シャボンディ諸島編
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夢主視点
天竜人を殴ったモンキー・D・ルフィへ拍手を送りたかった。どうしてこんな『楽しい』時に自分は好き勝手出来ないのだろうと思いかけて、自分の考えが好戦的になっていることに気付く。
もし今『ペンギン』の名前を持っていなかったら、シルビは盛大に拍手をしながら喜んでルフィ少年の援護をしていただろう。それだけ天竜人が嫌いだという事だ。
殴られた天竜人の家族と思われる奴の発言に、落ち着きを取り戻そうとしていた頭にまた血が昇っていく。
「この世界の創造主の末裔である我々に手を出せばどうなるか――」
“それ”は、お前の成したものではないだろうと怒鳴りつけたくなった。お前達はただの子孫であって当事者ですらなく、八百年前のあの当時を都合のいい歴史で受け継いでいるだけの者達のくせにと思う。
シルビは当事者ではない。けれども傍観者としてあの場に居た。たったそれだけの違いでも、八百年という年月は全てを変えてしまったらしい。
天竜人のせいで海軍大将が来るらしく、観客達が巻き込まれたくないと慌てて逃げ出していく。その騒ぎにそわそわとしながら自分達は逃げないのかと目で訴えてくるシャチとベポを一瞥し、船長がシルビを見た。
「外はどうなってる?」
「……海軍が集まってますね。三桁はいるでしょう。まぁ逃げられねぇことはありませんが、うだうだしてると大将が来るのは確実でしょうねぇ」
こめかみへ手を当てて『×××』を利用して答える。外に居ないシルビがどうして外の様子が分かるのかとかを突っ込んで聞いてこない船長は、それを聞いて楽しそうに笑う。
それから、これかどうするかとか海軍の様子について話し合っているルフィ少年達へ、船長が助言の様に声をかけた。
「海軍ならもう来てるぞ。麦わら屋」
声を掛けられたルフィ少年はその言葉よりベポを気にしていたが、仲間内にトナカイを連れている彼らに文句を言われる筋合いは無い。文句を言われた訳ではないが。
「奴らならオークションが始まる前からずっとこの会場を取り囲んでる。この側に本部の駐屯所があるからな。誰を捕まえたかったのかは知らねェが、天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな?」
それに巻き込まれかけているというのに船長は楽しげだ。店の外に海兵が居た事は覚えていたが、言われて天竜人の護衛だけとは限らないのかと思い至る。
天竜人の女が商品だった人魚へ銃口を向けて引き金を引こうとするのが見えた。シルビが指を鳴らそうとするより早く、舞台裏から放たれた気迫によって天竜人やその護衛が白目を向いて倒れる。
同じく奴隷らしい巨人と話しながら呑気に笑いつつ出てきた老人に、シルビは状況も忘れて目を見開いた。
「レイリー?」
シルビの呟きは運良く誰にも聞かれることは無かったらしい。舞台裏から出てきたレイリーは最後に見た時よりも老けていて、しかしその目に宿る精悍さは失われていなかった。
自身を担保にして金を稼ごうとしていたらしいレイリーは、笑いを収めると観客席を見回して軽く息を吸う。途端この場の空気を一掃するかの様な気がレイリーを中心に広がっていった。
顔に少し風を感じたような気がした程度のそれを不思議に思い、シャチが後ろで少しふらついていたのでコレは『覇気』かと気付いた。
覇気は実力差が有れば有るほど効果を発する。相手のほうが格上だと効かないし、実力の差も無ければ効きは悪い。
観客席を見回したレイリーと目が合った気もしたが、防寒帽のせいかレイリーはシルビに気付いていないようだった。
「この島じゃコーティング屋の“レイさん”で通っている。下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ」
「俺より若けぇくせにぃ」
