故郷の話
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シャチ視点
大衆食堂を後にして、酒を飲みに違う店に行くというバンダナ達と別れてシャチは船へ戻る為に歩いていた。後ろからはジャンバールとベポが付いてくる。
「『炎』だってよ。スゲーのな」
「アレがあったら怪我なんて直ぐに治せちゃうよね」
防波堤の上を歩きながら言えばベポが口を開く。食堂で見た炎は今でも衝撃的だった。
この国で生まれた者にしか現れない能力らしいが、生まれたばかりの子供はきっと炎にビックリするのではと思う。
「そういやペンギンもこの島出身らしいけどさ、炎灯せんのかな?」
「だがペンギンが指輪を身に着けているところは見たこと無いぞ」
「オレもないなー」
ジャンバールとベポが首を傾げた。シャチもペンギンの手に指輪を見たことはそういえば無い。食堂の息子みたいに鎖で首に提げているのかと思ったが、ツナギの上半分を脱いでティシャツ姿になっていた時に、そんな物が提げられているのを見た覚えも無かった。
ペンギンが身に着けている装飾品といえば、左手首の腕輪と私服の時のウォレットチェーンだろう。だがそれは腕輪であって指輪ではない。
「持ってないのかな」
「失くしたのかもしれないよ」
「ペンギンが?」
「島を出る時に置いていったのかも知れないな」
「なんで?」
「不用意に身に着けていて、島の外で炎を出すのを恐れたのかもしれない。あんな能力、見つかれば科学者や珍しいもの好きがこぞって狙ってくるだろう」
元奴隷だったからこその視点で語るジャンバールに、シャチはそうなのだろうかと思う。ペンギンなら、そういった危険性を考えた上でも使えるものは利用すると豪語しそうだ。
防波堤から飛び降りてベポの隣を歩いていると、頭上を大きな鳥が滑空する。こんな夜に鳥がいるのかと見上げれば、鳥は近くの外灯へと留まってシャチ達へグルリと首を向けた。
フクロウである。
「こんな場所にフクロウがいるのか」
「眼の色が左右で違うよ! キレーだね」
ベポが近付いて手を伸ばした。フクロウの鉤爪は鋭くて腕を守る篭手も無しに留まらせるのは怪我して当たり前だと聞いた事があるので、シャチがベポに止めさせようとするも、それより早くフクロウがベポの腕へと移動する。
「人懐っこいのだな」
「腕は? 大丈夫か?」
「うん」
シャチとジャンバールも近付いてそっと手を伸ばした。大人しく頭を撫でられるフクロウに、残っていた警戒心が失われる。
「フワフワだなー。羽毛って感じ」
「羽毛だからな」
「ホーって鳴く? ホー」
「……ホー」
「鳴いた!」
目の前で鳴いたフクロウにベポが興奮して、もう一度鳴かせようとホーホー鳴き声の真似をした。フクロウがグルリと首を動かし、シャチ達を見渡す。
「……貴方たち、本当に海賊ですか?」
三人の誰のものでも無い声が、目の前のフクロウから聞こえた。
「し、喋ったぁああああああ!?」
思わず叫んでシャチとベポは逃げるように船へと走り出す。ジャンバールは羽ばたいてベポの腕から離れたフクロウと走って逃げるシャチ達を見比べてから、遅れて後を追いかけてくる。
船の中に入ってから、喋る白クマがいるのだから喋るフクロウがいても別におかしくないのだと思い至った。
大衆食堂を後にして、酒を飲みに違う店に行くというバンダナ達と別れてシャチは船へ戻る為に歩いていた。後ろからはジャンバールとベポが付いてくる。
「『炎』だってよ。スゲーのな」
「アレがあったら怪我なんて直ぐに治せちゃうよね」
防波堤の上を歩きながら言えばベポが口を開く。食堂で見た炎は今でも衝撃的だった。
この国で生まれた者にしか現れない能力らしいが、生まれたばかりの子供はきっと炎にビックリするのではと思う。
「そういやペンギンもこの島出身らしいけどさ、炎灯せんのかな?」
「だがペンギンが指輪を身に着けているところは見たこと無いぞ」
「オレもないなー」
ジャンバールとベポが首を傾げた。シャチもペンギンの手に指輪を見たことはそういえば無い。食堂の息子みたいに鎖で首に提げているのかと思ったが、ツナギの上半分を脱いでティシャツ姿になっていた時に、そんな物が提げられているのを見た覚えも無かった。
ペンギンが身に着けている装飾品といえば、左手首の腕輪と私服の時のウォレットチェーンだろう。だがそれは腕輪であって指輪ではない。
「持ってないのかな」
「失くしたのかもしれないよ」
「ペンギンが?」
「島を出る時に置いていったのかも知れないな」
「なんで?」
「不用意に身に着けていて、島の外で炎を出すのを恐れたのかもしれない。あんな能力、見つかれば科学者や珍しいもの好きがこぞって狙ってくるだろう」
元奴隷だったからこその視点で語るジャンバールに、シャチはそうなのだろうかと思う。ペンギンなら、そういった危険性を考えた上でも使えるものは利用すると豪語しそうだ。
防波堤から飛び降りてベポの隣を歩いていると、頭上を大きな鳥が滑空する。こんな夜に鳥がいるのかと見上げれば、鳥は近くの外灯へと留まってシャチ達へグルリと首を向けた。
フクロウである。
「こんな場所にフクロウがいるのか」
「眼の色が左右で違うよ! キレーだね」
ベポが近付いて手を伸ばした。フクロウの鉤爪は鋭くて腕を守る篭手も無しに留まらせるのは怪我して当たり前だと聞いた事があるので、シャチがベポに止めさせようとするも、それより早くフクロウがベポの腕へと移動する。
「人懐っこいのだな」
「腕は? 大丈夫か?」
「うん」
シャチとジャンバールも近付いてそっと手を伸ばした。大人しく頭を撫でられるフクロウに、残っていた警戒心が失われる。
「フワフワだなー。羽毛って感じ」
「羽毛だからな」
「ホーって鳴く? ホー」
「……ホー」
「鳴いた!」
目の前で鳴いたフクロウにベポが興奮して、もう一度鳴かせようとホーホー鳴き声の真似をした。フクロウがグルリと首を動かし、シャチ達を見渡す。
「……貴方たち、本当に海賊ですか?」
三人の誰のものでも無い声が、目の前のフクロウから聞こえた。
「し、喋ったぁああああああ!?」
思わず叫んでシャチとベポは逃げるように船へと走り出す。ジャンバールは羽ばたいてベポの腕から離れたフクロウと走って逃げるシャチ達を見比べてから、遅れて後を追いかけてくる。
船の中に入ってから、喋る白クマがいるのだから喋るフクロウがいても別におかしくないのだと思い至った。