を終えるだろう『彼等』にしかしシルビは『けれども』と思う。
けれども『ペンギン』は。
「わがまま、なのかなぁ」
一際大きく爆発が起こり、何処からか立ち上る黒煙が部屋へと入ってきていた。咳が出たので口元を押さえて背中を丸めていると、背後から声が聞こえた。
「ペンギン!」
振り返ればトラファルガーが『シルビ』を睨んでいる。
「シャチ達が待ってる。早く戻るぞ! 『船長命令』だ!」
「……ぁ、アイアイ、『船長』!」
マフィアの根本は、理不尽な法に対抗する為の自警団だった。この島へ『転生』した者達はその信条を深く胸へ刻み込んでおり、ヴェスプッチのように『前世』の無い者にはもしかしたらそういう考えが分からなかっただけかもしれない。
この国が鎖国状態であったのは、そういう転生者が多い事を隠す為でもあり、同時にこの『世界』で生きるには一部を除いて弱かったからだ。『炎』が使えたところで戦えなければ死ぬ。『炎』が使えたところで、それがどういう仕組みで灯されているものなのかを知らなければ、いたずらに寿命を減らすだけだ。
領主とその側近、もしくは転生者しか知らない事実として、『外』の者であっても、『炎』は灯せる。
炎を安定させるリングを作れる者がこの国にしかいないことと、一般的に炎の灯し方が知られていない故に『この国の者しか灯せない』とされているだけなのだ。
しかし『外』の人間が炎を灯したところで、何も知識が無い状態なので何も出来やしない。そういった者の為にこの国は完全な鎖国状態を止め、『外』の者へも門扉を開いた。
そうして自分が灯せる『炎』が『死ぬ気の炎』だと知って移住してきた者もいる。『外』でそうして困っているだろう者を探しに、『外』へ出た者だっていた。
外へ出たければ好きにすればいい。誰も束縛はしないだろう。
けれども弱いことを自覚していきなさい。
『炎』なんて特別でも何でもないのだから。
この国は臆病ではない。『守る為』に在る国なのだ。
「それを自覚しなけりゃ、領主になれる訳が無ぇんだよ」
指輪を嵌めている手ごと踏みつけて壊し、シルビは銃をホルダーへ戻した。爆発の間隔が短くなっており、窓の外に見える海面が近付いてくる。
遠くに見える空と海との境目を見つめ、シルビは左手首に嵌めている腕輪へと手を伸ばした。他のリングとは違う『特別製』の腕輪。
時々手枷のようにも思えてしまうそれは、けれども知らなければただのアクセサリーだ。
『炎』なんて無くても人は生きていける。でもシャチが言ったようにこの国の国民はそれを忘れかけていて、そんな状態では『外』へなんていけない。
そしてその『外』へいけない者達は、シルビの大切なものだ。下手をするとこの島から出ることなく一生を終えるだろう『彼等』にしかしシルビは『けれども』と思う。
けれども『ペンギン』は。
「わがまま、なのかなぁ」
一際大きく爆発が起こり、何処からか立ち上る黒煙が部屋へと入ってきていた。咳が出たので口元を押さえて背中を丸めていると、背後から声が聞こえた。
「ペンギン!」
振り返ればトラファルガーが『シルビ』を睨んでいる。
「シャチ達が待ってる。早く戻るぞ! 『船長命令』だ!」
「……ぁ、アイアイ、『船長』!」