原作前日常編
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夢主視点
あ、面倒臭いと思ったものの、俯いて再び涙を零す青年に、感情移入しなかったと言えば嘘になる。実の兄妹へ裏切られたことはシルビには無かったが、無かったからこそその絶望感を想像せずにはいられない。
両親を失ってからもたった二人で生きてきただろうに。妹が選択肢とタイミングを間違えなければ、もう少しまともな暮らしだって出来ていた筈の青年。
あの妹より惨めで『可哀想』なのは、この青年のほうではないか。
冷たい地下牢の床へ力なくへたり込む青年に、シルビは少し考えてからゆっくりと声を掛けた。
「ところで俺達は海賊なんだぁ」
「知ってるよ。ハートの海賊団だろ」
「そのハートの海賊団の船長、トラファルガー・ローはとある島でとある青年を気に入ったらしくてなぁ。部下である俺やもう一人に『乗せていいか』って言うんだぁ」
「……船長なんだから好き勝手に乗せればいいんじゃないのか?」
「あの人自分で『医療知識のある奴』っていう条件を付けてんだよ。だからおいそれとクルーを増やせねぇ」
「ソイツは医者じゃなかった?」
「歯並びがいいだけの青年だよ。……でも、医者になれる見込みはあるんじゃねぇのかって船長ともう一人のクルーは思ってるっぽい。まぁ、それでも根気が無けりゃ医者になるなんて難しい話だけどなぁ」
「……誰かに必要とされてれば、オレだったら頑張るのにな。ソイツが羨ましいよ」
「羨ましい?」
「オレなんて実の妹にすら捨てられたんだぜ? 誰にも必要とされなくなったんだ。羨ましいに決まってる」
吐き捨てるように言った青年はまだ気付いていないらしい。けれどもその事自体はシルビには関係なく、青年の言った言葉へ口角を上げる。
「『誰にも必要とされてない』なら、俺達ハートの海賊団が君を『必要として』あげようかぁ?」
「……は?」
顔を上げる青年へシルビは上げた口角のいやらしさには気付かれないよう、人好きのする笑みへと変化させた。悪魔のような甘言などシルビには朝飯前だ。
青年をこのままハートのクルーへしてしまえば、ローは喜ぶだろうしシルビ達を嵌めようとした妹は唯一の肉親を奪われたとして煮え湯を飲まされるだろう。
あの妹へやり返すにはこの青年の存在がネックだったのだ。シルビとしてはローにばれないうちに殺して片付けてしまおうと思っていたのだが、妹へ捨てられたと嘆く青年を見て気が変わった。
「君の妹が君をいらねぇと言うのなら、我らがハートの海賊団が君を貰い受ける。君は気付いちゃいなかったらしいが俺が話してたのは『君の事』で、あの船長が欲しがっていたのは『君』だぁ。……つまり俺達は君を『必要としている』」
あ、面倒臭いと思ったものの、俯いて再び涙を零す青年に、感情移入しなかったと言えば嘘になる。実の兄妹へ裏切られたことはシルビには無かったが、無かったからこそその絶望感を想像せずにはいられない。
両親を失ってからもたった二人で生きてきただろうに。妹が選択肢とタイミングを間違えなければ、もう少しまともな暮らしだって出来ていた筈の青年。
あの妹より惨めで『可哀想』なのは、この青年のほうではないか。
冷たい地下牢の床へ力なくへたり込む青年に、シルビは少し考えてからゆっくりと声を掛けた。
「ところで俺達は海賊なんだぁ」
「知ってるよ。ハートの海賊団だろ」
「そのハートの海賊団の船長、トラファルガー・ローはとある島でとある青年を気に入ったらしくてなぁ。部下である俺やもう一人に『乗せていいか』って言うんだぁ」
「……船長なんだから好き勝手に乗せればいいんじゃないのか?」
「あの人自分で『医療知識のある奴』っていう条件を付けてんだよ。だからおいそれとクルーを増やせねぇ」
「ソイツは医者じゃなかった?」
「歯並びがいいだけの青年だよ。……でも、医者になれる見込みはあるんじゃねぇのかって船長ともう一人のクルーは思ってるっぽい。まぁ、それでも根気が無けりゃ医者になるなんて難しい話だけどなぁ」
「……誰かに必要とされてれば、オレだったら頑張るのにな。ソイツが羨ましいよ」
「羨ましい?」
「オレなんて実の妹にすら捨てられたんだぜ? 誰にも必要とされなくなったんだ。羨ましいに決まってる」
吐き捨てるように言った青年はまだ気付いていないらしい。けれどもその事自体はシルビには関係なく、青年の言った言葉へ口角を上げる。
「『誰にも必要とされてない』なら、俺達ハートの海賊団が君を『必要として』あげようかぁ?」
「……は?」
顔を上げる青年へシルビは上げた口角のいやらしさには気付かれないよう、人好きのする笑みへと変化させた。悪魔のような甘言などシルビには朝飯前だ。
青年をこのままハートのクルーへしてしまえば、ローは喜ぶだろうしシルビ達を嵌めようとした妹は唯一の肉親を奪われたとして煮え湯を飲まされるだろう。
あの妹へやり返すにはこの青年の存在がネックだったのだ。シルビとしてはローにばれないうちに殺して片付けてしまおうと思っていたのだが、妹へ捨てられたと嘆く青年を見て気が変わった。
「君の妹が君をいらねぇと言うのなら、我らがハートの海賊団が君を貰い受ける。君は気付いちゃいなかったらしいが俺が話してたのは『君の事』で、あの船長が欲しがっていたのは『君』だぁ。……つまり俺達は君を『必要としている』」