頂上戦争編
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夢主視点
なんて自分勝手な奴なのだろうと自分を評価する。
ハートの海賊団の副船長という立場でありながら、敵海賊船の麦藁少年の面倒をみたいとも考えていた。出来ればもう一度海軍か世界政府の所へも行きたい。
「副船長を辞めてぇ訳じゃなくて、数週間か数ヶ月、麦藁少年の世話をしてぇっていうか、それも敵船の船長相手にどうかとは思いますけど、身勝手だとは分かってるんですけど」
「そうだな。身勝手だ」
ローの相槌はシルビの心に刺さる。正論なので言い返せない。
「ペンギン。お前は何がしたいんだ?」
「……自分のやりてぇ事を、やりてぇようにやりたいんです。その為に少しハートの副船長である事が、邪魔になってるっていうか」
自分の船に居る事が、自身の与えた役目が邪魔だと言われてローが怒るかと思ったが、ローは黙って聞いている。
好きな時に好きなように動けないから、昔から組織に組みするのは苦手だった。今までは組織の一員になっても出来るだけ自由に動けるようにはしていたが、流石にこのハートの副船長でいることは難しかったのかも知れない。
それでも、『ハートの一員』では居たいのだけれど。
「……わがまま、ですよね」
「そうだな」
ずっと持っていた麦藁少年の麦わら帽子を見下ろしてローが肯定する。その帽子のかつての持ち主をシルビは知っていたが、それが今は関係ない事も分かっていた。
もし今ここにロジャーの様な『シルビ』の事を知っている者がいたら、果たしてどちらの味方をするのだろうか。
そう考えたところで沖の方で水柱が上がった。すわ追ってきた海軍かとシルビもローもそちらを振り返れば、大型の海王類がその水柱の上がった辺りに力なく浮かび上がる。
更に暫くするとその海王類の浮いている辺りから向かってきた何かが、島へと泳いできて崖をよじ登ってきた。
「いやぁ参った」
全く参ってなさそうな口ぶり。白い髪とヒゲに人当たりの良さそうな朗らかとした顔。老いて少し昔の様な隆々しさは失われているが、元々彼は細身だったから余り変わりは無い。
思い出したのは十数年前、ロジャーの死後に故郷の島へ来た彼の姿だ。
「――ッレイリー!」
無意識に走り出して、立ち上がって濡れた服を絞っていたレイリーへそのまま飛びついた。
不意をつかれたのかレイリーはシルビを抱きとめはしたものの、そのままよろけて崖から足を踏み外す。
「あ」
小さい声は果たしてどっちが発したものか、二人揃って海へと落下した。
海に飛び込んだせいで防寒帽が取れてしまったのを、流れていってしまう前に手を伸ばして掴み、しかしシルビはレイリーから離れない。
どうせ昔は抱きつくどころかその肩に座って移動なんて真似もしていた相手なので、成人していようとあまり恥ずかしいとは思わなかった。
海面に出した顔を拭って息を吐くレイリーが、立ち泳ぎをしたまま抱きついているシルビの頭を軽く叩く。
「随分と熱烈な歓迎だな。シルビ」
「……、お気に召さなかったぁ?」
「冥利に尽きるというもんだ。……まだ成人していないのだったか?」
「成人したよバカぁ」
冗談にしては面白くない台詞に身体を離して濡れた前髪をかき上げた。
レイリーがシルビを抱いたまま泳いで崖へと戻る。そのまま崖を登ろうとするのに、流石に人を抱えたままでは登れないだろうと離れようとすると、逆に膝裏へ腕を回して肩へ抱き上げられた。
そのまま崖を登りきったレイリーに、成人男性としてこれは流石に不味いなと思う。一応ハートの海賊団の副船長という立場もある、と考えたところでその立場を“捨てかけた”のだと思い出してへこんだ。
「ルフィ君がこの島に居ると推測したのだが」
「その前にそいつを降ろせ。ウチのクルーだ」
レイリーの肩の上からそっと窺えば船長が不機嫌そうにレイリーを睨んでいる。しかしレイリーはそんなルーキーの睨みなど意に介した様子も無くシルビの身体を抱え直した。
船長の後ろでは騒ぎを聞きつけたクルー達が、思い思いの動揺を顔へ浮かべながらレイリーと抱えられているシルビを見ている。そういえば防寒帽も脱げてしまっていたなと、持っていたびしょ濡れの防寒帽を絞った。レイリーの首へ腕を回しレイリーの背後で絞っているのだがレイリーは全く気にしていない。
ふとその頭が撫でられる。
「レイリー……さん?」
「ふふ、いやいや何でも無いよ」
いや絶対何か企んでるだろうと昔の経験から推測するが、レイリーは予想に反して丁寧にシルビを降ろしただけだった。
「シャッキーに聞いたんだが、会いに来てくれたらしいな」
「あ、うん。もう何年も会ってなかったしどうせならと思ってぇ。いなかったけどぉ」
「先触れを出していてくれたなら待っていたさ。まさか君が何処かの船へ乗っているとは思ってもいなかったものでね」
「そう」
「ペンギン!」
呼ばれて防寒帽を被りながら振り返れば先ほどよりも不機嫌そうな船長の姿。
「そいつと知り合いなのか」
「レイリー……さんですか? はい」
「昔の様に呼んでいいぞ?」
「話してねぇの。だから君を呼び捨てにすると変だろぉ」
「そうなのか? 船に乗っているからてっきり話したのかと」
濡れているから纏め上げなかったせいで、防寒帽から出ている髪をレイリーの指が梳く。
途端、近付いてきた船長に肩を掴んでレイリーから引き離れさせられた。
