空白の二年間編
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キラー視点
麻薬ブローカー、『ビアガーム』懸賞金五千三百万ベリー。
大物ではないが、小物と称するにはいささか高い賞金の首を持つ男が潜伏しているという噂のある島へ、キッド海賊団は船を泊めた。消耗品の補充ついでに、小遣い稼ぎをしようという魂胆のそれは、別に海賊の中では何もおかしい事は無い。
堂々と港へ停泊した船から降り立ったキラーは、久しぶりの揺れない地面を力強く踏み締める。いくら海賊が海を好きだとしても、たまにはこうして地上に立たなければ海の良さの再確認も出来ないというものだ。
獲物に気付かれる事を心配するとかそういったことはしない。というのもキッド海賊団は船長を筆頭に、キラーを含めて奇抜な格好を好む者が船員の殆どを占めている。中には理由があっての奇抜な格好の者もいるが、どうせ同じ事。
船だけを隠しても街中をそんな格好で歩けば、一発でキッド海賊団の者だと知られてしまうのだから、だったら最初から隠さずに行動した方が示威行為にもなる。既にキッドの賞金はビアガームなんて小物より高額だった。
港町は活気があり賑やかで、およそ麻薬取引が裏で行われているとは思えない。島の住民にそこまで悟られずに麻薬取引を行えるとも考えられなかった。麻薬取引であって生産ではないからだろうか。
兎にも角にもまずは腹ごしらえだと大人数でも入れそうな酒場を見つけて入れば、そこへいる漁師達も深刻な問題など何もないとばかりに酒盛りをしていた。
キッド率いる海賊が来ても、それが荒らしに来たのではないと悟ると気安く話しかけても来ている。どうやらこの島の住民は人がいい性質らしい。
「……噂はガセの様だな」
「ついでだからいいけどよ、少しツマンネェな」
残念がるキッドを宥めていれば酒が運ばれてくる。眼の前に置かれた酒瓶に礼を言おうとキラーが顔を上げれば、酒瓶を運んできた給仕と仮面越しに目が合った。
夜の様な黒髪を首筋でまとめた、朝焼けと夕焼けを混ぜ合わせたような紫の目が印象的な女である。
怪我でもしているのか襟口や袖口から覗く肌の部分には包帯が巻かれていた。キラーの仮面に驚いたのか僅かに目を見開いたものの、直ぐに目を細めて微笑み、声に出さず『ごゆっくり』と唇を動かして厨房へと戻っていく。
「ああいうのがタイプか?」
「からかうな。……どこかで見たことがある気がしただけだ」
キッドの軽口をたしなめて、キラーは何処で見たのだったかと思考を巡らせてみるものの、どうにも思い出せない。
結局他人の空似だろうと、運ばれてきた食事を摂ることに専念し始めた。
麻薬ブローカー、『ビアガーム』懸賞金五千三百万ベリー。
大物ではないが、小物と称するにはいささか高い賞金の首を持つ男が潜伏しているという噂のある島へ、キッド海賊団は船を泊めた。消耗品の補充ついでに、小遣い稼ぎをしようという魂胆のそれは、別に海賊の中では何もおかしい事は無い。
堂々と港へ停泊した船から降り立ったキラーは、久しぶりの揺れない地面を力強く踏み締める。いくら海賊が海を好きだとしても、たまにはこうして地上に立たなければ海の良さの再確認も出来ないというものだ。
獲物に気付かれる事を心配するとかそういったことはしない。というのもキッド海賊団は船長を筆頭に、キラーを含めて奇抜な格好を好む者が船員の殆どを占めている。中には理由があっての奇抜な格好の者もいるが、どうせ同じ事。
船だけを隠しても街中をそんな格好で歩けば、一発でキッド海賊団の者だと知られてしまうのだから、だったら最初から隠さずに行動した方が示威行為にもなる。既にキッドの賞金はビアガームなんて小物より高額だった。
港町は活気があり賑やかで、およそ麻薬取引が裏で行われているとは思えない。島の住民にそこまで悟られずに麻薬取引を行えるとも考えられなかった。麻薬取引であって生産ではないからだろうか。
兎にも角にもまずは腹ごしらえだと大人数でも入れそうな酒場を見つけて入れば、そこへいる漁師達も深刻な問題など何もないとばかりに酒盛りをしていた。
キッド率いる海賊が来ても、それが荒らしに来たのではないと悟ると気安く話しかけても来ている。どうやらこの島の住民は人がいい性質らしい。
「……噂はガセの様だな」
「ついでだからいいけどよ、少しツマンネェな」
残念がるキッドを宥めていれば酒が運ばれてくる。眼の前に置かれた酒瓶に礼を言おうとキラーが顔を上げれば、酒瓶を運んできた給仕と仮面越しに目が合った。
夜の様な黒髪を首筋でまとめた、朝焼けと夕焼けを混ぜ合わせたような紫の目が印象的な女である。
怪我でもしているのか襟口や袖口から覗く肌の部分には包帯が巻かれていた。キラーの仮面に驚いたのか僅かに目を見開いたものの、直ぐに目を細めて微笑み、声に出さず『ごゆっくり』と唇を動かして厨房へと戻っていく。
「ああいうのがタイプか?」
「からかうな。……どこかで見たことがある気がしただけだ」
キッドの軽口をたしなめて、キラーは何処で見たのだったかと思考を巡らせてみるものの、どうにも思い出せない。
結局他人の空似だろうと、運ばれてきた食事を摂ることに専念し始めた。