空白の二年間編
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キラー視点
ビアガームに関する情報は殆ど手に入らなかった。逆に言えばその少ない情報とその内容でこの島へいることは確定に近いが、細心の注意を払っているようで肝心の居場所に関するモノは何一つとして無い。
噴水のある広場のベンチで、キラーは情報収集に歩き回っていたクルーからの報告をまとめる。フルフェイスの男など居るだけで目立つのだが、キッド海賊団の船員は運の悪い事に頭のいい奴は少なく、比較的頭脳派に分類されるキラーが纏めないとどうにもならないのだ。
集まった情報では、近いうちに取引が行われるらしい。その取引の商品らしいブツの積み降ろしが暫く前にあった事。この島の住人はその取引に気付いていない事が分かった。
それが少し引っ掛かるものの、それだけ巧妙に隠しているという事なのだろう。その取引の日時を調べて襲撃するのが一番の手だろうかと考えたところで、ふと視界が暗くなった。
顔を上げれば、見覚えのある女性が心配そうにキラーの前へ立っている。着いた日に入った酒場の給仕だった人だと思い出すと同時に、彼女は肩から提げていたスケッチブックをキラーへと差し出した。
『気分でも悪いのですか?』
「いや、そうではない」
キラーが答えれば彼女は安心したように微笑んだ。スケッチブックを捲り再び何かを書いて差し出してくる。
『この前お店へ来てくださった海賊の方ですよね。今日は散歩ですか?』
「散歩では……キミは喋れないのか?」
『火事で顔以外の全身に怪我をしてしまいまして、声帯も傷ついてしまったんです』
「それは、いや、失礼なことを聞いた」
彼女はキラーの謝罪を受けて声を出さずに笑みを浮かべる。
他の島民と同じ性質なのかキラーが海賊だと分かっていても、臆することなく隣へと腰を降ろした。スケッチブックを捲りまた何か書こうとする。
『貴方のお名前は?』
「キラーだ」
『私は、アマネといいます』
この辺りの海では聞かない響きの名前だった。素直にそう感想を言えば、『アマネ』はニコニコとその返事を書く。
『火傷の痕を治そうと思って、お金を貯めながらセント・ポプラへ行く途中なんです。だから故郷はもっと遠いところ』
「そうか。何処の海なんだ?」
『北の海です』
「オレは南の海だ」
『いいですね。行ったことは無いんですけれどきっと暖かいのでしょう? 私は寒いのが苦手で』
声を失っていても誰かと話すのが好きらしい。キラーはあまり喋るのが得意という訳でもないが、彼女は返事を急かす事も無くキラーの無骨な言葉も上手く拾い上げてくれる。
気付けば彼女と話していて、キラーは午後の時間の殆どを潰してしまった。
ビアガームに関する情報は殆ど手に入らなかった。逆に言えばその少ない情報とその内容でこの島へいることは確定に近いが、細心の注意を払っているようで肝心の居場所に関するモノは何一つとして無い。
噴水のある広場のベンチで、キラーは情報収集に歩き回っていたクルーからの報告をまとめる。フルフェイスの男など居るだけで目立つのだが、キッド海賊団の船員は運の悪い事に頭のいい奴は少なく、比較的頭脳派に分類されるキラーが纏めないとどうにもならないのだ。
集まった情報では、近いうちに取引が行われるらしい。その取引の商品らしいブツの積み降ろしが暫く前にあった事。この島の住人はその取引に気付いていない事が分かった。
それが少し引っ掛かるものの、それだけ巧妙に隠しているという事なのだろう。その取引の日時を調べて襲撃するのが一番の手だろうかと考えたところで、ふと視界が暗くなった。
顔を上げれば、見覚えのある女性が心配そうにキラーの前へ立っている。着いた日に入った酒場の給仕だった人だと思い出すと同時に、彼女は肩から提げていたスケッチブックをキラーへと差し出した。
『気分でも悪いのですか?』
「いや、そうではない」
キラーが答えれば彼女は安心したように微笑んだ。スケッチブックを捲り再び何かを書いて差し出してくる。
『この前お店へ来てくださった海賊の方ですよね。今日は散歩ですか?』
「散歩では……キミは喋れないのか?」
『火事で顔以外の全身に怪我をしてしまいまして、声帯も傷ついてしまったんです』
「それは、いや、失礼なことを聞いた」
彼女はキラーの謝罪を受けて声を出さずに笑みを浮かべる。
他の島民と同じ性質なのかキラーが海賊だと分かっていても、臆することなく隣へと腰を降ろした。スケッチブックを捲りまた何か書こうとする。
『貴方のお名前は?』
「キラーだ」
『私は、アマネといいます』
この辺りの海では聞かない響きの名前だった。素直にそう感想を言えば、『アマネ』はニコニコとその返事を書く。
『火傷の痕を治そうと思って、お金を貯めながらセント・ポプラへ行く途中なんです。だから故郷はもっと遠いところ』
「そうか。何処の海なんだ?」
『北の海です』
「オレは南の海だ」
『いいですね。行ったことは無いんですけれどきっと暖かいのでしょう? 私は寒いのが苦手で』
声を失っていても誰かと話すのが好きらしい。キラーはあまり喋るのが得意という訳でもないが、彼女は返事を急かす事も無くキラーの無骨な言葉も上手く拾い上げてくれる。
気付けば彼女と話していて、キラーは午後の時間の殆どを潰してしまった。