原作前日常編2
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ワカメ視点
バンダナがペンギンに言われてレミを連れて行く。その姿が船内へ消えて、振り返ってシャチを見るペンギンの背後に般若が見えた気がした。
シャチが怯えて硬直する。そうでなくともレミの言った事には驚かざるを得なくて、誰も何も言えなかったのだが、ペンギンの怒気に晒されて余計に何も言えない。
「女の子泣かせて、いいと思ってんの?」
「ぅ……」
不可抗力だろ、と反論は誰も出来なかった。気付けばいつの間にか船長が、ベポと一緒に積荷を確認する振りをして敵船の方へ移動しペンギンと距離を取っている。手伝いもしないくせに避難するとか卑怯だ。
ペンギンが溜息を吐き、背後の般若を消してレミ達の向かったほうを振り返った。般若はイメージだが。
「……まぁ、溜め込んでたんだろうモノを吐き出せたんだろうし、怒るのは止めとくけど」
レミは『好きでこんな体質になったんじゃない』と言っていた。彼女の事を知っているのはペンギンだけで、だから彼女が何を知っていて、今まで何をやっていたのかを知っているのもペンギンだけだ。
「レミちゃんはさ、なんで空から落ちてきたの?」
前にも一度聞いたような質問をワカメはペンギンへ問い掛ける。ペンギンはレミを抱き締めた時に付いたのだろう服の涙の染みを、意味も無く払って口を開いた。
「あの子は、自分でそれを望んだ訳じゃねぇ。本当はそんな目に遭いたくも無かっただろうし、遭うとも思ってなかったのが、何処の『誰か』も『何か』も分からねぇモノによって、平穏な生活を捨てざるを得なかったんだよ」
「捨てざるを得ないって?」
「俺が初めて会った時は、犯罪者集団に殺されそうになってたよ。……運命なんてものがあるのならそれは、確実にあの子を殺そうとしてるのかもしれねぇ」
吐き捨てる様に言ったペンギンに、もう怒っていないと判断したらしい船長が戻ってくる。
「そんな運命は捨てちまえばいいだろ」
「捨てたくてもあの子にはその力が無ぇんですよ。だから周りに頼るしかねぇ。頼るということは迷惑を掛けるということ。あの子はそれでいいとは思えない。だから謝るんだよシャチ」
唐突に話をシャチへ振ってペンギンが微笑む。ワカメにも覚えがある笑みだった。
多分シャチにも覚えがあるだろう。ペンギンのそれは諭す時に浮かべるそれだった。
防寒帽の影から紫色の目が僅かに見える。
「お前は謝る子じゃなかったけど、卑屈にはなっただろぉ」
「……子、っていうの、やめてくんない?」
「女の子苛めるような奴は子ども扱いで充分だよ。ちゃんと後で謝りなさい」
バンダナがペンギンに言われてレミを連れて行く。その姿が船内へ消えて、振り返ってシャチを見るペンギンの背後に般若が見えた気がした。
シャチが怯えて硬直する。そうでなくともレミの言った事には驚かざるを得なくて、誰も何も言えなかったのだが、ペンギンの怒気に晒されて余計に何も言えない。
「女の子泣かせて、いいと思ってんの?」
「ぅ……」
不可抗力だろ、と反論は誰も出来なかった。気付けばいつの間にか船長が、ベポと一緒に積荷を確認する振りをして敵船の方へ移動しペンギンと距離を取っている。手伝いもしないくせに避難するとか卑怯だ。
ペンギンが溜息を吐き、背後の般若を消してレミ達の向かったほうを振り返った。般若はイメージだが。
「……まぁ、溜め込んでたんだろうモノを吐き出せたんだろうし、怒るのは止めとくけど」
レミは『好きでこんな体質になったんじゃない』と言っていた。彼女の事を知っているのはペンギンだけで、だから彼女が何を知っていて、今まで何をやっていたのかを知っているのもペンギンだけだ。
「レミちゃんはさ、なんで空から落ちてきたの?」
前にも一度聞いたような質問をワカメはペンギンへ問い掛ける。ペンギンはレミを抱き締めた時に付いたのだろう服の涙の染みを、意味も無く払って口を開いた。
「あの子は、自分でそれを望んだ訳じゃねぇ。本当はそんな目に遭いたくも無かっただろうし、遭うとも思ってなかったのが、何処の『誰か』も『何か』も分からねぇモノによって、平穏な生活を捨てざるを得なかったんだよ」
「捨てざるを得ないって?」
「俺が初めて会った時は、犯罪者集団に殺されそうになってたよ。……運命なんてものがあるのならそれは、確実にあの子を殺そうとしてるのかもしれねぇ」
吐き捨てる様に言ったペンギンに、もう怒っていないと判断したらしい船長が戻ってくる。
「そんな運命は捨てちまえばいいだろ」
「捨てたくてもあの子にはその力が無ぇんですよ。だから周りに頼るしかねぇ。頼るということは迷惑を掛けるということ。あの子はそれでいいとは思えない。だから謝るんだよシャチ」
唐突に話をシャチへ振ってペンギンが微笑む。ワカメにも覚えがある笑みだった。
多分シャチにも覚えがあるだろう。ペンギンのそれは諭す時に浮かべるそれだった。
防寒帽の影から紫色の目が僅かに見える。
「お前は謝る子じゃなかったけど、卑屈にはなっただろぉ」
「……子、っていうの、やめてくんない?」
「女の子苛めるような奴は子ども扱いで充分だよ。ちゃんと後で謝りなさい」