シャチ視点

食事を終えて店を出ると羽の羽ばたきが聞こえ、空を見上げると昨夜のフクロウが飛んでいた。

「喋るフクロウ！」
「ムクロウ」

シャチが指差して叫ぶと同時に、クロームがフクロウへ向けて腕を伸ばす。その腕へ静かに降り立ったフクロウは、グルリと首を回してシャチ達を見た。

「昨夜の海賊の方ですね。昨夜は驚かせてしまったようで」
「やっぱり喋った！」
「ウチのクルーへ何をした」

船長が声を低くして問いかける。その手がさり気無く長刀に掛けられていることに気付いてシャチはしまったと思った。クルーを大切にしてくれる船長の事だから、『昨夜のこと』が気になったのだろう。
フクロウはクロームの腕の上でクフフと特徴的な笑いを零し、首を傾げた。

「これはこれは。四億の賞金首『死の外科医』ことトラファルガー・ローではありませんか。昨夜はボクがこの姿で話しかけた為に、どうも貴方のクルーを驚かしてしまったようです。謝罪いたします」

確認をするように船長が振り返ったので、シャチはベポと一緒になって頷く。フクロウはバランスを取るように羽を広げては首の角度をこまめに変えていた。

「このような姿で失礼します。ボクは『ムクロ』と言って、次期領主後継者であるツナヨシの一応部下をしています」
「朝にペンギンから聞いた。『憑依』という事が出来るらしいな」
「クフフ。その通りです大きな方。その『ペンギン』という方は知りませんが、……詳しいのですね」

ジャンバールは朝の段階で既にペンギンに聞いていたらしい。だったら教えてくれればと思ったものの、ペンギンに尋ねようと思っていたことすら忘れていたシャチの言える事ではないだろう。『憑依』というのが良く分からなかったが、悪魔の実の能力かこの国特有の『炎』の力によるものに違いない。

「で、そのフクロウが何の用だ」
「ボクは今『ミルフィオーレ』へ居るのですが、ユニとビャクランから不思議な話を聞きましてね」

『ミルフィオーレ』は諸島の一つの名前だろう。『ユニ』と『ビャクラン』というのは人の名前だろうが誰かは分からない。しかし『憑依』というのは、そんな遠い所からでも出来るものなのかとすごいと思った。
海を隔てた場所で話をするなんで、電伝虫でもあるまいし。

「不思議な話？」

船長が尋ねるとフクロウは船長を見る。

「ボクも半信半疑だったのですが、たった今の話を聞いて調べる必要があると思いました」

たった今の話とは何の事かとシャチは疑問に思う。お前分かるかとジャンバールを見上げてもジャンバールも分からないらしく、ジャンバールが分からないのであればシャチやベポなんてもっと分かる訳が無い。
バイザクも不思議そうにフクロウと船長の話を聞いていた。

「トラファルガー船長。貴方の部下であるペンギンさんの身柄を預からせていただけますか」