思わず呟いたが、今のシルビと彼ではレイリーのほうが年上である。
店の外から拡声された声が聞こえた。いつの間にか船長やシルビ達も天竜人を殴ったルフィ少年の共謀者にされてしまっているらしい事が分かるそれに、ベポが不安そうに船長を見ている。
シルビがまぁ大丈夫だろうと思えるのは、最悪第八の炎で移動出来るからだ。それよりもレイリーへ話しかけるかをシルビが考えていると、ユースタスの人を弱者だと決めつけるような発言にプライドを刺激されたらしい船長が立ち上がった。
そのままルフィ少年と一緒に、船長が競うように店を出て行く。取り残される形となったシルビはとりあえずシャチとベポの安全確保を優先する事にした。
「ペンギン!」
「キャプテン行っちゃったよ!?」
「そうだなぁ行っちゃったなぁ。……もっと余裕を持てってんだぁあの馬鹿船長」
「ペンギン怖い! 怖いから!」
「とりあえず逃げ道の確保をしなけりゃなぁ」
溜息を一つ吐いて振り返り、撃たれて倒れていたタコの魚人の傍に居るレイリーを見た。それから魚人を見てこっそりと指を鳴らす。
一瞬だけ燃え上がって消えた青い炎。魚人が急に痛みの失せたのだろう傷口を不思議そうに見ている。弾を取り出すことは直接触らなければ出来ないが、気休め程度にはなる筈だ。
シャチとベポを促して船長達が出て行った店の入り口へと向かう。
「……レミ少女は何をさせたかったんだぁ?」
走りながらここへ来る事をお願いしてきたレミ少女の事を思い出した。彼女はこうなる事を知っていただろうが、しかしただ船長を暴れさせる為に『原作』を告げた訳でもあるまい。
天竜人を殴る、はルフィ少年だった。船長やシルビが来なくてもそれは行われた筈だ。
ではレイリーとシルビの再会かと思ったが、彼女がシルビとレイリーが知り合いであった事を知っていたとは思えなかった。
だとすると先ほどの三船長による実力争いのような共闘の為なのだろうかと、海兵を蹴り飛ばしながら考える。彼女の思惑がまだ分からない。船長の姿を捜して見回せば、船長は入り口直ぐのところで先ほどレイリーと話していた巨人の傍にいた。
何かを諦めたように座っていた巨人。その首にある奴隷用の首輪に、シルビは海兵を無視して二人へと近付いた。
「船長」
「ペンギン。新しいクルーだ。首輪を外してやれ」
嬉しげに背を向ける船長に、シルビは目の前の巨人を見上げる。巨人ではあるがそう大きいタイプでも無いので、潜水艦へ乗せることは出来るだろう。
訝しげにシルビを見る彼へ、シルビは微笑んで手を伸ばした。伸ばしたところで首輪には手が届かなかったが、彼が身を屈めてくれたので首輪に触れられる。
「よっ、とぉ」
嵐の炎で分解されて、首輪としての用途すら果たせなくなった残骸が地面へ落ちた。
「船長が取れば良かったんじゃねぇんですか」
「誰でもいいだろ。行くぞ」
そう言って走り出す船長に気付いて、海兵の相手をしていたベポとシャチがその後を追いかけていく。隣の巨人を見上げれば戸惑いの篭る視線と目が合った。
何も話していないのに置いていくなよと思う。
「名前は?」
「ジャンバールだ」
「俺はペンギンって呼ばれてる。詳しい説明はこの状況から逃げられたらするから、とりあえず今は逃げようぜぇ」
「ああ」
頷いたジャンバールと一緒に走り出し、向かい来る海兵を蹴散らして船長達を追いかける。無口な性質なのか奴隷生活で感情が薄れかけていたのか口数の少ない彼に、シルビはさっき考えていた事を思い出してその横顔を見上げた。
レミはシルビ達がここへ来る事を知っていて、しかし船長へ『行ってくれ』と念押ししたのだ。そしてここへ来て、トラファルガー・ローがやった事の一つとして『ジャンバールの勧誘』
「……なるほどぉ。レミ少女もそりゃ言う訳だなぁ」
「? 何の話だ?」
「君が仲間になって嬉しいって話だぁ」
あの子は人身売買といわずとも『使い捨て』同然に扱われた人達を知っているから、ジャンバールの事が気になったに違いない。奴隷からの解放。
