シャボンディ諸島編
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夢主視点
上陸前に集めた情報を頼りにシルビが向かったのは、シャボンディ諸島でも無法地帯と称されている一角だ。脛に瑕持つ者が自然と集まって出来たのだろうその界隈で、シルビはハートの船へ乗る前の旅装にしていた黒い外套を羽織ってレイリーを探す。
外套の下はツナギだが、いつも被っている防寒帽は脱いでいた。何かあった時ハートのクルーだとバレるのはよろしくないが、かといって『ペンギン』として駆けつけられないのも困るからだ。とりあえず防寒帽があれば『ペンギン』だという証明は出来る。
逆に、黒い外套は『死告シャイタン』の証明になっていた。
今までの旅の最中ずっとそれを着ていたから、『死告シャイタン』として目撃される時もそれを着ていた為だと思うのだが、詳しいことは『死告シャイタン』だなんて付けたネーミングセンス皆無野郎に聞かねば分からない。ただ『死告』と掛けられている『紫黒』の黒色は、その外套か髪の色なのだろう。
途中で何度もシルビを世間知らずな余所者だと判断して襲ってくる無法者を返り討ちにし、いい加減何の新しい情報も得られないことにうんざりしてきた頃、ふと視界に入った店に足を止めた。
「やっと見つけたぁ」
既に店を開けているらしいその店は一応酒場である。酒場であるのなら昼間のうちから開いていることは場合によっては有りだろうからそれはいいのだが、名前が。
溜息一つ吐いてシルビはその店へと向かった。鍵の掛かっていない扉を潜れば、カウンターの奥で顔を上げた女性がシルビを見た。
「いらっしゃいま……」
「こんにちはぁ。ここはシャクヤクの店で会ってるかぁ?」
扉を後ろ手に閉めてフード越しに見やれば、手をタオルで拭いていたシャクヤクが、年齢不詳の顔で驚きシルビを見つめる。最後に会ったのは彼女が海賊から足を洗った直後だったので四十年以上経っている筈なのだが、彼女の見た目は思っていた以上に若々しい。
とはいえ、肉体的には生まれ変わっているシルビ程ではないだろうが。
「その喋り方……もしかしてシルビ? シルビなの!?」
カウンターから飛び出してきたシャクヤクが駆け寄ってくるのにそのまま両手を広げて抱き留める。シルビよりも背の高い彼女を抱き締めるには少し苦労するが、出会い頭のハグは逐一驚くことではなかった。
「何年振りかしら! 最後に会った時より若返ってない!? やっぱり不老不死って噂は本当なの?」
「お前だってすげぇ若く見えるぜぇ。老化細胞を何処に捨ててきたんだぁ?」
「あらやだ。これでもおばあちゃんよ」
だからおばあちゃんに見えないと言っている。
嬉々としてシルビをカウンターへ座らせ、酒では無く珈琲を出してくれたシャクヤクは昔、シルビがまだロジャーと別れを告げる前に交流のあった女性だ。この店を構える前は海賊であり、当時はガープに散々追い掛け回されていた一人である。
会っていなかった年月など無かったかのように気安く談笑しながらも、その内容は互いの近状報告。あるいはここ数十年の世間の移り変わりに関わるものばかりになってしまう。
「それでさぁ、この島にレイリーが居るって聞いたんだけどどこにいるか知ってるかぁ?」
「レイリーに会いに来たの?」
「うん。たまたま近くまで来たからついでにぃ」
「でも残念ね。あの人ったら半年前から帰ってきてないわ。シルビが会いに来たなんて知ったらきっと悔しがるわね」
「一緒に暮らしてんの?」
「色々あったのよ」
昔よりも随分と女の裏を感じさせる笑い方をする。年齢のせいかと思いもしたが、それよりはレイリーとの関係が理由なのだろう。
そのレイリーはこの酒場を家としているが、半年も帰らないという不義理を行なっているらしい。しかし一つ所へ留まる方が、正直な話シルビやレイリーのような有名になりすぎた者にとっては危険だ。
「ここ数十年は何をしてたの?」
「相変わらず放浪してるよ」
シルビが今現在、『ペンギン』と呼ばれてハートの海賊団へ居ることは言わなかった。
彼女なら言わずとも少し調べれば分かってしまうことだろうが、彼女なら『シルビが言わなかった』ことから察してくれるだろうから構わない。それに腕の刺青を隠す事を忘れていた。
珈琲を飲み干してポケットから珈琲代を出して立ち上がる。レイリーがここに居たとしても今は居ないとなら用は無い。シャクヤクと話しているもの楽しいが、船長達が馬鹿なことをやっていないかのほうが気になった。
「レイリーが帰ってきたら、会えなくて残念だって言っておいてくんねぇ?」
「いいわよ」
用は済んだので船長達と合流しに行こうと、店の扉を開けようとした途端、外から扉が開けられる。
開けたのはタコの姿をした魚人だった。更にその後ろには、最近何度も手配書で見た覚えのある姿が幾つか揃っている。
