空白の二年間編
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夢主視点
占いに身を任せた結果とは言え逸れた事に変わりは無いと森を戻るのに連れて行けば、ホーキンスの船員達もハートと同じ酒場で飲むつもりだったらしく、向かった酒場にホーキンスの船員達が居た。何も言わずに行くのが吉とかで船員に何も言わずに一人で離れたものだから、ホーキンスが居なくなったことに気付いた船員達は混乱の極みだったらしい。
精神的に強いと思ったのだが、どうやら思い違いのようである。もしくは船長をそこまで敬愛しているという事なのか。
「そこまで慕われてるんだから、別に俺の一人くらいいらねぇと思うんだけどぉ」
「そんな事はない。あいつ等も大切だがお前も欲しい」
どちらも船長とクルーが戻ってきたしという事で同じ酒場で飲み始めたものの、ホーキンスはシルビが勧誘を断ったにも関わらず諦めていないようだった。シルビと同じテーブルに着いてタロットカードを広げだしたかと思うと、『何故断るんだ』と森での会話の続きをしようとしてくる。
森での出来事を知らないホーキンスの船員達や船長が、酒を飲みながらもコチラの話を気にしていることに気付きながら、シルビはテーブルへ頬杖を突いてホーキンスの相手をした。
こういう手合いはしっかり納得させて断ったほうが後腐れは無い。
「アンタが欲しいのは『何』なんだぁ? 手駒か部下か身代わりかぁ? それとも、生贄かぁ?」
「だと言ったら?」
「俺はアンタの手駒にはならねぇ。誰かの下に就いて跪くのも二度とゴメンだぁ。身代わりはホムンクルスかリバーズドールでも抱えてろぉ。生贄は……生贄はまぁ、なってもいいと思えるけど」
シャチが酒を噴き出しかけて噎せている。
テーブルへ広げられたタロットカードへ手を伸ばし、法則に則って並べられていたそれをぐしゃぐしゃにかき混ぜた。ホーキンスの視線がシルビへと向けられる。
「“逆さまの悪魔”」
「俺のことをそう呼ぶんじゃ尚更アンタの下にはいけねぇよ。『イブリス』はジャックとサブジェイの元に。『シルビ』は誰の元へも付かねぇ。『ペンギン』はトラファルガー・ローのモノだぁ。アンタへ渡せるものは生憎残ってねぇ」
「……シャイタン」
「そうであっても神以外を愛さぬ悪魔を飼うなんて、人間には過ぎた行いだろぉ?」
カードを一枚引いて裏返せば、『悪魔』のカードだった。
ホーキンスが手を伸ばしてカードを一枚引く。
「トラファルガーはいいのか」
「船長は俺を飼ってる訳じゃねぇ。従えようとしてる訳でもねぇ。でもあの人は俺に名前をくれた。あの人は俺を『悪魔』に見ねぇ。それがいい」
『死神』のカード。
「俺はもう『悪魔』と見られることにも呼ばれることにも慣れた。長いこと一人で居る事も好きにはなれねぇけど我慢は出来る。けど、受け入れられるのだけはどうにも慣れねぇ。受け入れてもらえるのかが怖い」
「『悪魔』なのにか」
「『悪魔』である前に『人』でありてぇんだよ。トラファルガーは俺がそんなんでも何も言わねぇ。他のクルー達も同じだぁ。だから傍にいても居心地がいい。一度居心地の良さを知ったら、そこから離れるのは難しいし遠ざけられるのも怖ぇ。この海にはジャックもサブジェイも居ねぇけど、あの人はどうしようもない程ダメダメな船長だけど、どうやら俺のありのままを受け入れてくれるから」
酒場の何処かからゴッと鈍い音がして少し騒がしくなったが、音がした方は見ずにホーキンスだけを見つめる。今視線を逸らせばホーキンスに反論を考えさせる隙を与えてしまうからだ。
シルビはホーキンスの事を良く知らない。だからもう少し交流すれば、もしかしたら船長より良い所があることにも気付いたりするだろう。最悪船長よりホーキンスの方が良いとすら思えるかも知れない。
けれどもそれなら、シルビは船長より前に会っていたとしてもホーキンスの船へ乗らなかった。
やがてホーキンスが人間らしく溜め息を吐く。
「今日の占いでは『“悪魔”を手に入れる』とは出なかったな」
「『“世界”と“悪魔”に出会う』だっけぇ? よくあれが『世界』だって分かったよなぁアンタも」
「“悪魔”が“世界”を守るというのもおかしな話だ」
「唯一敬愛する兄上だぁ。俺にとっての『神』の一つだよ」
本当に神のようにさえなってしまった『兄』は、今も世界の果てで封印の役割を続けている。いつかは助けたいという願いは変わらないが、その為には今の自分が未熟すぎる事も分かっていた。
ホーキンスがシルビの勧誘を諦めた事を悟って、やっと先ほど騒がしくなった方を見れば船長の手から血が出ているのが見える。一応タオルで傷を押さえているが、一体何をやっているのか。
「あーあー船長、何やってんですかぁ」
「……割れた」
「普通は勝手に割れたりしねぇでしょう。シャチ、やるから貸してくれぇ」
「ん、はい」
席を立って近付き、シャチが持っていた箒と塵取りを受け取ってガラス片を集める。床に広がる酒の量からしてあまり飲んでいないようだが、手が滑ったのだろうかと船長を見れば眼が合って気まずげに視線を逸らされた。
怒っているつもりは無いのだが。