それがきっとあの子のあの発言の目的だ。
天竜人を殴ったモンキー・D・ルフィへ拍手を送りたかった。どうしてこんな『楽しい』時に自分は好き勝手出来ないのだろうと思いかけて、自分の考えが好戦的になっていることに気付く。
もし今『ペンギン』の名前を持っていなかったら、シルビは盛大に拍手をしながら喜んでルフィ少年の援護をしていただろう。それだけ天竜人が嫌いだという事だ。
殴られた天竜人の家族と思われる奴の発言に、落ち着きを取り戻そうとしていた頭にまた血が昇っていく。
「この世界の創造主の末裔である我々に手を出せばどうなるか――」
“それ”は、お前の成したものではないだろうと怒鳴りつけたくなった。お前達はただの子孫であって当事者ですらなく、八百年前のあの当時を都合のいい歴史で受け継いでいるだけの者達のくせにと思う。
シルビは当事者ではない。けれども傍観者としてあの場に居た。たったそれだけの違いでも、八百年という年月は全てを変えてしまったらしい。
天竜人のせいで海軍大将が来るらしく、観客達が巻き込まれたくないと慌てて逃げ出していく。その騒ぎにそわそわとしながら自分達は逃げないのかと目で訴えてくるシャチとベポを一瞥し、船長がシルビを見た。
「外はどうなってる?」
「……海軍が集まってますね。三桁はいるでしょう。まぁ逃げられねぇことはありませんが、うだうだしてると大将が来るのは確実でしょうねぇ」
こめかみへ手を当てて『×××』を利用して答える。外に居ないシルビがどうして外の様子が分かるのかとかを突っ込んで聞いてこない船長は、それを聞いて楽しそうに笑う。
それから、これかどうするかとか海軍の様子について話し合っているルフィ少年達へ、船長が助言の様に声をかけた。
「海軍ならもう来てるぞ。麦わら屋」
声を掛けられたルフィ少年はその言葉よりベポを気にしていたが、仲間内にトナカイを連れている彼らに文句を言われる筋合いは無い。文句を言われた訳ではないが。
「奴らならオークションが始まる前からずっとこの会場を取り囲んでる。この側に本部の駐屯所があるからな。誰を捕まえたかったのかは知らねェが、天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな?」
それに巻き込まれかけているというのに船長は楽しげだ。店の外に海兵が居た事は覚えていたが、言われて天竜人の護衛だけとは限らないのかと思い至る。
天竜人の女が商品だった人魚へ銃口を向けて引き金を引こうとするのが見えた。シルビが指を鳴らそうとするより早く、舞台裏から放たれた気迫によって天竜人やその護衛が白目を向いて倒れる。
同じく奴隷らしい巨人と話しながら呑気に笑いつつ出てきた老人に、シルビは状況も忘れて目を見開いた。
「レイリー?」
シルビの呟きは運良く誰にも聞かれることは無かったらしい。舞台裏から出てきたレイリーは最後に見た時よりも老けていて、しかしその目に宿る精悍さは失われていなかった。
自身を担保にして金を稼ごうとしていたらしいレイリーは、笑いを収めると観客席を見回して軽く息を吸う。途端この場の空気を一掃するかの様な気がレイリーを中心に広がっていった。
顔に少し風を感じたような気がした程度のそれを不思議に思い、シャチが後ろで少しふらついていたのでコレは『覇気』かと気付いた。
覇気は実力差が有れば有るほど効果を発する。相手のほうが格上だと効かないし、実力の差も無ければ効きは悪い。
観客席を見回したレイリーと目が合った気もしたが、防寒帽のせいかレイリーはシルビに気付いていないようだった。
「この島じゃコーティング屋の“レイさん”で通っている。下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵……平穏に暮らしたいのだよ」
「俺より若けぇくせにぃ」
思わず呟いたが、今のシルビと彼ではレイリーのほうが年上である。
