頂上戦争編
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢主視点
ハンコックの提案により、ハートの潜水艦は彼女が統治するアマゾン・リリーへと潜伏することになった。女性しか居ない男子禁制の島で、普段であれば入れる男性はごく限られているのだが、今回は麦藁少年の治療の事もあって特例として湾岸への停泊を許可がもらえたのである。
しかしながら、実を言うとシルビは『死告シャイタン』としてなら島へ入れる男性の一人だった。現皇帝であるハンコックにそれを話したとしても、それは歴代の特例なので通じはするだろう。だがそうせずとも入れたので名乗るつもりは無い。
それよりも気になる事があってシルビは船を降りて、島の女達と共にコチラの様子を窺っている老婆へと近付いた。
島の女は異性であるハートのクルーを物珍しそうに眺めたり警戒心バリバリに睨んだりしているが、『ニョン婆』と呼ばれていたその老婆だけは、どちらかというと観察するようにクルー達を見ている。おそらく他の女達とは違い、麦藁少年以外の男も見たことがあるから警戒する必要はないと分かっているのだろう。
それはさておき、シルビは島に来てから気になっている事に岩へ腰を降ろしている老婆へ近付き、控えめに呼んでみた。
「……グロリオーサ?」
シルビの声に気付いて振り返った老婆は、訝しげに目を細めシルビを見る。
「なぜお主がその名前を知っておる?」
細められた目に映る警戒と疑い。だが彼女はシルビが呼んだ名前を否定はしなかった。
であれば彼女は見た目こそ随分変わってしまったがグロリオーサでいい筈だ。
「グロリオーサ?」
「じゃから、何故お主が……」
「覚えてねぇ?」
「何をじゃ? 一体お主はさっきから何を言うておるニョじゃ?」
強まっていく警戒に防寒帽を軽く上げてみたが、彼女は『シルビに気付かなかった』。
それもそうかと自分が甘い考えだった事に思い至る。彼女が知っているのは『年上の男』で、こんな若いシルビではない。
イワンコフは最後に会ったのが故郷に出る前で前世ではなかったから分かったのだろうが、グロリオーサの場合数十年もの隔たりがあるのだ。流石に、それで見知らぬ若い男がいきなり現われたところで気付く訳がない。
黙り込んだシルビを変な奴だと思ったのか、グロリオーサは敵意までシルビへ向けてきた。それが悲しくないと言えば嘘になるが、それはきっと仕方が無いことでもある。
「……知り合いに、貴方の名前を聞いていたんです。ですがどうも機嫌を損ねてしまったようですね。申し訳ありません」
他人行儀に謝って、少し辛かったのでグロリオーサとの邂逅はそれまでに留めた。途中で死んでいるとはいえ長く生きているとこんな事が多い。
ハンコックの提案により、ハートの潜水艦は彼女が統治するアマゾン・リリーへと潜伏することになった。女性しか居ない男子禁制の島で、普段であれば入れる男性はごく限られているのだが、今回は麦藁少年の治療の事もあって特例として湾岸への停泊を許可がもらえたのである。
しかしながら、実を言うとシルビは『死告シャイタン』としてなら島へ入れる男性の一人だった。現皇帝であるハンコックにそれを話したとしても、それは歴代の特例なので通じはするだろう。だがそうせずとも入れたので名乗るつもりは無い。
それよりも気になる事があってシルビは船を降りて、島の女達と共にコチラの様子を窺っている老婆へと近付いた。
島の女は異性であるハートのクルーを物珍しそうに眺めたり警戒心バリバリに睨んだりしているが、『ニョン婆』と呼ばれていたその老婆だけは、どちらかというと観察するようにクルー達を見ている。おそらく他の女達とは違い、麦藁少年以外の男も見たことがあるから警戒する必要はないと分かっているのだろう。
それはさておき、シルビは島に来てから気になっている事に岩へ腰を降ろしている老婆へ近付き、控えめに呼んでみた。
「……グロリオーサ?」
シルビの声に気付いて振り返った老婆は、訝しげに目を細めシルビを見る。
「なぜお主がその名前を知っておる?」
細められた目に映る警戒と疑い。だが彼女はシルビが呼んだ名前を否定はしなかった。
であれば彼女は見た目こそ随分変わってしまったがグロリオーサでいい筈だ。
「グロリオーサ?」
「じゃから、何故お主が……」
「覚えてねぇ?」
「何をじゃ? 一体お主はさっきから何を言うておるニョじゃ?」
強まっていく警戒に防寒帽を軽く上げてみたが、彼女は『シルビに気付かなかった』。
それもそうかと自分が甘い考えだった事に思い至る。彼女が知っているのは『年上の男』で、こんな若いシルビではない。
イワンコフは最後に会ったのが故郷に出る前で前世ではなかったから分かったのだろうが、グロリオーサの場合数十年もの隔たりがあるのだ。流石に、それで見知らぬ若い男がいきなり現われたところで気付く訳がない。
黙り込んだシルビを変な奴だと思ったのか、グロリオーサは敵意までシルビへ向けてきた。それが悲しくないと言えば嘘になるが、それはきっと仕方が無いことでもある。
「……知り合いに、貴方の名前を聞いていたんです。ですがどうも機嫌を損ねてしまったようですね。申し訳ありません」
他人行儀に謝って、少し辛かったのでグロリオーサとの邂逅はそれまでに留めた。途中で死んでいるとはいえ長く生きているとこんな事が多い。