故郷の話
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ロー視点
「悪かったな。わざわざ話が出来る奴を呼んでもらって」
「タルボお爺さんは、もう隠居した人だから」
礼代わりになるかどうか分からないが、クロームへ昼食を奢ると申し出たところ了承されたので、食べに行く為に屋敷を出ようと廊下を歩く。超直感について話してくれたタルボ爺さんは、当代領主である九代目に呼ばれているからといない。
「あの爺さんはこの島の世話役か何かだったのか?」
「ううん。彫金師なの。本当か分からないけど、もう千年以上生きてるっていう」
「信じがたい噂だな」
廊下の途中ですれ違った使用人にクロームが外で食事を取ってくると話す。使用人のクロームへ対する態度から、クロームもこの屋敷では重要な人物なのかと思った。
「お前も偉いのか?」
「偉い?」
「幹部とかだったりするのか」
「幹部……。ボンゴレの領主には代々六人の部下が付くの。私は、その内の一人の部下なだけ」
それでも偉い方なのだろう。ツナヨシを『ボス』と呼んでいたから、クロームは現領主よりツナヨシ寄りの部下なのだと思われた。それにしても一人に七人の部下は少ないなと考えて、ふと気付いて先導するクロームを見る。
「六人ってのは、炎の属性の人数と一緒だな。ということは領主を含めて全属性の奴等を傍に置いてるってことか?」
「そう。基本は一人一つだから。ボスは大空の炎を使えるの」
「大空の炎?」
「炎の特性のことよ。天候になぞらえていて、ボスとか領主になる人は大抵大空の炎を灯せる」
「お前は?」
「私は、霧の炎」
クロームが右手へ嵌めていた指輪へ、藍色の炎が灯った。途端現れた細身の槍を握り締めクロームは微笑む。
「霧の炎はこうして幻覚を作り出せるの。だから霧の炎が使える人は幻術師が多い」
「お前も幻術師?」
コクリと頷いたクロームの手から槍が消えた。何も無いところから幻覚とはいえ何でも作り出せるというのは、非常に便利な能力だと思う。
下手をすれば悪魔の実なんかよりも万能なものだ。この国が鎖国状態を選んだ事が賢明な判断にしか思えない。
しかしおそらく、だからといって島に入れた誰かがそれを利用しようとなれば、領主が気付くという按配。非常に良く出来たシステムというべきか。
「一人で全属性を使えたりはしないんだろう? そうだったら最高なのに」
「時々複数の属性を使える人はいるわ。全属性は流石に一人だけだけど」
「一人だけ?」
「彼は『特別』だから『八』属性まで使えるの」
昨夜食堂の女将から聞いた話とは違うなと、ローが思っていることが分かったかのように、クロームは指輪へ炎を灯すと空中に七色の炎の幻覚を作り上げた。
「この七色が基本の炎。それぞれ大空、嵐、雨、晴、霧、雲、雷の名前がついてる。けれどもこれにもう一つ、『夜の炎』といわれる炎があるの」
七色の炎を消して、黒い炎を一つだけ灯す。
「それは他の炎とは出来た方法が違うから、今は一人しか使えない。だからあまり研究も進んでなくて、私もあまり知らない」
「解明されてないのか」
「うん。する必要も無いって、皆が思ってるわ。一人しか使えないからエネルギーに変換するにしても量が少ないって」
この国全体のエネルギーとして利用するなら、確かに一人しか扱えないのでは難しいだろう。その一人だけに負担が掛かるというのもあるが、指へ嵌められる装飾品程度の小さなものへ灯す程でしかない『炎』では、何をするにしたって多くの人材を必要とするように思えた。
ローは『炎』の事もまだ良く分からないが、それにしたって個人で限度などもあるはずだ。
「ちなみに、他の『炎』はエネルギーとして活用していたりするのか?」
「島と島の行き来をする船の推進力とか、飛行船が作れないかの実験がされているわ。小船でしかいけない場所も、空からなら比較的楽に行けるから」
飛行船と聞いて少しだけ興味が湧いてしまう。元より潜水艦なんて通常の船とは違うもので航海をしている身だ。それ以前にローだって男である。
「島が連なる国だからな。ここは」
興奮している事を隠す様に辛うじてそれだけを言えば、クロームはローを一度見上げてからクスリと笑った。
「高台の倉庫の傍に飛行場があって、そこに試作機が置いてあるの。あの方向の先には小さい無人島しかないから試運転にはちょうどいいだろうって。……乗ることは出来ないけれど、見学は出来たと思う」
見抜かれている、とローはクロームから視線を逸らす。
階段を降りていると尻尾の長い猫がやって来てクロームの足へと擦り寄った。クロームがしゃがんでその猫を抱き上げる。
「コイツも飼い主がこの屋敷で働いてるのか?」
「こいつ『も』?」
「昨日は犬を見た」
「ジローのことね。他にも孔雀とかハリネズミとかカンガルーがいるわ」
「ここは動物園か」
「ジッリョネロには恐竜もいるの」
「ドレーク屋が聞いたら喜びそうだな。いや、別に恐竜好きでもないのかヤツは」
シャボンティ諸島で遭遇した、海軍くずれのルーキーの一人を思い出した。彼は悪魔の実の能力で恐竜へなれる男だ。恐竜が好きかどうかまでは知らない。
