頂上戦争編
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夢主視点
シルビは『万能』ではない。知らない事だって当然あるし人の内心だって知ろうとしなければ分からない。
それが当たり前だとも分かっているが、故に『選択』の難しさを知っている。
白ひげとその傘下。それから元七武海のクロコダイルとジンベエ。革命軍のイワンコフと、赤い鼻の良く分からない男。
それらを引き連れて空から海軍本部へと殴り込みをした麦わらのルフィは、エースの義兄弟だとセンゴクが告げた。麦わらに義兄弟がいることは義兄本人であるエースから聞いていたから驚かない。
革命家ドラゴンの息子だとも知っていた。ガープの孫である事も。きっとシルビは彼と直接会った事は無くても、彼に関する事を大分知っている立場にあったのだろう。
戦場へ向かう潜水艦の中で、『×××』を利用する為に伏せた目に映る視界は、闘争真っ只中の戦況。
海兵も海賊も関係なく倒れ伏す惨状で、その場にいる者全員が体感している臨場感をも一気に味わいながら本来の目的を探していく。全員の思考や感情も幾重に重なるように脳裏へ飛び込んでくるが、その情報の奔流には流石にもう慣れた。
シルビは決して『万能』ではない。だから遠く離れた地から瞬間的に移動する事が出来たとしても、数多の未来過去現在の情報を得られるとしても、出来ない事とやってはいけない事がある。
「――エース?」
目を見開いているルフィ少年の顔。焼ける胸の痛み。誰かの悲鳴。折れる剣。飛び交う銃弾。手を汚す赤。
「……嘘だろ」
だから、助けたい人を助ける事も出来やしない。
少し『×××』を使い過ぎたらしく頭痛の激しさに足がふらついた。手を突いて身体を支えると、船がもう直ぐ海上に出るという報告が伝声管を伝わって聞こえてくる。
ポケットに入れていた瓶から鎮痛剤を取り出して飲み込む。それから深く息を吸って、シルビは外へ出る為の扉へと走った。
やがて海上に上がった船で船長が開けた扉の向こうには、顔を背けたくなるほどの戦場が広がっていた。その戦場で赤い鼻をした男が気を失っている麦藁少年と魚人を抱えて飛んでいて、それに向かって船長が二人を寄越せと叫ぶ。
厄介な代物だったとばかりにその二人を放り投げてきた男に見覚えは無い。だがここへいるのだからそれなりに実力のある者なのだろう。鼻が赤いのが気になるが。
その向こうでは手配書と新聞で見た『黒ひげ』がセンゴクと戦っていた。海軍大将のうち一人は何故か味方であろう若い海兵と対峙している。
ジャンバールが二人を抱えて船の中へと避難していく。船長と並んで警戒しつつ眺める視線の先には、この戦争を止めるべきに来たと吠えた四皇の一人。赤い髪をしたその彼から、先ほどの赤鼻の彼を経由して船長の元へ麦藁帽子が飛んでくる。
それを掴んだ船長が船内へ戻っていく。
目的は何一つとして達成していない。そもそも目的は『何』だったのかも良く分からなくなった。
ここへ残って全てを止める事もきっと、シルビなら出来る。
出来るのに。
「ペンギン! 潜るぞ!」
「――アイアイ、船長」
それでも、シルビは戦場へ背を向けた。
シルビは『万能』ではない。知らない事だって当然あるし人の内心だって知ろうとしなければ分からない。
それが当たり前だとも分かっているが、故に『選択』の難しさを知っている。
白ひげとその傘下。それから元七武海のクロコダイルとジンベエ。革命軍のイワンコフと、赤い鼻の良く分からない男。
それらを引き連れて空から海軍本部へと殴り込みをした麦わらのルフィは、エースの義兄弟だとセンゴクが告げた。麦わらに義兄弟がいることは義兄本人であるエースから聞いていたから驚かない。
革命家ドラゴンの息子だとも知っていた。ガープの孫である事も。きっとシルビは彼と直接会った事は無くても、彼に関する事を大分知っている立場にあったのだろう。
戦場へ向かう潜水艦の中で、『×××』を利用する為に伏せた目に映る視界は、闘争真っ只中の戦況。
海兵も海賊も関係なく倒れ伏す惨状で、その場にいる者全員が体感している臨場感をも一気に味わいながら本来の目的を探していく。全員の思考や感情も幾重に重なるように脳裏へ飛び込んでくるが、その情報の奔流には流石にもう慣れた。
シルビは決して『万能』ではない。だから遠く離れた地から瞬間的に移動する事が出来たとしても、数多の未来過去現在の情報を得られるとしても、出来ない事とやってはいけない事がある。
「――エース?」
目を見開いているルフィ少年の顔。焼ける胸の痛み。誰かの悲鳴。折れる剣。飛び交う銃弾。手を汚す赤。
「……嘘だろ」
だから、助けたい人を助ける事も出来やしない。
少し『×××』を使い過ぎたらしく頭痛の激しさに足がふらついた。手を突いて身体を支えると、船がもう直ぐ海上に出るという報告が伝声管を伝わって聞こえてくる。
ポケットに入れていた瓶から鎮痛剤を取り出して飲み込む。それから深く息を吸って、シルビは外へ出る為の扉へと走った。
やがて海上に上がった船で船長が開けた扉の向こうには、顔を背けたくなるほどの戦場が広がっていた。その戦場で赤い鼻をした男が気を失っている麦藁少年と魚人を抱えて飛んでいて、それに向かって船長が二人を寄越せと叫ぶ。
厄介な代物だったとばかりにその二人を放り投げてきた男に見覚えは無い。だがここへいるのだからそれなりに実力のある者なのだろう。鼻が赤いのが気になるが。
その向こうでは手配書と新聞で見た『黒ひげ』がセンゴクと戦っていた。海軍大将のうち一人は何故か味方であろう若い海兵と対峙している。
ジャンバールが二人を抱えて船の中へと避難していく。船長と並んで警戒しつつ眺める視線の先には、この戦争を止めるべきに来たと吠えた四皇の一人。赤い髪をしたその彼から、先ほどの赤鼻の彼を経由して船長の元へ麦藁帽子が飛んでくる。
それを掴んだ船長が船内へ戻っていく。
目的は何一つとして達成していない。そもそも目的は『何』だったのかも良く分からなくなった。
ここへ残って全てを止める事もきっと、シルビなら出来る。
出来るのに。
「ペンギン! 潜るぞ!」
「――アイアイ、船長」
それでも、シルビは戦場へ背を向けた。