原作前日常編2
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夢主視点
何かあったら直ぐに連絡が取れるように、小電伝虫をワカメに持たせて見送る。それからハートの海賊団のトレードマークともなっているツナギから私服へ着替え、包帯を巻いて刺青を隠した。
帽子だけは上陸しているクルーもいるのでレミと一緒に行動するにしても外せない。『レミと一緒に行動しているイコールペンギン』という図式が簡単に成立するので、帽子を外していてもレミと一緒に居たら素顔がばれる。
クルーにならバレてもいい気がするが、晒すなというのが船長の命令だ。レミは何も言わなかった。
本屋に行くらしい船長にも声を掛けてから、レミと一緒に船を降りる。前にも船旅から地上へ上陸したことがあったが、反応が同じだった。『揺れない地面だ!』と騒がない辺りは成長している。
「夕方には船番交代だから、それまでには帰ってこれるようにしてぇなぁ」
「じゃあ最初から即断即決即行動ですね」
そうは言われても、女の子の買物に時間が掛かることは知っているので覚悟はしていた。
レミはいつまでこの世界にいるのか分からないので、着替えを買うにしても最低限を着潰すように着回ししたほうが荷物にならないし効率がいい。トリップ先で手に入れた物は、もう一度言うが元の世界へは持ち帰れないだろう。
「あたしが戻った後の荷物ってどうなってるんですかね?」
「んー、オールドランドじゃレオナが片付けてたぜぇ」
「残る感じ? でもハートの船じゃ残っても仕方が……そうだ。シルビさんが変装で着れるように少し大き目を」
「んな事考えずに好きなのを買いなさい」
「……ハイ」
いい案だと思ったのだろうか。変装する時はその直前に状況にあったものを見繕うから買い置きなどいらない。
見つけた一軒目のブディックはレミには大人っぽ過ぎたので、もう少し値段もセンスも手頃な店を探して入った。シルビは着られれば何でもいいという考えなので下手に口出しせず、レミが自分の好みの服を選ぶのを見守る。
そのまま同じ店で下着も選び始めたので、流石にシルビは遠慮して少し離れた場所で待っていたのだが、途中で小電伝虫が鳴き出したので店の外へ出た。
「どうしたぁ?」
『ペンギン? ちょっと問題起きた。換金所に来た他の客がウチらの質草パクろうとしてさ』
「……店員は?」
『駄目だね。頼りになんない』
海賊といったゴロツキが多いこの世界だと良くある問題だが、貯蓄予定が盗まれていい気はしない。
「……レミ少女に話したらそっち行く」
『ごめんな。ペンギンも忙しいのに』
店から出てきたレミに出来てしまった急用を説明し、一緒に来るか船へ戻るかと尋ねると船へ戻ると言われた。シルビとしてもレミをゴロツキの居る換金所へ連れて行くのは望ましくなかったのでそれはいいのだが、一人で船へ帰らせるのも心配だ。
近くに自由行動しているクルーでも居れば良かったのだが、運悪く姿も見えない。レミはただ歩いているだけでテロの妨害をして連れ攫われた前科があるので不安だが、シルビが一度船まで送っていくのでは更に時間が掛かってしまう。
仕方なく持っていた小電伝虫をレミへ渡し、使い方を教えて何かあったら直ぐに合流予定のワカメへ連絡をするように言い含めた。
買った物の入っている袋を提げたレミと別れて換金所へ向かう。向かった先では一発触発寸前の空気で、海賊というよりは乞食の集団と言うような男達がワカメ達と睨みあっていた。
換金所の店員は、怯えながらも見ない振りをして質草の値段を調べている。仕事の手を止めないところしか評価できない。
「ワカメ! 遅くなったぁ」
「いや、丁度いいかも。アレが盗まれた奴」
ワカメが指差した先は小汚い布に包まれたおそらく男達が持って来た質草。その布の隙間からいくつか他の物より綺麗な置物や、見覚えのあるゴブレットが覗いている。
振り返って換金途中のものを見れば、今はワカメ達が持って来たものを測定しているらしい。残りは半分程度。
少し考えてからシルビは男達や小汚い包みを睨んでいるクルー達を呼び集める。
「どうやって盗まれたんだぁ?」
「測定中だったのにあいつ等が持って来たガラクタを直ぐ横で広げたんだよ。店員が『まだ待ってくれ』って言ったら片付けたんだけど、その時にいくつか持ってった」
「……せこい真似すんなぁ」
いっそ感心してしまう程せこい。店員もしっかりとしてくれたら起こらなかった問題だが、普通はそんな事をしでかす馬鹿などいないだろうから予測すら出来なかったのだろう。
そして盗まれた事に気付いてクルーが指摘したところ、男達は『言い掛かりだ!』と逆ギレしたらしい。言い合いに言い合いを重ねた結果、口より手足が飛び出す寸前でシルビが到着した、というところか。
「じゃあこうしよう。『盗まれてなんていない』」
「いやいや奪われてますけど!?」
指を数回鳴らす。換金所の窓口の方で小さく音がするが、誰も気付かなかった。
「大丈夫。『盗まれてなんていない』。あの包みの中は彼らの財宝だけ。……ほら」
クルーへもう一度男達の包みを確認させれば、シルビが灯した第八の炎をちゃんと潜り抜けたゴブレットたちは包みの中から消えている。
