空白の二年間編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キラー視点
銃声。
「キラー!」
クルーの自分を呼ぶ声に、ああ狙われていたのは自分だったのかとキラーは鈍いことを思う。今のキラーは彼女を少なからず危険から遠ざけられた事で、少し気を抜いてしまっていたのかもしれない。
でなければ、銃口が自分へ向けられている時点で動けたはずだった。
仮面をしているとは言え顔を守るように腕を上げて身構えたところで、痛みはいくら待ってもやってこない。外れたのかと腕を降ろせば、眼の前には彼女がキラーを庇うように背を向けて立っている。
インク汚れのついたその手には、先程まで彼女自身の手を拘束していた鎖が持たれていた。袖から覗く手首には鎖による拘束の赤い痕が付いている。
「……アマネ?」
何も考えられないままキラーが名前を呼べば、彼女は鎖を放して地面へと落としスカートの裾を翻しながら振り返り、勢い良くキラーへと抱き付いて来た。
手の自由が奪われていて良かったと今ほど思ったことは無いだろう。驚いて顔も赤くなっていたかもしれない。仮面もしていて良かった。
どうしていきなりそんな事をしてきたのか分からないのはキラーだけではなく、目撃していたキッド達やビアガーム達もである。思わず襲撃や防衛の手を止めてしまうほどには、それは場違いな行動だった。
抱き付いて来た彼女の身体は、服の上から見て思っていたよりも細い。肉付きも今までに覚えのある女性の身体に比べれば悪く、胸も無かった。
無くて当然だ。
「ゴメンなぁ。でも君はちょっと相手を信用し過ぎだぜぇ」
「おま……、おとっ」
アマネの初めて聞いた謝罪の声にようやく、キラーはその事実を知る。驚きで回らない頭が耳元で囁かれた謝罪の意味を理解する前に、アマネはキラーから離れ身を翻して駆け出したかと思うと、呆然としていたビアガームへと接近しその鳩尾へ握り拳を叩き込んでいた。
うぇ、ともぶふぉ、ともつかない声を漏らして気を失ったビアガームを、アマネは軽い荷物をそうする様に肩へと担ぎ上げる。そしてそのまま走り出したかと思うと、積まれている木箱を足場に天井近くの天窓へと飛び上がり、ガラスを突き破って外へと飛び出した。
思わず伸ばした手に、切った覚えのない鎖が揺れている事に気付いてキラーは理解する。
全部、演技だった。
獲物を横取りされたのだと気付いたキッドが怒りを露わに暴れている。クルーの一人がキラーの曲刀を取り返し持って来てくれた。
鬱憤を晴らさんばかりに暴れるキッドを止めるつもりは無かったが、キラーがその乱闘に参加する気力も無い。
騒乱の中、『彼』が最後に残した謝罪の言葉だけが、キラーの耳の中でリフレインしていた。
銃声。
「キラー!」
クルーの自分を呼ぶ声に、ああ狙われていたのは自分だったのかとキラーは鈍いことを思う。今のキラーは彼女を少なからず危険から遠ざけられた事で、少し気を抜いてしまっていたのかもしれない。
でなければ、銃口が自分へ向けられている時点で動けたはずだった。
仮面をしているとは言え顔を守るように腕を上げて身構えたところで、痛みはいくら待ってもやってこない。外れたのかと腕を降ろせば、眼の前には彼女がキラーを庇うように背を向けて立っている。
インク汚れのついたその手には、先程まで彼女自身の手を拘束していた鎖が持たれていた。袖から覗く手首には鎖による拘束の赤い痕が付いている。
「……アマネ?」
何も考えられないままキラーが名前を呼べば、彼女は鎖を放して地面へと落としスカートの裾を翻しながら振り返り、勢い良くキラーへと抱き付いて来た。
手の自由が奪われていて良かったと今ほど思ったことは無いだろう。驚いて顔も赤くなっていたかもしれない。仮面もしていて良かった。
どうしていきなりそんな事をしてきたのか分からないのはキラーだけではなく、目撃していたキッド達やビアガーム達もである。思わず襲撃や防衛の手を止めてしまうほどには、それは場違いな行動だった。
抱き付いて来た彼女の身体は、服の上から見て思っていたよりも細い。肉付きも今までに覚えのある女性の身体に比べれば悪く、胸も無かった。
無くて当然だ。
「ゴメンなぁ。でも君はちょっと相手を信用し過ぎだぜぇ」
「おま……、おとっ」
アマネの初めて聞いた謝罪の声にようやく、キラーはその事実を知る。驚きで回らない頭が耳元で囁かれた謝罪の意味を理解する前に、アマネはキラーから離れ身を翻して駆け出したかと思うと、呆然としていたビアガームへと接近しその鳩尾へ握り拳を叩き込んでいた。
うぇ、ともぶふぉ、ともつかない声を漏らして気を失ったビアガームを、アマネは軽い荷物をそうする様に肩へと担ぎ上げる。そしてそのまま走り出したかと思うと、積まれている木箱を足場に天井近くの天窓へと飛び上がり、ガラスを突き破って外へと飛び出した。
思わず伸ばした手に、切った覚えのない鎖が揺れている事に気付いてキラーは理解する。
全部、演技だった。
獲物を横取りされたのだと気付いたキッドが怒りを露わに暴れている。クルーの一人がキラーの曲刀を取り返し持って来てくれた。
鬱憤を晴らさんばかりに暴れるキッドを止めるつもりは無かったが、キラーがその乱闘に参加する気力も無い。
騒乱の中、『彼』が最後に残した謝罪の言葉だけが、キラーの耳の中でリフレインしていた。