空白の二年間編
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キラー視点
「いらっしゃ……お、また来たねお客さん。アマネちゃーん!」
「無理に呼ばなくても」
「いいんだよ、あの子だって楽しみにアンタのこと待ってんだから」
カウンターの中の店主がキラーの姿に気付くと、厨房に居るらしい彼女を呼ぶようになったのは三日前からだ。広場で話した時の別れ際店に来るように誘われて、以降一日に一回は必ず来るようになっていれば、店主も覚えて当然だろう。
給仕をさせる為に呼ばれたのだと思ったのかお盆を抱えて奥から出てきたアマネは、キラーに気付くと相変わらず微笑みを浮かべる。
ビアガームの情報収集は芳しくなかったものの、今日か明日には麻薬取引が行われるのではという有力な情報が出てきていた。船でその話をした後、キッドがニヤニヤしながら『また会いに行くのか』なんて言っていたが、キラーにはそんなつもりは無い。
ただ彼女と話すのが楽しいだけだ。海の上の荒くれた生活も嫌いではないが、そういうものを一時だけ求めたって悪くはあるまい。
争い事などとは微塵も関わりの無さそうな、平和な場所へ生きている彼女にそれ以外何も求めるつもりは無かった。
しかしそれも今日か明日には終わりなのだろう。
『いつも有難うございます。でも、毎日来て大丈夫なのですか?』
「問題ない。それにここの料理は美味いからな」
『おだてても安くなりませんよ?』
腰に提げていた帳面に書いて会話をする彼女の手は、インクで汚れている。飲食物を扱う店で働いているので気をつけてはいるのだろうが、それでも喋れない分書く量が増えて結局汚れてしまうし、何度洗っても完全には落ちないのだろう。
インクの汚れが無ければ、きっと綺麗な手だ。
アマネはキラーがそんな事を思っているとは露知らず、注文を書き取って厨房へと戻っていく。その後ろ姿を見送りながら、やはり数日後には居なくなる事を言ったほうがいいだろうかと考える。
言わないままに居なくなった方がいいのか、この数日の親交のことを考えてちゃんと言ったほうがいいのか。
けれどもキラーにはもう、言わずに去ってしまえば彼女が残念がるだろうことも理解している。喋れない分なのか、キラーの一言にも一喜一憂してくれる人だ。
海賊の辛いところは、そういうところだと思う。
アマネが両手でお盆を支えて料理を運んでくる。無言とは言え丁寧な所作で皿を置いたアマネを見上げれば目が合い、その印象的な紫の瞳が細められた。
『ごゆっくり』
彼女はそれだけはいつも、唇を動かして言うのである。
「いらっしゃ……お、また来たねお客さん。アマネちゃーん!」
「無理に呼ばなくても」
「いいんだよ、あの子だって楽しみにアンタのこと待ってんだから」
カウンターの中の店主がキラーの姿に気付くと、厨房に居るらしい彼女を呼ぶようになったのは三日前からだ。広場で話した時の別れ際店に来るように誘われて、以降一日に一回は必ず来るようになっていれば、店主も覚えて当然だろう。
給仕をさせる為に呼ばれたのだと思ったのかお盆を抱えて奥から出てきたアマネは、キラーに気付くと相変わらず微笑みを浮かべる。
ビアガームの情報収集は芳しくなかったものの、今日か明日には麻薬取引が行われるのではという有力な情報が出てきていた。船でその話をした後、キッドがニヤニヤしながら『また会いに行くのか』なんて言っていたが、キラーにはそんなつもりは無い。
ただ彼女と話すのが楽しいだけだ。海の上の荒くれた生活も嫌いではないが、そういうものを一時だけ求めたって悪くはあるまい。
争い事などとは微塵も関わりの無さそうな、平和な場所へ生きている彼女にそれ以外何も求めるつもりは無かった。
しかしそれも今日か明日には終わりなのだろう。
『いつも有難うございます。でも、毎日来て大丈夫なのですか?』
「問題ない。それにここの料理は美味いからな」
『おだてても安くなりませんよ?』
腰に提げていた帳面に書いて会話をする彼女の手は、インクで汚れている。飲食物を扱う店で働いているので気をつけてはいるのだろうが、それでも喋れない分書く量が増えて結局汚れてしまうし、何度洗っても完全には落ちないのだろう。
インクの汚れが無ければ、きっと綺麗な手だ。
アマネはキラーがそんな事を思っているとは露知らず、注文を書き取って厨房へと戻っていく。その後ろ姿を見送りながら、やはり数日後には居なくなる事を言ったほうがいいだろうかと考える。
言わないままに居なくなった方がいいのか、この数日の親交のことを考えてちゃんと言ったほうがいいのか。
けれどもキラーにはもう、言わずに去ってしまえば彼女が残念がるだろうことも理解している。喋れない分なのか、キラーの一言にも一喜一憂してくれる人だ。
海賊の辛いところは、そういうところだと思う。
アマネが両手でお盆を支えて料理を運んでくる。無言とは言え丁寧な所作で皿を置いたアマネを見上げれば目が合い、その印象的な紫の瞳が細められた。
『ごゆっくり』
彼女はそれだけはいつも、唇を動かして言うのである。