「証拠が無ぇんだから『盗まれた』なんて騒ぎも起こってねぇ。問題は何一つ起こってねぇ。……納得してくれると嬉しいんだけどなぁ?」
何かあったら直ぐに連絡が取れるように、小電伝虫をワカメに持たせて見送る。それからハートの海賊団のトレードマークともなっているツナギから私服へ着替え、包帯を巻いて刺青を隠した。
帽子だけは上陸しているクルーもいるのでレミと一緒に行動するにしても外せない。『レミと一緒に行動しているイコールペンギン』という図式が簡単に成立するので、帽子を外していてもレミと一緒に居たら素顔がばれる。
クルーにならバレてもいい気がするが、晒すなというのが船長の命令だ。レミは何も言わなかった。
本屋に行くらしい船長にも声を掛けてから、レミと一緒に船を降りる。前にも船旅から地上へ上陸したことがあったが、反応が同じだった。『揺れない地面だ!』と騒がない辺りは成長している。
「夕方には船番交代だから、それまでには帰ってこれるようにしてぇなぁ」
「じゃあ最初から即断即決即行動ですね」
そうは言われても、女の子の買物に時間が掛かることは知っているので覚悟はしていた。
レミはいつまでこの世界にいるのか分からないので、着替えを買うにしても最低限を着潰すように着回ししたほうが荷物にならないし効率がいい。トリップ先で手に入れた物は、もう一度言うが元の世界へは持ち帰れないだろう。
「あたしが戻った後の荷物ってどうなってるんですかね?」
「んー、オールドランドじゃレオナが片付けてたぜぇ」
「残る感じ? でもハートの船じゃ残っても仕方が……そうだ。シルビさんが変装で着れるように少し大き目を」
「んな事考えずに好きなのを買いなさい」
「……ハイ」
いい案だと思ったのだろうか。変装する時はその直前に状況にあったものを見繕うから買い置きなどいらない。
見つけた一軒目のブディックはレミには大人っぽ過ぎたので、もう少し値段もセンスも手頃な店を探して入った。シルビは着られれば何でもいいという考えなので下手に口出しせず、レミが自分の好みの服を選ぶのを見守る。
そのまま同じ店で下着も選び始めたので、流石にシルビは遠慮して少し離れた場所で待っていたのだが、途中で小電伝虫が鳴き出したので店の外へ出た。
「どうしたぁ?」
『ペンギン? ちょっと問題起きた。換金所に来た他の客がウチらの質草パクろうとしてさ』
「……店員は?」
『駄目だね。頼りになんない』
海賊といったゴロツキが多いこの世界だと良くある問題だが、貯蓄予定が盗まれていい気はしない。
「……レミ少女に話したらそっち行く」
『ごめんな。ペンギンも忙しいのに』
店から出てきたレミに出来てしまった急用を説明し、一緒に来るか船へ戻るかと尋ねると船へ戻ると言われた。シルビとしてもレミをゴロツキの居る換金所へ連れて行くのは望ましくなかったのでそれはいいのだが、一人で船へ帰らせるのも心配だ。
近くに自由行動しているクルーでも居れば良かったのだが、運悪く姿も見えない。レミはただ歩いているだけでテロの妨害をして連れ攫われた前科があるので不安だが、シルビが一度船まで送っていくのでは更に時間が掛かってしまう。
仕方なく持っていた小電伝虫をレミへ渡し、使い方を教えて何かあったら直ぐに合流予定のワカメへ連絡をするように言い含めた。
買った物の入っている袋を提げたレミと別れて換金所へ向かう。向かった先では一発触発寸前の空気で、海賊というよりは乞食の集団と言うような男達がワカメ達と睨みあっていた。
換金所の店員は、怯えながらも見ない振りをして質草の値段を調べている。仕事の手を止めないところしか評価できない。
「ワカメ! 遅くなったぁ」
「いや、丁度いいかも。アレが盗まれた奴」
ワカメが指差した先は小汚い布に包まれたおそらく男達が持って来た質草。その布の隙間からいくつか他の物より綺麗な置物や、見覚えのあるゴブレットが覗いている。
振り返って換金途中のものを見れば、今はワカメ達が持って来たものを測定しているらしい。残りは半分程度。
少し考えてからシルビは男達や小汚い包みを睨んでいるクルー達を呼び集める。
「どうやって盗まれたんだぁ?」
「測定中だったのにあいつ等が持って来たガラクタを直ぐ横で広げたんだよ。店員が『まだ待ってくれ』って言ったら片付けたんだけど、その時にいくつか持ってった」
「……せこい真似すんなぁ」
いっそ感心してしまう程せこい。店員もしっかりとしてくれたら起こらなかった問題だが、普通はそんな事をしでかす馬鹿などいないだろうから予測すら出来なかったのだろう。
そして盗まれた事に気付いてクルーが指摘したところ、男達は『言い掛かりだ!』と逆ギレしたらしい。言い合いに言い合いを重ねた結果、口より手足が飛び出す寸前でシルビが到着した、というところか。
「じゃあこうしよう。『盗まれてなんていない』」
「いやいや奪われてますけど!?」
指を数回鳴らす。換金所の窓口の方で小さく音がするが、誰も気付かなかった。
「大丈夫。『盗まれてなんていない』。あの包みの中は彼らの財宝だけ。……ほら」
クルーへもう一度男達の包みを確認させれば、シルビが灯した第八の炎をちゃんと潜り抜けたゴブレットたちは包みの中から消えている。
「証拠が無ぇんだから『盗まれた』なんて騒ぎも起こってねぇ。問題は何一つ起こってねぇ。……納得してくれると嬉しいんだけどなぁ?」