原作前日常編2
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夢主視点
結論、最近平和過ぎて身体を動かしていなかったのと、レミが現れて意味も無く考え過ぎて迷走し、知らないうちに鬱憤が溜まっていたのだろう。ということにする。
不運だった敵船は船長にだけ僅かな賞金が懸かっていた。それ以外は雑魚なので正直副船長であるシルビが出しゃばる必要は無い。
だが船長から『暴れてこい』というお達しで、わざわざ敵船へ乗り込んで暴れているのである。
元々シルビは暗殺者や傭兵で、考えるよりは身体を動かすほうが好きなのだ。狭い船の上で薬品ばかり扱っていれば、レミが来なかったとしても苛々は募っていただろう。
余裕が無いのはいいことではない。マストを蹴って登り背後から襲い来るカトラスを蹴り折った。ナイフを抜いて跳んできた銃弾の軌道を逸らす。軌道の先にクルーが居ない事は確認済みだ。
思えば朝から怒鳴ったりハリセンで叩いたりとちょっと怒り過ぎていた。
「いやでもさぁ、俺が考えなけりゃ誰が考えんの? レミ少女は絶対考えねぇぜぇ? 船長だってちょっと疑ってるっぽいし、俺としてもハートに何かが起こるのは遠慮して欲しいんだよなぁ」
近くで斧を構えていた敵船員がその呟きを聞いてか引いている。独り言なので突っ込みは遠慮して欲しいが、突っ込む余裕が彼のほうに無かった。ご愁傷様である。
何がレミの因果に巻き込まれるのかを知るのはシルビなら簡単だが、知ってしまった場合更にその知ってしまった未来へ改変が起こる可能性があるという堂々巡り。
いっそのこと何も考えずに流されてしまった方が楽なのかもしれないが、それはそれでシルビが踏ん切りをつけられなかった。
粗方片付いたかと周囲に視線を向け、船員の一人がクルーを撃とうとしている光景が目に映る。しゃがんで避けたのはいいが、何にも当たらなかった弾の先はハートの潜水艦。
「――シャチ! レミ! 避けろぉおお!」
ハートの船の甲板で立ち尽くしているレミが、傍に居たシャチに腕を引っ張られる。そのままよろけたレミがシャチにしがみ付いたまま固まっていた。
シルビは銃を構えて撃った敵船員を撃ち倒す。敵船の船長がイルカに蹴り上げられているのが見えて、シルビは船縁を蹴って船へ戻った。近くにいたクルーへ敵船の財宝を確認しに行くように言いつけてレミの傍へ寄る。
「レミ、レミ少女。シャチが困ってるから腕を離してあげなさい」
「あ……」
言われるまでレミはシャチの腕を掴んでいた事に気付いていたかどうか。レミの顔色は自分が撃たれて死にそうだった事を理解してか、青白くなっている。
「シャチ、一緒に食堂に行って、ココアでも飲ませててくれるかぁ。俺は略奪終わったら行くから」
「それはいいけど、大丈夫なの?」
「一つの島から出る事を考えねぇ、平凡で平和な場所で生きている人には、銃弾が飛んでくることは怖ぇことなんだよ。……バンダナさんもお願いします」
レミの居た現代社会は、一般人は銃を持つ事さえない平和な世界だ。シルビが似た文化基準に生きていた時は普通に武器を持っていたが、レミは木の棒で何かを殴ったのさえ初めてトリップしてからで、シルビどころかこの世界で海賊をしている者達ともすら違う。
ただでさえレミはまだ子供だ。子供なのに色々堪える事を覚えてしまった、哀れな少女だ。
レミが歯を食い縛ってシャチの腕を何とか離し、涙を拭って深呼吸する。
「だ、いじょうぶ、です。ごめんなさい」
「何で謝るんだよ」
シルビがレミの言葉を否定する前に、シャチが先に話しかけた。
「怖いなら仕方ないんだし謝る必要無いじゃん。レミは女の子だしペンギンが言ったみたいに普通の人には怖いんだろ?」
「……でも、あたし足手まといだし」
「そんなの最初からだろ。船の中で迷うし空から降ってきたくせに『穴に落ちた』とか変な事言うし、でも怖いなら怖いって言えばいいだけじゃないのかよ」
「す――好きで怖いって言わない訳じゃないもん!」
木の棒を握り締めてレミが叫ぶ。
「す、好きでこんな体質になったんじゃないもん! 自分からこんな危ない世界になんて来た訳じゃない! 世界を変えるとか、そんな事が出来るなんて思ってない! あたしだって出来る事なら穴に落ちたり空から落ちたり撃たれたり閉じ込められたり魔物に襲われたり踏んづけられたり強姦されそうになんてなりたくなかった! いきなり知らない場所へ放り出されて、それでも戻るのに必死で、なのにあたしは戦えなくて誰かに助けてもらうしかなくて、謝るしか出来ないんだよ! 怖いなんてわがまま言える立場じゃないの!」
「……な」
「怖いって言ってるだけじゃ死んじゃうの! 死んだら戻れるのかなんて分かんないし、シルビさんと違ってずっと何も出来ないままで……あたし、謝るしか出来ない」
吐き出すだけ吐き出して、本格的に泣き出したレミを引き寄せて抱き締めた。
慰めの言葉が掛けられないのが辛い。ただ、言わなくてもやっぱり堪えていたんだなとは思った。
それもそうだろう。彼女は自分の言動一つで世界を変えられる可能性を持っている。
「とりあえずバンダナさん、行き先変更で俺の部屋に連れてってもらえます? レミ少女、行けるなぁ?」
