原作前日常編2
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ロー視点
「キャプテーン! 見て見て!」
甲板で本を読んでいたローの元へ駆け寄ってきたベポの手には、畳まれたオレンジ色の服があった。前の島で材料を買っていたのは知っていたが、もう完成したのかとベポの後ろから遅れて甲板へやってきたペンギンを見る。
眠そうに目元を擦っていたペンギンは、甲板に出たところで一度背伸びをしてからキャッキャと騒いでいるベポへと寄ってきた。
「完成したのか」
「ええ。後は裾や袖をちょっと確かめりゃ大丈夫でしょう」
もうすぐハートの海賊団も後半の海である『新世界』の前の、シャボンディ諸島へと赴く事になる。それぞれ違う航路を進んでいた海賊が再び一挙に集まる地として、色々と準備や身構えもしなければならない。
その手始めとして、という理由が半分と、そろそろ大きくなったからというのがもう半分の理由で、ベポ用のツナギを作ったのである。
白い毛並みなので白いツナギは面白くないと、前の島でわざわざローに色を選ばせたのはペンギンだ。その時お前のセンスで良いと言ったら、自分のセンスは皆無なのだと鱗柄の布地を持って来たのはまだ記憶に新しい。鱗柄のツナギというのも斬新だが、斬新過ぎる。
市販品ではシロクマのベポは着られないからと、人間用を元にベポの背丈や体格に合わせて型紙を作るところから始め、他の仕事の合間を縫って製作したのだろうそれは、ベポが広げるとなるほど人間用とは微妙に違っていた。
「シャボンディ諸島には人身売買の店もあるし、スカーフだけでハートの海賊団員って示すのも取れたらお終いだもんなぁ」
「スカーフ無くさないよ!?」
「無くす気が無くても盗まれるかも知れねぇだろぉ? それにツナギのほうがハートのクルーっぽい」
「うん。着てきてもいい?」
「いいぜぇ。着方が分からなかったら誰かに教わりなさい」
着る前のツナギをとりあえず見せに来ただけらしいベポが、嬉しげに再び船内へ戻っていくのに、ローは欠伸を噛み殺しているペンギンを見やる。
「人間オークション、か」
「人間、と言っておきながらその標的は『人間』に限っちゃいませんしねぇ。巨人も魚人も下僕に出来るのなら何でも扱ってるイメージありますしぃ」
「見たことはあるのか?」
「いいえ。ここ暫くシャボンディ諸島へは行っていませんから。……貴方が見に行くにしても行かねぇとしても、ベポに自衛させる事は大切でしょう」
ペンギンがそう言うのは、暫く前に空から降ってきた少女の残していった言葉を覚えているからだ。まるで未来予知のようなあの言葉について、ペンギンは殆ど何も言わない。
「オレが行かなかったらどうする?」
「別にどうにも。ただ俺は余裕があったら行ってみようかとは思ってますが」
結局ローが行かなくとも、ペンギンは行くと言う。それだけあの少女の言葉が気になるのかと思いもしたが、存外ペンギンは自分かハートの為にならない事は面倒臭がるところがある。なので完全に少女の言葉が気になるから行くという訳でもないのだろう。
「……オレも行く。遊覧屋の言葉が気になるっていうのもあるが、そろそろ新しいクルーも欲しいしな」
「オークションに出るような人は医師免許を持ってねぇと思いますけど……そうですね。そこら辺の医者を攫うよりはいいでしょうねぇ」
「随分な言い草だな。オレが医者を攫ったことがあるか?」
「少なくともイルカは攫ったようなものです」
それはオレよりお前らが動いた結果だろうがと言い返したかったが、ペンギンのそれは冗談交じりの軽口だったらしい。見れば穏やかに笑っていた。
ともあれ万が一人間オークションで買物をすることになっても、一人なら許されるらしいと判断してローは頷く。人身売買には賛否両論あるだろうが、買ったところで奴隷扱いでは無く平等に扱うつもりなのでそれはある意味人助けだ。
着替えを終えたらしいベポがシャチと一緒に甲板へと戻ってくる。白い毛並みにオレンジのツナギは見栄えするが、やはり少し裾や袖が長い。
「キャプテーン! どう? どう!?」
「ああ、似合ってる」
「へへへ」
嬉しそうににやけるベポの袖を、傍に寄ったペンギンがさっそく捲くっている。ポケットから安全ピンを取り出して留めている辺り、長いだろう事は最初から予測済みだったのか。
「スカーフどうすんの?」
「首に巻くよー」
「襟があるから首苦しくなるぜぇ?」
「え、じゃあどうしよう」
「部屋に仕舞っておけばいんじゃね? 無くしたら困るじゃん」
今まで着けていたスカーフはペンギンが、自分の腕の刺青を剥ぎ取ろうとしてまでハートのジョリーロジャーが刺繍したものだ。クルーやローも一縫いだけであっても手を入れているそれが、ベポの宝物でお気に入りだった。下手に無くすよりはしまっておいた方がいい。
「でもこれでベポも一人前みたいだな!」
「シャチには言われたくないー」
「そうだなぁ。シャチはもうちょっと戦闘経験を積まねぇと……」
「ペンギンまで! ベポに負けんのは仕方ないじゃん! ベポシロクマだし!」
「速さは勝てるのになぁ。船長はどう思います?」
しみじみと呟いたペンギンは、未だに手合わせの際反撃してこないシャチが気になるらしかった。手加減しているとはいえペンギンの攻撃を避けられるだけの素早さがあるのだから別に構わないと思うが、確かに戦力にならないのは論外だ。