「私は毛があるほうが好き」
「奇遇だな。オレもだ」
「悪かったな。わざわざ話が出来る奴を呼んでもらって」
「タルボお爺さんは、もう隠居した人だから」
礼代わりになるかどうか分からないが、クロームへ昼食を奢ると申し出たところ了承されたので、食べに行く為に屋敷を出ようと廊下を歩く。超直感について話してくれたタルボ爺さんは、当代領主である九代目に呼ばれているからといない。
「あの爺さんはこの島の世話役か何かだったのか?」
「ううん。彫金師なの。本当か分からないけど、もう千年以上生きてるっていう」
「信じがたい噂だな」
廊下の途中ですれ違った使用人にクロームが外で食事を取ってくると話す。使用人のクロームへ対する態度から、クロームもこの屋敷では重要な人物なのかと思った。
「お前も偉いのか?」
「偉い?」
「幹部とかだったりするのか」
「幹部……。ボンゴレの領主には代々六人の部下が付くの。私は、その内の一人の部下なだけ」
それでも偉い方なのだろう。ツナヨシを『ボス』と呼んでいたから、クロームは現領主よりツナヨシ寄りの部下なのだと思われた。それにしても一人に七人の部下は少ないなと考えて、ふと気付いて先導するクロームを見る。
「六人ってのは、炎の属性の人数と一緒だな。ということは領主を含めて全属性の奴等を傍に置いてるってことか?」
「そう。基本は一人一つだから。ボスは大空の炎を使えるの」
「大空の炎?」
「炎の特性のことよ。天候になぞらえていて、ボスとか領主になる人は大抵大空の炎を灯せる」
「お前は?」
「私は、霧の炎」
クロームが右手へ嵌めていた指輪へ、藍色の炎が灯った。途端現れた細身の槍を握り締めクロームは微笑む。
「霧の炎はこうして幻覚を作り出せるの。だから霧の炎が使える人は幻術師が多い」
「お前も幻術師?」
コクリと頷いたクロームの手から槍が消えた。何も無いところから幻覚とはいえ何でも作り出せるというのは、非常に便利な能力だと思う。
下手をすれば悪魔の実なんかよりも万能なものだ。この国が鎖国状態を選んだ事が賢明な判断にしか思えない。
しかしおそらく、だからといって島に入れた誰かがそれを利用しようとなれば、領主が気付くという按配。非常に良く出来たシステムというべきか。
「一人で全属性を使えたりはしないんだろう? そうだったら最高なのに」
「時々複数の属性を使える人はいるわ。全属性は流石に一人だけだけど」
「一人だけ?」
「彼は『特別』だから『八』属性まで使えるの」
昨夜食堂の女将から聞いた話とは違うなと、ローが思っていることが分かったかのように、クロームは指輪へ炎を灯すと空中に七色の炎の幻覚を作り上げた。
「この七色が基本の炎。それぞれ大空、嵐、雨、晴、霧、雲、雷の名前がついてる。けれどもこれにもう一つ、『夜の炎』といわれる炎があるの」
七色の炎を消して、黒い炎を一つだけ灯す。
「それは他の炎とは出来た方法が違うから、今は一人しか使えない。だからあまり研究も進んでなくて、私もあまり知らない」
「解明されてないのか」
「うん。する必要も無いって、皆が思ってるわ。一人しか使えないからエネルギーに変換するにしても量が少ないって」
この国全体のエネルギーとして利用するなら、確かに一人しか扱えないのでは難しいだろう。その一人だけに負担が掛かるというのもあるが、指へ嵌められる装飾品程度の小さなものへ灯す程でしかない『炎』では、何をするにしたって多くの人材を必要とするように思えた。
ローは『炎』の事もまだ良く分からないが、それにしたって個人で限度などもあるはずだ。
「ちなみに、他の『炎』はエネルギーとして活用していたりするのか?」
「島と島の行き来をする船の推進力とか、飛行船が作れないかの実験がされているわ。小船でしかいけない場所も、空からなら比較的楽に行けるから」
飛行船と聞いて少しだけ興味が湧いてしまう。元より潜水艦なんて通常の船とは違うもので航海をしている身だ。それ以前にローだって男である。
「島が連なる国だからな。ここは」
興奮している事を隠す様に辛うじてそれだけを言えば、クロームはローを一度見上げてからクスリと笑った。
「高台の倉庫の傍に飛行場があって、そこに試作機が置いてあるの。あの方向の先には小さい無人島しかないから試運転にはちょうどいいだろうって。……乗ることは出来ないけれど、見学は出来たと思う」
見抜かれている、とローはクロームから視線を逸らす。
階段を降りていると尻尾の長い猫がやって来てクロームの足へと擦り寄った。クロームがしゃがんでその猫を抱き上げる。
「コイツも飼い主がこの屋敷で働いてるのか?」
「こいつ『も』?」
「昨日は犬を見た」
「ジローのことね。他にも孔雀とかハリネズミとかカンガルーがいるわ」
「ここは動物園か」
「ジッリョネロには恐竜もいるの」
「ドレーク屋が聞いたら喜びそうだな。いや、別に恐竜好きでもないのかヤツは」
シャボンティ諸島で遭遇した、海軍くずれのルーキーの一人を思い出した。彼は悪魔の実の能力で恐竜へなれる男だ。恐竜が好きかどうかまでは知らない。
「私は毛があるほうが好き」
「奇遇だな。オレもだ」