レミの頭を撫でながら言えば、レミは嗚咽を堪えながら頷いた。
結論、最近平和過ぎて身体を動かしていなかったのと、レミが現れて意味も無く考え過ぎて迷走し、知らないうちに鬱憤が溜まっていたのだろう。ということにする。
不運だった敵船は船長にだけ僅かな賞金が懸かっていた。それ以外は雑魚なので正直副船長であるシルビが出しゃばる必要は無い。
だが船長から『暴れてこい』というお達しで、わざわざ敵船へ乗り込んで暴れているのである。
元々シルビは暗殺者や傭兵で、考えるよりは身体を動かすほうが好きなのだ。狭い船の上で薬品ばかり扱っていれば、レミが来なかったとしても苛々は募っていただろう。
余裕が無いのはいいことではない。マストを蹴って登り背後から襲い来るカトラスを蹴り折った。ナイフを抜いて跳んできた銃弾の軌道を逸らす。軌道の先にクルーが居ない事は確認済みだ。
思えば朝から怒鳴ったりハリセンで叩いたりとちょっと怒り過ぎていた。
「いやでもさぁ、俺が考えなけりゃ誰が考えんの? レミ少女は絶対考えねぇぜぇ? 船長だってちょっと疑ってるっぽいし、俺としてもハートに何かが起こるのは遠慮して欲しいんだよなぁ」
近くで斧を構えていた敵船員がその呟きを聞いてか引いている。独り言なので突っ込みは遠慮して欲しいが、突っ込む余裕が彼のほうに無かった。ご愁傷様である。
何がレミの因果に巻き込まれるのかを知るのはシルビなら簡単だが、知ってしまった場合更にその知ってしまった未来へ改変が起こる可能性があるという堂々巡り。
いっそのこと何も考えずに流されてしまった方が楽なのかもしれないが、それはそれでシルビが踏ん切りをつけられなかった。
粗方片付いたかと周囲に視線を向け、船員の一人がクルーを撃とうとしている光景が目に映る。しゃがんで避けたのはいいが、何にも当たらなかった弾の先はハートの潜水艦。
「――シャチ! レミ! 避けろぉおお!」
ハートの船の甲板で立ち尽くしているレミが、傍に居たシャチに腕を引っ張られる。そのままよろけたレミがシャチにしがみ付いたまま固まっていた。
シルビは銃を構えて撃った敵船員を撃ち倒す。敵船の船長がイルカに蹴り上げられているのが見えて、シルビは船縁を蹴って船へ戻った。近くにいたクルーへ敵船の財宝を確認しに行くように言いつけてレミの傍へ寄る。
「レミ、レミ少女。シャチが困ってるから腕を離してあげなさい」
「あ……」
言われるまでレミはシャチの腕を掴んでいた事に気付いていたかどうか。レミの顔色は自分が撃たれて死にそうだった事を理解してか、青白くなっている。
「シャチ、一緒に食堂に行って、ココアでも飲ませててくれるかぁ。俺は略奪終わったら行くから」
「それはいいけど、大丈夫なの?」
「一つの島から出る事を考えねぇ、平凡で平和な場所で生きている人には、銃弾が飛んでくることは怖ぇことなんだよ。……バンダナさんもお願いします」
レミの居た現代社会は、一般人は銃を持つ事さえない平和な世界だ。シルビが似た文化基準に生きていた時は普通に武器を持っていたが、レミは木の棒で何かを殴ったのさえ初めてトリップしてからで、シルビどころかこの世界で海賊をしている者達ともすら違う。
ただでさえレミはまだ子供だ。子供なのに色々堪える事を覚えてしまった、哀れな少女だ。
レミが歯を食い縛ってシャチの腕を何とか離し、涙を拭って深呼吸する。
「だ、いじょうぶ、です。ごめんなさい」
「何で謝るんだよ」
シルビがレミの言葉を否定する前に、シャチが先に話しかけた。
「怖いなら仕方ないんだし謝る必要無いじゃん。レミは女の子だしペンギンが言ったみたいに普通の人には怖いんだろ?」
「……でも、あたし足手まといだし」
「そんなの最初からだろ。船の中で迷うし空から降ってきたくせに『穴に落ちた』とか変な事言うし、でも怖いなら怖いって言えばいいだけじゃないのかよ」
「す――好きで怖いって言わない訳じゃないもん!」
木の棒を握り締めてレミが叫ぶ。
「す、好きでこんな体質になったんじゃないもん! 自分からこんな危ない世界になんて来た訳じゃない! 世界を変えるとか、そんな事が出来るなんて思ってない! あたしだって出来る事なら穴に落ちたり空から落ちたり撃たれたり閉じ込められたり魔物に襲われたり踏んづけられたり強姦されそうになんてなりたくなかった! いきなり知らない場所へ放り出されて、それでも戻るのに必死で、なのにあたしは戦えなくて誰かに助けてもらうしかなくて、謝るしか出来ないんだよ! 怖いなんてわがまま言える立場じゃないの!」
「……な」
「怖いって言ってるだけじゃ死んじゃうの! 死んだら戻れるのかなんて分かんないし、シルビさんと違ってずっと何も出来ないままで……あたし、謝るしか出来ない」
吐き出すだけ吐き出して、本格的に泣き出したレミを引き寄せて抱き締めた。
慰めの言葉が掛けられないのが辛い。ただ、言わなくてもやっぱり堪えていたんだなとは思った。
それもそうだろう。彼女は自分の言動一つで世界を変えられる可能性を持っている。
「とりあえずバンダナさん、行き先変更で俺の部屋に連れてってもらえます? レミ少女、行けるなぁ?」
レミの頭を撫でながら言えば、レミは嗚咽を堪えながら頷いた。