「飲んでていいですよ。ここは片付けておきますから」
「……ああ」
占いに身を任せた結果とは言え逸れた事に変わりは無いと森を戻るのに連れて行けば、ホーキンスの船員達もハートと同じ酒場で飲むつもりだったらしく、向かった酒場にホーキンスの船員達が居た。何も言わずに行くのが吉とかで船員に何も言わずに一人で離れたものだから、ホーキンスが居なくなったことに気付いた船員達は混乱の極みだったらしい。
精神的に強いと思ったのだが、どうやら思い違いのようである。もしくは船長をそこまで敬愛しているという事なのか。
「そこまで慕われてるんだから、別に俺の一人くらいいらねぇと思うんだけどぉ」
「そんな事はない。あいつ等も大切だがお前も欲しい」
どちらも船長とクルーが戻ってきたしという事で同じ酒場で飲み始めたものの、ホーキンスはシルビが勧誘を断ったにも関わらず諦めていないようだった。シルビと同じテーブルに着いてタロットカードを広げだしたかと思うと、『何故断るんだ』と森での会話の続きをしようとしてくる。
森での出来事を知らないホーキンスの船員達や船長が、酒を飲みながらもコチラの話を気にしていることに気付きながら、シルビはテーブルへ頬杖を突いてホーキンスの相手をした。
こういう手合いはしっかり納得させて断ったほうが後腐れは無い。
「アンタが欲しいのは『何』なんだぁ? 手駒か部下か身代わりかぁ? それとも、生贄かぁ?」
「だと言ったら?」
「俺はアンタの手駒にはならねぇ。誰かの下に就いて跪くのも二度とゴメンだぁ。身代わりはホムンクルスかリバーズドールでも抱えてろぉ。生贄は……生贄はまぁ、なってもいいと思えるけど」
シャチが酒を噴き出しかけて噎せている。
テーブルへ広げられたタロットカードへ手を伸ばし、法則に則って並べられていたそれをぐしゃぐしゃにかき混ぜた。ホーキンスの視線がシルビへと向けられる。
「“逆さまの悪魔”」
「俺のことをそう呼ぶんじゃ尚更アンタの下にはいけねぇよ。『イブリス』はジャックとサブジェイの元に。『シルビ』は誰の元へも付かねぇ。『ペンギン』はトラファルガー・ローのモノだぁ。アンタへ渡せるものは生憎残ってねぇ」
「……シャイタン」
「そうであっても神以外を愛さぬ悪魔を飼うなんて、人間には過ぎた行いだろぉ?」
カードを一枚引いて裏返せば、『悪魔』のカードだった。
ホーキンスが手を伸ばしてカードを一枚引く。
「トラファルガーはいいのか」
「船長は俺を飼ってる訳じゃねぇ。従えようとしてる訳でもねぇ。でもあの人は俺に名前をくれた。あの人は俺を『悪魔』に見ねぇ。それがいい」
『死神』のカード。
「俺はもう『悪魔』と見られることにも呼ばれることにも慣れた。長いこと一人で居る事も好きにはなれねぇけど我慢は出来る。けど、受け入れられるのだけはどうにも慣れねぇ。受け入れてもらえるのかが怖い」
「『悪魔』なのにか」
「『悪魔』である前に『人』でありてぇんだよ。トラファルガーは俺がそんなんでも何も言わねぇ。他のクルー達も同じだぁ。だから傍にいても居心地がいい。一度居心地の良さを知ったら、そこから離れるのは難しいし遠ざけられるのも怖ぇ。この海にはジャックもサブジェイも居ねぇけど、あの人はどうしようもない程ダメダメな船長だけど、どうやら俺のありのままを受け入れてくれるから」
酒場の何処かからゴッと鈍い音がして少し騒がしくなったが、音がした方は見ずにホーキンスだけを見つめる。今視線を逸らせばホーキンスに反論を考えさせる隙を与えてしまうからだ。
シルビはホーキンスの事を良く知らない。だからもう少し交流すれば、もしかしたら船長より良い所があることにも気付いたりするだろう。最悪船長よりホーキンスの方が良いとすら思えるかも知れない。
けれどもそれなら、シルビは船長より前に会っていたとしてもホーキンスの船へ乗らなかった。
やがてホーキンスが人間らしく溜め息を吐く。
「今日の占いでは『“悪魔”を手に入れる』とは出なかったな」
「『“世界”と“悪魔”に出会う』だっけぇ? よくあれが『世界』だって分かったよなぁアンタも」
「“悪魔”が“世界”を守るというのもおかしな話だ」
「唯一敬愛する兄上だぁ。俺にとっての『神』の一つだよ」
本当に神のようにさえなってしまった『兄』は、今も世界の果てで封印の役割を続けている。いつかは助けたいという願いは変わらないが、その為には今の自分が未熟すぎる事も分かっていた。
ホーキンスがシルビの勧誘を諦めた事を悟って、やっと先ほど騒がしくなった方を見れば船長の手から血が出ているのが見える。一応タオルで傷を押さえているが、一体何をやっているのか。
「あーあー船長、何やってんですかぁ」
「……割れた」
「普通は勝手に割れたりしねぇでしょう。シャチ、やるから貸してくれぇ」
「ん、はい」
席を立って近付き、シャチが持っていた箒と塵取りを受け取ってガラス片を集める。床に広がる酒の量からしてあまり飲んでいないようだが、手が滑ったのだろうかと船長を見れば眼が合って気まずげに視線を逸らされた。
怒っているつもりは無いのだが。
「飲んでていいですよ。ここは片付けておきますから」
「……ああ」