店の外から拡声された声が聞こえた。いつの間にか船長やシルビ達も天竜人を殴ったルフィ少年の共謀者にされてしまっているらしい事が分かるそれに、ベポが不安そうに船長を見ている。
シルビがまぁ大丈夫だろうと思えるのは、最悪第八の炎で移動出来るからだ。それよりもレイリーへ話しかけるかをシルビが考えていると、ユースタスの人を弱者だと決めつけるような発言にプライドを刺激されたらしい船長が立ち上がった。
そのままルフィ少年と一緒に、船長が競うように店を出て行く。取り残される形となったシルビはとりあえずシャチとベポの安全確保を優先する事にした。
「ペンギン!」
「キャプテン行っちゃったよ!?」
「そうだなぁ行っちゃったなぁ。……もっと余裕を持てってんだぁあの馬鹿船長」
「ペンギン怖い! 怖いから!」
「とりあえず逃げ道の確保をしなけりゃなぁ」
溜息を一つ吐いて振り返り、撃たれて倒れていたタコの魚人の傍に居るレイリーを見た。それから魚人を見てこっそりと指を鳴らす。
一瞬だけ燃え上がって消えた青い炎。魚人が急に痛みの失せたのだろう傷口を不思議そうに見ている。弾を取り出すことは直接触らなければ出来ないが、気休め程度にはなる筈だ。
シャチとベポを促して船長達が出て行った店の入り口へと向かう。
「……レミ少女は何をさせたかったんだぁ?」
走りながらここへ来る事をお願いしてきたレミ少女の事を思い出した。彼女はこうなる事を知っていただろうが、しかしただ船長を暴れさせる為に『原作』を告げた訳でもあるまい。
天竜人を殴る、はルフィ少年だった。船長やシルビが来なくてもそれは行われた筈だ。
ではレイリーとシルビの再会かと思ったが、彼女がシルビとレイリーが知り合いであった事を知っていたとは思えなかった。
だとすると先ほどの三船長による実力争いのような共闘の為なのだろうかと、海兵を蹴り飛ばしながら考える。彼女の思惑がまだ分からない。船長の姿を捜して見回せば、船長は入り口直ぐのところで先ほどレイリーと話していた巨人の傍にいた。
何かを諦めたように座っていた巨人。その首にある奴隷用の首輪に、シルビは海兵を無視して二人へと近付いた。
「船長」
「ペンギン。新しいクルーだ。首輪を外してやれ」
嬉しげに背を向ける船長に、シルビは目の前の巨人を見上げる。巨人ではあるがそう大きいタイプでも無いので、潜水艦へ乗せることは出来るだろう。
訝しげにシルビを見る彼へ、シルビは微笑んで手を伸ばした。伸ばしたところで首輪には手が届かなかったが、彼が身を屈めてくれたので首輪に触れられる。
「よっ、とぉ」
嵐の炎で分解されて、首輪としての用途すら果たせなくなった残骸が地面へ落ちた。
「船長が取れば良かったんじゃねぇんですか」
「誰でもいいだろ。行くぞ」
そう言って走り出す船長に気付いて、海兵の相手をしていたベポとシャチがその後を追いかけていく。隣の巨人を見上げれば戸惑いの篭る視線と目が合った。
何も話していないのに置いていくなよと思う。
「名前は?」
「ジャンバールだ」
「俺はペンギンって呼ばれてる。詳しい説明はこの状況から逃げられたらするから、とりあえず今は逃げようぜぇ」
「ああ」
頷いたジャンバールと一緒に走り出し、向かい来る海兵を蹴散らして船長達を追いかける。無口な性質なのか奴隷生活で感情が薄れかけていたのか口数の少ない彼に、シルビはさっき考えていた事を思い出してその横顔を見上げた。
レミはシルビ達がここへ来る事を知っていて、しかし船長へ『行ってくれ』と念押ししたのだ。そしてここへ来て、トラファルガー・ローがやった事の一つとして『ジャンバールの勧誘』
「……なるほどぉ。レミ少女もそりゃ言う訳だなぁ」
「? 何の話だ?」
「君が仲間になって嬉しいって話だぁ」
あの子は人身売買といわずとも『使い捨て』同然に扱われた人達を知っているから、ジャンバールの事が気になったに違いない。奴隷からの解放。
それがきっとあの子のあの発言の目的だ。