思わずフードを深く被り直したシルビの視界に、懐かしい麦藁帽子が入った。
上陸前に集めた情報を頼りにシルビが向かったのは、シャボンディ諸島でも無法地帯と称されている一角だ。脛に瑕持つ者が自然と集まって出来たのだろうその界隈で、シルビはハートの船へ乗る前の旅装にしていた黒い外套を羽織ってレイリーを探す。
外套の下はツナギだが、いつも被っている防寒帽は脱いでいた。何かあった時ハートのクルーだとバレるのはよろしくないが、かといって『ペンギン』として駆けつけられないのも困るからだ。とりあえず防寒帽があれば『ペンギン』だという証明は出来る。
逆に、黒い外套は『死告シャイタン』の証明になっていた。
今までの旅の最中ずっとそれを着ていたから、『死告シャイタン』として目撃される時もそれを着ていた為だと思うのだが、詳しいことは『死告シャイタン』だなんて付けたネーミングセンス皆無野郎に聞かねば分からない。ただ『死告』と掛けられている『紫黒』の黒色は、その外套か髪の色なのだろう。
途中で何度もシルビを世間知らずな余所者だと判断して襲ってくる無法者を返り討ちにし、いい加減何の新しい情報も得られないことにうんざりしてきた頃、ふと視界に入った店に足を止めた。
「やっと見つけたぁ」
既に店を開けているらしいその店は一応酒場である。酒場であるのなら昼間のうちから開いていることは場合によっては有りだろうからそれはいいのだが、名前が。
溜息一つ吐いてシルビはその店へと向かった。鍵の掛かっていない扉を潜れば、カウンターの奥で顔を上げた女性がシルビを見た。
「いらっしゃいま……」
「こんにちはぁ。ここはシャクヤクの店で会ってるかぁ?」
扉を後ろ手に閉めてフード越しに見やれば、手をタオルで拭いていたシャクヤクが、年齢不詳の顔で驚きシルビを見つめる。最後に会ったのは彼女が海賊から足を洗った直後だったので四十年以上経っている筈なのだが、彼女の見た目は思っていた以上に若々しい。
とはいえ、肉体的には生まれ変わっているシルビ程ではないだろうが。
「その喋り方……もしかしてシルビ? シルビなの!?」
カウンターから飛び出してきたシャクヤクが駆け寄ってくるのにそのまま両手を広げて抱き留める。シルビよりも背の高い彼女を抱き締めるには少し苦労するが、出会い頭のハグは逐一驚くことではなかった。
「何年振りかしら! 最後に会った時より若返ってない!? やっぱり不老不死って噂は本当なの?」
「お前だってすげぇ若く見えるぜぇ。老化細胞を何処に捨ててきたんだぁ?」
「あらやだ。これでもおばあちゃんよ」
だからおばあちゃんに見えないと言っている。
嬉々としてシルビをカウンターへ座らせ、酒では無く珈琲を出してくれたシャクヤクは昔、シルビがまだロジャーと別れを告げる前に交流のあった女性だ。この店を構える前は海賊であり、当時はガープに散々追い掛け回されていた一人である。
会っていなかった年月など無かったかのように気安く談笑しながらも、その内容は互いの近状報告。あるいはここ数十年の世間の移り変わりに関わるものばかりになってしまう。
「それでさぁ、この島にレイリーが居るって聞いたんだけどどこにいるか知ってるかぁ?」
「レイリーに会いに来たの?」
「うん。たまたま近くまで来たからついでにぃ」
「でも残念ね。あの人ったら半年前から帰ってきてないわ。シルビが会いに来たなんて知ったらきっと悔しがるわね」
「一緒に暮らしてんの?」
「色々あったのよ」
昔よりも随分と女の裏を感じさせる笑い方をする。年齢のせいかと思いもしたが、それよりはレイリーとの関係が理由なのだろう。
そのレイリーはこの酒場を家としているが、半年も帰らないという不義理を行なっているらしい。しかし一つ所へ留まる方が、正直な話シルビやレイリーのような有名になりすぎた者にとっては危険だ。
「ここ数十年は何をしてたの?」
「相変わらず放浪してるよ」
シルビが今現在、『ペンギン』と呼ばれてハートの海賊団へ居ることは言わなかった。
彼女なら言わずとも少し調べれば分かってしまうことだろうが、彼女なら『シルビが言わなかった』ことから察してくれるだろうから構わない。それに腕の刺青を隠す事を忘れていた。
珈琲を飲み干してポケットから珈琲代を出して立ち上がる。レイリーがここに居たとしても今は居ないとなら用は無い。シャクヤクと話しているもの楽しいが、船長達が馬鹿なことをやっていないかのほうが気になった。
「レイリーが帰ってきたら、会えなくて残念だって言っておいてくんねぇ?」
「いいわよ」
用は済んだので船長達と合流しに行こうと、店の扉を開けようとした途端、外から扉が開けられる。
開けたのはタコの姿をした魚人だった。更にその後ろには、最近何度も手配書で見た覚えのある姿が幾つか揃っている。
思わずフードを深く被り直したシルビの視界に、懐かしい麦藁帽子が入った。