「シャボンディ諸島で連れ攫われるなよ」
「流石にそれはないです! 多分!」
「キャプテーン! 見て見て!」
甲板で本を読んでいたローの元へ駆け寄ってきたベポの手には、畳まれたオレンジ色の服があった。前の島で材料を買っていたのは知っていたが、もう完成したのかとベポの後ろから遅れて甲板へやってきたペンギンを見る。
眠そうに目元を擦っていたペンギンは、甲板に出たところで一度背伸びをしてからキャッキャと騒いでいるベポへと寄ってきた。
「完成したのか」
「ええ。後は裾や袖をちょっと確かめりゃ大丈夫でしょう」
もうすぐハートの海賊団も後半の海である『新世界』の前の、シャボンディ諸島へと赴く事になる。それぞれ違う航路を進んでいた海賊が再び一挙に集まる地として、色々と準備や身構えもしなければならない。
その手始めとして、という理由が半分と、そろそろ大きくなったからというのがもう半分の理由で、ベポ用のツナギを作ったのである。
白い毛並みなので白いツナギは面白くないと、前の島でわざわざローに色を選ばせたのはペンギンだ。その時お前のセンスで良いと言ったら、自分のセンスは皆無なのだと鱗柄の布地を持って来たのはまだ記憶に新しい。鱗柄のツナギというのも斬新だが、斬新過ぎる。
市販品ではシロクマのベポは着られないからと、人間用を元にベポの背丈や体格に合わせて型紙を作るところから始め、他の仕事の合間を縫って製作したのだろうそれは、ベポが広げるとなるほど人間用とは微妙に違っていた。
「シャボンディ諸島には人身売買の店もあるし、スカーフだけでハートの海賊団員って示すのも取れたらお終いだもんなぁ」
「スカーフ無くさないよ!?」
「無くす気が無くても盗まれるかも知れねぇだろぉ? それにツナギのほうがハートのクルーっぽい」
「うん。着てきてもいい?」
「いいぜぇ。着方が分からなかったら誰かに教わりなさい」
着る前のツナギをとりあえず見せに来ただけらしいベポが、嬉しげに再び船内へ戻っていくのに、ローは欠伸を噛み殺しているペンギンを見やる。
「人間オークション、か」
「人間、と言っておきながらその標的は『人間』に限っちゃいませんしねぇ。巨人も魚人も下僕に出来るのなら何でも扱ってるイメージありますしぃ」
「見たことはあるのか?」
「いいえ。ここ暫くシャボンディ諸島へは行っていませんから。……貴方が見に行くにしても行かねぇとしても、ベポに自衛させる事は大切でしょう」
ペンギンがそう言うのは、暫く前に空から降ってきた少女の残していった言葉を覚えているからだ。まるで未来予知のようなあの言葉について、ペンギンは殆ど何も言わない。
「オレが行かなかったらどうする?」
「別にどうにも。ただ俺は余裕があったら行ってみようかとは思ってますが」
結局ローが行かなくとも、ペンギンは行くと言う。それだけあの少女の言葉が気になるのかと思いもしたが、存外ペンギンは自分かハートの為にならない事は面倒臭がるところがある。なので完全に少女の言葉が気になるから行くという訳でもないのだろう。
「……オレも行く。遊覧屋の言葉が気になるっていうのもあるが、そろそろ新しいクルーも欲しいしな」
「オークションに出るような人は医師免許を持ってねぇと思いますけど……そうですね。そこら辺の医者を攫うよりはいいでしょうねぇ」
「随分な言い草だな。オレが医者を攫ったことがあるか?」
「少なくともイルカは攫ったようなものです」
それはオレよりお前らが動いた結果だろうがと言い返したかったが、ペンギンのそれは冗談交じりの軽口だったらしい。見れば穏やかに笑っていた。
ともあれ万が一人間オークションで買物をすることになっても、一人なら許されるらしいと判断してローは頷く。人身売買には賛否両論あるだろうが、買ったところで奴隷扱いでは無く平等に扱うつもりなのでそれはある意味人助けだ。
着替えを終えたらしいベポがシャチと一緒に甲板へと戻ってくる。白い毛並みにオレンジのツナギは見栄えするが、やはり少し裾や袖が長い。
「キャプテーン! どう? どう!?」
「ああ、似合ってる」
「へへへ」
嬉しそうににやけるベポの袖を、傍に寄ったペンギンがさっそく捲くっている。ポケットから安全ピンを取り出して留めている辺り、長いだろう事は最初から予測済みだったのか。
「スカーフどうすんの?」
「首に巻くよー」
「襟があるから首苦しくなるぜぇ?」
「え、じゃあどうしよう」
「部屋に仕舞っておけばいんじゃね? 無くしたら困るじゃん」
今まで着けていたスカーフはペンギンが、自分の腕の刺青を剥ぎ取ろうとしてまでハートのジョリーロジャーが刺繍したものだ。クルーやローも一縫いだけであっても手を入れているそれが、ベポの宝物でお気に入りだった。下手に無くすよりはしまっておいた方がいい。
「でもこれでベポも一人前みたいだな!」
「シャチには言われたくないー」
「そうだなぁ。シャチはもうちょっと戦闘経験を積まねぇと……」
「ペンギンまで! ベポに負けんのは仕方ないじゃん! ベポシロクマだし!」
「速さは勝てるのになぁ。船長はどう思います?」
しみじみと呟いたペンギンは、未だに手合わせの際反撃してこないシャチが気になるらしかった。手加減しているとはいえペンギンの攻撃を避けられるだけの素早さがあるのだから別に構わないと思うが、確かに戦力にならないのは論外だ。
「シャボンディ諸島で連れ攫われるなよ」
「流石にそれはないです! 多分!」