「いい加減にしろ!」
「……何をぉ?」
なんて自分勝手な奴なのだろうと自分を評価する。
ハートの海賊団の副船長という立場でありながら、敵海賊船の麦藁少年の面倒をみたいとも考えていた。出来ればもう一度海軍か世界政府の所へも行きたい。
「副船長を辞めてぇ訳じゃなくて、数週間か数ヶ月、麦藁少年の世話をしてぇっていうか、それも敵船の船長相手にどうかとは思いますけど、身勝手だとは分かってるんですけど」
「そうだな。身勝手だ」
ローの相槌はシルビの心に刺さる。正論なので言い返せない。
「ペンギン。お前は何がしたいんだ?」
「……自分のやりてぇ事を、やりてぇようにやりたいんです。その為に少しハートの副船長である事が、邪魔になってるっていうか」
自分の船に居る事が、自身の与えた役目が邪魔だと言われてローが怒るかと思ったが、ローは黙って聞いている。
好きな時に好きなように動けないから、昔から組織に組みするのは苦手だった。今までは組織の一員になっても出来るだけ自由に動けるようにはしていたが、流石にこのハートの副船長でいることは難しかったのかも知れない。
それでも、『ハートの一員』では居たいのだけれど。
「……わがまま、ですよね」
「そうだな」
ずっと持っていた麦藁少年の麦わら帽子を見下ろしてローが肯定する。その帽子のかつての持ち主をシルビは知っていたが、それが今は関係ない事も分かっていた。
もし今ここにロジャーの様な『シルビ』の事を知っている者がいたら、果たしてどちらの味方をするのだろうか。
そう考えたところで沖の方で水柱が上がった。すわ追ってきた海軍かとシルビもローもそちらを振り返れば、大型の海王類がその水柱の上がった辺りに力なく浮かび上がる。
更に暫くするとその海王類の浮いている辺りから向かってきた何かが、島へと泳いできて崖をよじ登ってきた。
「いやぁ参った」
全く参ってなさそうな口ぶり。白い髪とヒゲに人当たりの良さそうな朗らかとした顔。老いて少し昔の様な隆々しさは失われているが、元々彼は細身だったから余り変わりは無い。
思い出したのは十数年前、ロジャーの死後に故郷の島へ来た彼の姿だ。
「――ッレイリー!」
無意識に走り出して、立ち上がって濡れた服を絞っていたレイリーへそのまま飛びついた。
不意をつかれたのかレイリーはシルビを抱きとめはしたものの、そのままよろけて崖から足を踏み外す。
「あ」
小さい声は果たしてどっちが発したものか、二人揃って海へと落下した。
海に飛び込んだせいで防寒帽が取れてしまったのを、流れていってしまう前に手を伸ばして掴み、しかしシルビはレイリーから離れない。
どうせ昔は抱きつくどころかその肩に座って移動なんて真似もしていた相手なので、成人していようとあまり恥ずかしいとは思わなかった。
海面に出した顔を拭って息を吐くレイリーが、立ち泳ぎをしたまま抱きついているシルビの頭を軽く叩く。
「随分と熱烈な歓迎だな。シルビ」
「……、お気に召さなかったぁ?」
「冥利に尽きるというもんだ。……まだ成人していないのだったか?」
「成人したよバカぁ」
冗談にしては面白くない台詞に身体を離して濡れた前髪をかき上げた。
レイリーがシルビを抱いたまま泳いで崖へと戻る。そのまま崖を登ろうとするのに、流石に人を抱えたままでは登れないだろうと離れようとすると、逆に膝裏へ腕を回して肩へ抱き上げられた。
そのまま崖を登りきったレイリーに、成人男性としてこれは流石に不味いなと思う。一応ハートの海賊団の副船長という立場もある、と考えたところでその立場を“捨てかけた”のだと思い出してへこんだ。
「ルフィ君がこの島に居ると推測したのだが」
「その前にそいつを降ろせ。ウチのクルーだ」
レイリーの肩の上からそっと窺えば船長が不機嫌そうにレイリーを睨んでいる。しかしレイリーはそんなルーキーの睨みなど意に介した様子も無くシルビの身体を抱え直した。
船長の後ろでは騒ぎを聞きつけたクルー達が、思い思いの動揺を顔へ浮かべながらレイリーと抱えられているシルビを見ている。そういえば防寒帽も脱げてしまっていたなと、持っていたびしょ濡れの防寒帽を絞った。レイリーの首へ腕を回しレイリーの背後で絞っているのだがレイリーは全く気にしていない。
ふとその頭が撫でられる。
「レイリー……さん?」
「ふふ、いやいや何でも無いよ」
いや絶対何か企んでるだろうと昔の経験から推測するが、レイリーは予想に反して丁寧にシルビを降ろしただけだった。
「シャッキーに聞いたんだが、会いに来てくれたらしいな」
「あ、うん。もう何年も会ってなかったしどうせならと思ってぇ。いなかったけどぉ」
「先触れを出していてくれたなら待っていたさ。まさか君が何処かの船へ乗っているとは思ってもいなかったものでね」
「そう」
「ペンギン!」
呼ばれて防寒帽を被りながら振り返れば先ほどよりも不機嫌そうな船長の姿。
「そいつと知り合いなのか」
「レイリー……さんですか? はい」
「昔の様に呼んでいいぞ?」
「話してねぇの。だから君を呼び捨てにすると変だろぉ」
「そうなのか? 船に乗っているからてっきり話したのかと」
濡れているから纏め上げなかったせいで、防寒帽から出ている髪をレイリーの指が梳く。
途端、近付いてきた船長に肩を掴んでレイリーから引き離れさせられた。
「いい加減にしろ!」
「……何をぉ?」