原作前日常編2
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夢主視点
思ったより高く換金でき懐に余裕が出来たので、今夜は島の酒場で宴だと決まった。
シルビは船番なので行かないが、レミはバンダナ達に一緒に連れて行ってもらうことにする。ただし未成年なので酒は駄目だが。
この世界では子供でもレミくらいの年齢なら気にせず酒を飲んでいるが、それでも発育に良くないので根本的に飲酒を勧めたくない。大体、レミの世界の社会ではレミは飲んではいけない歳だ。
昼間に行った店へもう一度出向いて、服を買った後に買う予定だった他の必需品も買い揃え船へ戻る途中、ふと見かけた店のショーウィンドウの前でレミが足を止めた。
「どうしたぁ?」
「ペンギンさん、あれ見てもいいですか?」
レミがそのショーウィンドウへ向かう。ショーウィンドウの向こうには並べられたサングラス。
「シャチにあげるのかぁ?」
「……色々助けてもらってるし」
この若い子達の謎のシンクロはなんなのだろうか。
確かにシャチを思い浮かべた時、真っ先に思い出すのはあのキャスケット帽とサングラスだろう。お礼としてあげる物を考えた時、相手が身に着けている物が思い浮かぶのも変なことではない。
けれどもあまりサングラスは勧められなかった。
「サングラスはなぁ」
「駄目ですかね」
「駄目って言うか、シャチのアレは遮光だけじゃなくて度も入ってるからなぁ」
「度? 目が悪いの?」
「目が弱ぇんだよあの子。今でもきつい陽射しの下とか新月の夜はよく見えねぇって言ってたし」
「……ただのオシャレだと思ってました」
シャチのサングラスはただのファッションではない。遮光度数も高いし視力矯正の度も入っている実用的なものだ。
シルビはちょっと笑ってレミの手を引き歩き出す。
「船に乗った直後は、夕方の明るさにはもう何も見えねぇ子だったよ。船内でも暗い場所じゃよく転んでたし並べられた椅子は乱して突き進んでくし、クルーの顔も多分殆ど判別出来てなかったもんだから、呼ばれたらちゃんと返事するように言ったりわざと音を立てて歩いたり、色々したなぁ」
それで船長を怒ったところを見られて、嫌われていたのを思い出す。
「俺等が海賊だけど医者の集団だからって、臨床に使える患者扱いだと思い込んで落ち込んだりもしてたし……ちょっとレミ少女に似てたなぁ」
「あたしに?」
後ろを付いてくるレミを振り返って笑いかけた。
「君も自分が『面倒を掛けてる』って謝ってばかりだっただろぉ?」
通りの先に見えた洋菓子屋の前で止まる。店先のガラス越しに棚に並んだ商品が見えて、ベポや船長にも何か買っていくかと思った。
「どうせあげるなら物より思い出にしときなさい」
「それはあたしが居なくなるから?」
「いや、普通に荷物になるから。食い物なら心だけじゃなくて腹も膨れんだろぉ?」
「……ベポを育てたのって、ペンギンさんでしょ」
レミがシャチにあげる為に買った飴入りの小瓶は、店員によってファンシーなリボンを結び付けられていた。サービスにしたってちょっと過剰ではないかと思ったのはシルビだけではないようで、帰りの道でレミもリボンを外すかどうかで悩んでいる。
船に戻ってきたというのに安全な船内へ入ることもせず、タラップの前でレミは飴の小瓶を見つめたまま足を止めていた。
「レミ少女。そこは邪魔だぜぇ」
「もうちょっと待ってください。このリボンをですね……」
「船の中で悩みなさい」
「渡す前に見られたら恥ずかしいです。……よし、はず……いや、付けとく?」
「寒くなる前に決めんだぞぉ」
船の傍だからまだ大丈夫かと判断して、シルビはレミの荷物を持って船内へ帰る。夜にある宴に浮き足立っているクルー達に声を掛けられながら部屋へ戻り、ツナギに着替えて食堂に行くと船長がベポとパズルをしていた。
買ってきたお菓子をその前に置けば船長の視線が向けられる。
「お土産です」
「わ、ありがとー!」
「遊覧屋はどうした」
「外で考え事中です」
料理番が珈琲を入れてくれたので受け取ってベポの隣へ腰を降ろした。換金所から戻ってきて直ぐにレミと買いなおしに行ったから、やっと一息つける。
「あ、酒場の予約」
「シャチとバンダナに行かせた。ワカメから聞いたぞ。雑魚共の相手ご苦労だったな」
「出港するまでは一応気にしておいたほうがいいかも知れませんね。ああいう輩は時々無謀な真似もしますから」
ベポが悩みながらパズルのピースを嵌めていく。
指先の訓練になるのでベポがパズルをやるのはいいのだが、パズルの絵柄が空と海と船だけというのは難易度が高い気がする。現にいつからやっているのか分からないがピースは殆ど嵌まっていない。
「ただ相手がハートだとは気付いてねぇ様子でしたので、本当に小物ですね」
「オレが出る幕も無ェってか」
「見える位置に立っているくらいのことはした方がいいですよ。クルーの士気は上がるし敵の戦意は下がるし」
「上がるか?」
「大好きな船長に見られてりゃカッコイイとこ見せてぇって思うんじゃねぇですか? なぁベポ」
「うん!」
間髪置かずに肯定したベポへ船長が機嫌良さげに微笑む。戦闘の時も引き篭もっていたら外面が悪いという考えだったのだが、結構効果があったのかもしれない。主にベポの頷きが。
