原作前日常編2
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ロー視点
船に戻ったペンギンが言うに、少女は役目を終えて元居た場所へ戻ったのだという。
ペンギンが話していなかった事実として、彼女は『そういう存在』らしい。つまりいきなり何処かへ飛ばされて、そこで起こる何かに彼女が介入する事で無数にある未来のうち幾つかの可能性を消すのだという。
「今回の場合、ゴロツキの襲撃に気付かず、船を破損されるという未来だったのでしょう。それが彼女が居て、叫んで俺達が気付いたことで『船が破損する』という未来が消えた。……結果論でしか説明出来ねぇのですが、彼女の言動というのはそういう事なんです」
流石何が起こっても不思議ではない偉大なる航路、というにもしても荒唐無稽な話だった。しかしロー達はそれを目の前で経験した訳で、思いつく反論など無い。
あるのは少女が間接的にハートの恩人だったという事実。聞けばそれも少女が意識して行なったものではないらしいが、結果的にはそうなった。
「彼女が消すのはいつも最悪の未来だという確証はねぇし、彼女が消した未来を望む者も居て、それに命を狙われることもあるんです。だから怖かったんですよ。彼女は何をしでかすか分からねぇ」
「お前が前にアイツと出会った時もそうだったのか?」
「ええ、テロリストの計画を結果的に阻止したりとか、ですね。そして役目が済めばああして消えて元の『世界』へ戻る。これからもずっと」
説明を終えたペンギンが溜息を吐く。二度目になる上により詳しく話すことを要求したから疲れたのだろう。
少女が落ちてきてから、本人は気付いていなかったようだがずっと気を張り詰めていたのは、彼女が居る事で『何かが起こる』と知っていたからだったらしい。
言ってくれればとも思ったが、未来の話になる現象の事なので事が起こる前に話されていても信じていなかった。となれば黙っていたのが正しいのか。
島の酒場では今頃、確定した訳ではないがシャチが失恋したという事になって慰める会が発足しているだろう。ベポが眠いというので一緒に船へ早々に戻ってきたローを見ても、船番として残っていたペンギンは特に何も言わなかった。
ただちょっと、おかしそうに笑ったのだ。少女が消えてクルーの多くが驚いているというのに。
「人間オークション、行きますか?」
「……着いてから考えるのでもいいだろ」
「構いませんよ。まだ時間はありますし」
「遊覧屋はシャチに何を言おうとしたと思う?」
「正解を知っているので教えません」
手慰みにカップの縁をなぞっていた指を止めてペンギンを見れば、ペンギンは微笑んでいる。
「シュシュが無ぇんですよ。何所にも」
「シュシュ?」
「きっと持っていったんでしょうね」
そう言って楽しげに笑うので、ペンギンの結果的には全て丸く収まっているのかもしれない。
結果的にローも少女が居る間少しは非日常を経験出来たが、何だか釈然としないのはペンギンがあまり相談してくれなかったからだろうか。
「シャボンディ諸島、早く行けるといいですねぇ」
「一緒にだよな?」
「貴方俺を降ろす気ですか?」
「それはない」
「俺も今のところ降りる気ありませんよ」
結果的に、全ては何も変わりなく。
船に戻ったペンギンが言うに、少女は役目を終えて元居た場所へ戻ったのだという。
ペンギンが話していなかった事実として、彼女は『そういう存在』らしい。つまりいきなり何処かへ飛ばされて、そこで起こる何かに彼女が介入する事で無数にある未来のうち幾つかの可能性を消すのだという。
「今回の場合、ゴロツキの襲撃に気付かず、船を破損されるという未来だったのでしょう。それが彼女が居て、叫んで俺達が気付いたことで『船が破損する』という未来が消えた。……結果論でしか説明出来ねぇのですが、彼女の言動というのはそういう事なんです」
流石何が起こっても不思議ではない偉大なる航路、というにもしても荒唐無稽な話だった。しかしロー達はそれを目の前で経験した訳で、思いつく反論など無い。
あるのは少女が間接的にハートの恩人だったという事実。聞けばそれも少女が意識して行なったものではないらしいが、結果的にはそうなった。
「彼女が消すのはいつも最悪の未来だという確証はねぇし、彼女が消した未来を望む者も居て、それに命を狙われることもあるんです。だから怖かったんですよ。彼女は何をしでかすか分からねぇ」
「お前が前にアイツと出会った時もそうだったのか?」
「ええ、テロリストの計画を結果的に阻止したりとか、ですね。そして役目が済めばああして消えて元の『世界』へ戻る。これからもずっと」
説明を終えたペンギンが溜息を吐く。二度目になる上により詳しく話すことを要求したから疲れたのだろう。
少女が落ちてきてから、本人は気付いていなかったようだがずっと気を張り詰めていたのは、彼女が居る事で『何かが起こる』と知っていたからだったらしい。
言ってくれればとも思ったが、未来の話になる現象の事なので事が起こる前に話されていても信じていなかった。となれば黙っていたのが正しいのか。
島の酒場では今頃、確定した訳ではないがシャチが失恋したという事になって慰める会が発足しているだろう。ベポが眠いというので一緒に船へ早々に戻ってきたローを見ても、船番として残っていたペンギンは特に何も言わなかった。
ただちょっと、おかしそうに笑ったのだ。少女が消えてクルーの多くが驚いているというのに。
「人間オークション、行きますか?」
「……着いてから考えるのでもいいだろ」
「構いませんよ。まだ時間はありますし」
「遊覧屋はシャチに何を言おうとしたと思う?」
「正解を知っているので教えません」
手慰みにカップの縁をなぞっていた指を止めてペンギンを見れば、ペンギンは微笑んでいる。
「シュシュが無ぇんですよ。何所にも」
「シュシュ?」
「きっと持っていったんでしょうね」
そう言って楽しげに笑うので、ペンギンの結果的には全て丸く収まっているのかもしれない。
結果的にローも少女が居る間少しは非日常を経験出来たが、何だか釈然としないのはペンギンがあまり相談してくれなかったからだろうか。
「シャボンディ諸島、早く行けるといいですねぇ」
「一緒にだよな?」
「貴方俺を降ろす気ですか?」
「それはない」
「俺も今のところ降りる気ありませんよ」
結果的に、全ては何も変わりなく。