故郷の話
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バンダナ視点
「誰かが噂してる気がする」
「そりゃ風邪だよ。咳だよペンちゃん」
昼になって船の見張り当番だった料理番に、喉に優しい粥を作ってもらって座っているペンギンの元へ持っていけば、ペンギンが食べながらそんな事を呟いた。
それまでに咳をしておらず、そもそも風邪を引いていなければその冗談に乗ってやることも出来たが、今は冗談を言っているくらいなら早く治せと言いたい。ペンギン本人も安静を強制されている今の状態に辟易しているのか、外へ出たそうにチラチラと甲板への出口を見ている。
「外の空気……」
「船長が帰ってきて、許可が出たら良いよ」
「駄目だぞペンギン! 潮風は喉に悪いんだからな!」
昼食を食べ終えて食器を片付けに行こうとしていた、やっぱり見張り番のイルカが叱りつけた。それに肩を竦めてペンギンは粥を口へ運ぶ。
「ペンギンは普段から大声で話すから、喉にも響きやすいんだよ」
「そう言っても癖だから仕方ねぇ。それに俺より銀色鮫なんかもっとデケェし、弟だって……」
「弟いんのかい?」
「今の無しで願います。自分で言っておいてショックだった……」
風邪のせいでメンタルがおかしいらしいペンギンは、自分で出した話題に自分でへこんでいた。落ち込むなんてベポのように打たれ弱いのでも無し、珍しいなとバンダナとイルカが顔を見合わせれば、持っている匙の先で粥の表面を突きながらペンギンが頬杖を突く。
「あー、今頃皆何やってんだろぉなぁ」
「お昼食べてるんじゃない?」
「船長達の心配なんていいから、ペンちゃんは目の前の粥を片付けなさいって」
「うー……」
呻きながらももそもそと粥を口へ運ぶペンギンに、バンダナは珈琲のお代わりを頼もうと立ち上がった。食堂の外から誰かが走ってくる足音がして何の気と無しに出口の方を見れば、甲板に居た筈のクルーが血相を変えて駆け込んでくる。
何かあったのかと一瞬で緊迫感の走る食堂に、そのクルーは泣きそうになって叫んだ。
「ラ、ララララライオン! ライオンが!」
「ライオン!?」
「ライオンが甲板に上がってきた!」
バンダナが昨日シャチと見た白いライオンを思い出すと同時に、食べかけの粥を置いてペンギンが走り出す。病人であるにも関わらず喉以外には特に支障の無いせいか、普段と変わりなく通路を駆け抜けていく姿を、バンダナも急いで追いかけた。
梯子を昇って甲板への扉を押し開けようとするペンギンに追いつき、バンダナも手を貸して扉を開けて外へと飛び出る。甲板ではクルーが数人怯えながら悠然と立っているライオンと対峙していた。
昨日見たライオンで間違いない。という事はこの島の誰かに飼われているライオンであり、下手に手を出していいものかと悩む。甲板に上がりこんできたのはアチラだが。
船長のいない時によくも来てくれたなと考えたバンダナの隣で、ペンギンが叫んだ。
「ベスター! 伏せぇ!」
犬じゃないんだから。と思わず思ったバンダナはきっと悪くない。
「誰かが噂してる気がする」
「そりゃ風邪だよ。咳だよペンちゃん」
昼になって船の見張り当番だった料理番に、喉に優しい粥を作ってもらって座っているペンギンの元へ持っていけば、ペンギンが食べながらそんな事を呟いた。
それまでに咳をしておらず、そもそも風邪を引いていなければその冗談に乗ってやることも出来たが、今は冗談を言っているくらいなら早く治せと言いたい。ペンギン本人も安静を強制されている今の状態に辟易しているのか、外へ出たそうにチラチラと甲板への出口を見ている。
「外の空気……」
「船長が帰ってきて、許可が出たら良いよ」
「駄目だぞペンギン! 潮風は喉に悪いんだからな!」
昼食を食べ終えて食器を片付けに行こうとしていた、やっぱり見張り番のイルカが叱りつけた。それに肩を竦めてペンギンは粥を口へ運ぶ。
「ペンギンは普段から大声で話すから、喉にも響きやすいんだよ」
「そう言っても癖だから仕方ねぇ。それに俺より銀色鮫なんかもっとデケェし、弟だって……」
「弟いんのかい?」
「今の無しで願います。自分で言っておいてショックだった……」
風邪のせいでメンタルがおかしいらしいペンギンは、自分で出した話題に自分でへこんでいた。落ち込むなんてベポのように打たれ弱いのでも無し、珍しいなとバンダナとイルカが顔を見合わせれば、持っている匙の先で粥の表面を突きながらペンギンが頬杖を突く。
「あー、今頃皆何やってんだろぉなぁ」
「お昼食べてるんじゃない?」
「船長達の心配なんていいから、ペンちゃんは目の前の粥を片付けなさいって」
「うー……」
呻きながらももそもそと粥を口へ運ぶペンギンに、バンダナは珈琲のお代わりを頼もうと立ち上がった。食堂の外から誰かが走ってくる足音がして何の気と無しに出口の方を見れば、甲板に居た筈のクルーが血相を変えて駆け込んでくる。
何かあったのかと一瞬で緊迫感の走る食堂に、そのクルーは泣きそうになって叫んだ。
「ラ、ララララライオン! ライオンが!」
「ライオン!?」
「ライオンが甲板に上がってきた!」
バンダナが昨日シャチと見た白いライオンを思い出すと同時に、食べかけの粥を置いてペンギンが走り出す。病人であるにも関わらず喉以外には特に支障の無いせいか、普段と変わりなく通路を駆け抜けていく姿を、バンダナも急いで追いかけた。
梯子を昇って甲板への扉を押し開けようとするペンギンに追いつき、バンダナも手を貸して扉を開けて外へと飛び出る。甲板ではクルーが数人怯えながら悠然と立っているライオンと対峙していた。
昨日見たライオンで間違いない。という事はこの島の誰かに飼われているライオンであり、下手に手を出していいものかと悩む。甲板に上がりこんできたのはアチラだが。
船長のいない時によくも来てくれたなと考えたバンダナの隣で、ペンギンが叫んだ。
「ベスター! 伏せぇ!」
犬じゃないんだから。と思わず思ったバンダナはきっと悪くない。