散らばっているピースの一つを手にとって、枠の中に嵌め込んだところで船の外からレミの叫び声が聞こえた。
思ったより高く換金でき懐に余裕が出来たので、今夜は島の酒場で宴だと決まった。
シルビは船番なので行かないが、レミはバンダナ達に一緒に連れて行ってもらうことにする。ただし未成年なので酒は駄目だが。
この世界では子供でもレミくらいの年齢なら気にせず酒を飲んでいるが、それでも発育に良くないので根本的に飲酒を勧めたくない。大体、レミの世界の社会ではレミは飲んではいけない歳だ。
昼間に行った店へもう一度出向いて、服を買った後に買う予定だった他の必需品も買い揃え船へ戻る途中、ふと見かけた店のショーウィンドウの前でレミが足を止めた。
「どうしたぁ?」
「ペンギンさん、あれ見てもいいですか?」
レミがそのショーウィンドウへ向かう。ショーウィンドウの向こうには並べられたサングラス。
「シャチにあげるのかぁ?」
「……色々助けてもらってるし」
この若い子達の謎のシンクロはなんなのだろうか。
確かにシャチを思い浮かべた時、真っ先に思い出すのはあのキャスケット帽とサングラスだろう。お礼としてあげる物を考えた時、相手が身に着けている物が思い浮かぶのも変なことではない。
けれどもあまりサングラスは勧められなかった。
「サングラスはなぁ」
「駄目ですかね」
「駄目って言うか、シャチのアレは遮光だけじゃなくて度も入ってるからなぁ」
「度? 目が悪いの?」
「目が弱ぇんだよあの子。今でもきつい陽射しの下とか新月の夜はよく見えねぇって言ってたし」
「……ただのオシャレだと思ってました」
シャチのサングラスはただのファッションではない。遮光度数も高いし視力矯正の度も入っている実用的なものだ。
シルビはちょっと笑ってレミの手を引き歩き出す。
「船に乗った直後は、夕方の明るさにはもう何も見えねぇ子だったよ。船内でも暗い場所じゃよく転んでたし並べられた椅子は乱して突き進んでくし、クルーの顔も多分殆ど判別出来てなかったもんだから、呼ばれたらちゃんと返事するように言ったりわざと音を立てて歩いたり、色々したなぁ」
それで船長を怒ったところを見られて、嫌われていたのを思い出す。
「俺等が海賊だけど医者の集団だからって、臨床に使える患者扱いだと思い込んで落ち込んだりもしてたし……ちょっとレミ少女に似てたなぁ」
「あたしに?」
後ろを付いてくるレミを振り返って笑いかけた。
「君も自分が『面倒を掛けてる』って謝ってばかりだっただろぉ?」
通りの先に見えた洋菓子屋の前で止まる。店先のガラス越しに棚に並んだ商品が見えて、ベポや船長にも何か買っていくかと思った。
「どうせあげるなら物より思い出にしときなさい」
「それはあたしが居なくなるから?」
「いや、普通に荷物になるから。食い物なら心だけじゃなくて腹も膨れんだろぉ?」
「……ベポを育てたのって、ペンギンさんでしょ」
レミがシャチにあげる為に買った飴入りの小瓶は、店員によってファンシーなリボンを結び付けられていた。サービスにしたってちょっと過剰ではないかと思ったのはシルビだけではないようで、帰りの道でレミもリボンを外すかどうかで悩んでいる。
船に戻ってきたというのに安全な船内へ入ることもせず、タラップの前でレミは飴の小瓶を見つめたまま足を止めていた。
「レミ少女。そこは邪魔だぜぇ」
「もうちょっと待ってください。このリボンをですね……」
「船の中で悩みなさい」
「渡す前に見られたら恥ずかしいです。……よし、はず……いや、付けとく?」
「寒くなる前に決めんだぞぉ」
船の傍だからまだ大丈夫かと判断して、シルビはレミの荷物を持って船内へ帰る。夜にある宴に浮き足立っているクルー達に声を掛けられながら部屋へ戻り、ツナギに着替えて食堂に行くと船長がベポとパズルをしていた。
買ってきたお菓子をその前に置けば船長の視線が向けられる。
「お土産です」
「わ、ありがとー!」
「遊覧屋はどうした」
「外で考え事中です」
料理番が珈琲を入れてくれたので受け取ってベポの隣へ腰を降ろした。換金所から戻ってきて直ぐにレミと買いなおしに行ったから、やっと一息つける。
「あ、酒場の予約」
「シャチとバンダナに行かせた。ワカメから聞いたぞ。雑魚共の相手ご苦労だったな」
「出港するまでは一応気にしておいたほうがいいかも知れませんね。ああいう輩は時々無謀な真似もしますから」
ベポが悩みながらパズルのピースを嵌めていく。
指先の訓練になるのでベポがパズルをやるのはいいのだが、パズルの絵柄が空と海と船だけというのは難易度が高い気がする。現にいつからやっているのか分からないがピースは殆ど嵌まっていない。
「ただ相手がハートだとは気付いてねぇ様子でしたので、本当に小物ですね」
「オレが出る幕も無ェってか」
「見える位置に立っているくらいのことはした方がいいですよ。クルーの士気は上がるし敵の戦意は下がるし」
「上がるか?」
「大好きな船長に見られてりゃカッコイイとこ見せてぇって思うんじゃねぇですか? なぁベポ」
「うん!」
間髪置かずに肯定したベポへ船長が機嫌良さげに微笑む。戦闘の時も引き篭もっていたら外面が悪いという考えだったのだが、結構効果があったのかもしれない。主にベポの頷きが。
散らばっているピースの一つを手にとって、枠の中に嵌め込んだところで船の外からレミの叫び声が聞こえた。