原作前日常編2
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夢主視点
洗濯物も一つの船から出る量は多い。クルーが多ければ個人で出してくるものも多いし、ハートの船は清潔重視な医者の集まりでもあるので、タオルなどはすぐに洗濯へ出される。
別の洗い桶を用意してレミの制服を洗う。制服を、しかも女物を洗うのは久しぶりだが、いずれにせよ普通の洗濯物と同じだ。
「レミ少女。君の洗濯物」
洗い終えて洗濯物干しをしていたレミの元へ持っていけば、レミはワカメと話していた。ワカメは妹が居たから他のクルーよりは女の子の扱いが出来ていると思うが、仕事はサボるなと言いたい。
制服を受け取ったレミが、何かを思い出したようにスカートのポケットをまさぐる。
「……あれ?」
「どしたん?」
「手紙入れっぱなしにしちゃったと思ったんですけど、入ってない……」
「海に落ちた時に出ちゃったんじゃない? 洗濯当番に聞いてこようか?」
「洗ったの俺だよ。ポケットの中には何も入ってなかったぜぇ?」
「ちゃんと確認したんだ……お母さん……」
今日三人目になる失礼な発言にハリセンでワカメの頭を叩く。普段船長を叩く時よりは弱くしたが音はデカかった。
手紙と聞いて思い出したのは、昨夜シャチが持って来たラブレターである。レミの名前が書いてあったのでレミの物だったことは一目瞭然だったが、なるほどポケットに入れっぱなしだからこの世界へ持ってこられたのだろう。
シャチが返しているものだと思っていたが、まだ返していないらしい。
「大事なものだったのかぁ? それなら」
「いえ、無くなっちゃったならいいです。どうせ捨てるつもりだったし」
極々どうでもいいもののように言うが、一応アレはラブレターだったというのに。まぁ好きでも無い相手から貰ったものならいいのかと、女子高生のあっけらかんとしたどうでも良さを実感する。
捨てるつもりだったという発言からして、読みはしても返事をしに行くつもりさえ無かったようだ。
それはそれで失礼だと思うのだが、シルビがそれを言ったら手紙を読んだ事がバレてしまう。プライバシーの問題もあるので黙っていることに決めた。
レミは大して気にした様子も無く制服を干している。が、干し方が杜撰だ。
「……レミ少女。制服はそうやって干すんじゃねぇよ。皺だらけになんだろうがぁ」
「え、アイロン掛けてくれるんでしょう?」
「アイロンをどんだけ過信してんだよ。ほら、貸しなさい。……ワカメ、叩かれる覚悟あんなら言っていいぜぇ」
「ありません! オレ倉庫掃除アルンダッター!」
棒読みで叫んで走っていくワカメは、後でもう一回叩こうと思った。
太陽も中天に昇った頃、昨日やりかけだった薬品の精製を部屋で行なっていたら、やっと起きたらしい船長がやってきた。一度振り返って視線を向ける以外のリアクションを取る事もせずに机へ顔を戻せば、肩にレミの木の棒の先端が乗せられる。
「何です?」
「苛々してると思ってな」
「そうですか?」
振り返れば船長がシルビへ向けて突き出していた木の棒を降ろした。昨日海に落としたので落ちたかもしれないが、それにはレミが撲殺した魔物の血がこびり付いてしまっていたりする。
その血液を採取する事が出来て、試したらこの世界で魔物を生成できるのだろうかとどうでもいい事を考えた。実際にやったらマッドサイエンティストも甚だしい。
船長はそんなシルビの考えになど気付いた様子も無く、木の棒を弄びながらベッドへ腰を降ろす。杖の様に木の棒を突いて両手を乗せる。
「まだ遊覧屋について隠してる事があるだろ」
口調は冗談交じりだが眼が真剣だ。
「どうしてそうお思いに?」
「アイツが言ったのは十年以上前に死んだ人の名前だ。シャチと同じくらいの年頃の遊覧屋が知ってる筈が無え。知ってたとしても、オレとの関係まで分かる筈が無い」
当たり前である。レミの持っている知識は何年前だとかそういうものではなく、『本で読んだ知識』そのものと言っても過言ではない。本に書かれていた事へ年代は然程関係ないだろう。
薬瓶に蓋をしてベッドの方へ身体を向ける。この部屋は座る場所が少ない。
「……気にするな、と言って済む問題ではねぇでしょうねぇ」
「説明できないのか」
答えられなかった。
船長が溜息の様に深く息を吐いて木の棒を脇へ置く。
「今話したいのはそれじゃねェからいいけどな。その『話せない事』があるせいで苛々してんなら吐き出せ」
「だから別に苛々なんて……いえ、そうですね。ちょっと余裕は無ぇかもしれません」
「言ってみろ」
「レミの言動が何を引き起こすのか、それによってクルーや貴方に害が出ねぇか不安です」
シルビはレミのことを『怖い』と船長へ言った。その怖い理由はまだシルビ以外誰にも分からないだろう。今はまだ何も起こっていない。
「そんなに心配なら降りればいいだろ」
「そうしたら、貴方はまたこの船へ乗せてくれますか?」
今度は船長が答えなかった。部屋の外から誰かが走ってくる足音が聞こえる。
「ペンギン! あ、船長も居た。敵船が見えるって見張りが!」
「襲撃するぞ。皆に伝えろ」
「アイアイ!」
返事をしてクルーがまた走っていった。ドアを開けっ放しは止めて欲しいと思ったが、どうせ部屋を出るので今回は許す。
立ち上がった船長が部屋を出るのに続いて、レミに渡すつもりで木の棒を持って部屋を出ると待っていた船長に頭を小突かれた。
「暴れてストレス発散させろ。最近暇だから変なことばっかり考えんだろ」
「変なことですか」
「変なことだな」
洗濯物も一つの船から出る量は多い。クルーが多ければ個人で出してくるものも多いし、ハートの船は清潔重視な医者の集まりでもあるので、タオルなどはすぐに洗濯へ出される。
別の洗い桶を用意してレミの制服を洗う。制服を、しかも女物を洗うのは久しぶりだが、いずれにせよ普通の洗濯物と同じだ。
「レミ少女。君の洗濯物」
洗い終えて洗濯物干しをしていたレミの元へ持っていけば、レミはワカメと話していた。ワカメは妹が居たから他のクルーよりは女の子の扱いが出来ていると思うが、仕事はサボるなと言いたい。
制服を受け取ったレミが、何かを思い出したようにスカートのポケットをまさぐる。
「……あれ?」
「どしたん?」
「手紙入れっぱなしにしちゃったと思ったんですけど、入ってない……」
「海に落ちた時に出ちゃったんじゃない? 洗濯当番に聞いてこようか?」
「洗ったの俺だよ。ポケットの中には何も入ってなかったぜぇ?」
「ちゃんと確認したんだ……お母さん……」
今日三人目になる失礼な発言にハリセンでワカメの頭を叩く。普段船長を叩く時よりは弱くしたが音はデカかった。
手紙と聞いて思い出したのは、昨夜シャチが持って来たラブレターである。レミの名前が書いてあったのでレミの物だったことは一目瞭然だったが、なるほどポケットに入れっぱなしだからこの世界へ持ってこられたのだろう。
シャチが返しているものだと思っていたが、まだ返していないらしい。
「大事なものだったのかぁ? それなら」
「いえ、無くなっちゃったならいいです。どうせ捨てるつもりだったし」
極々どうでもいいもののように言うが、一応アレはラブレターだったというのに。まぁ好きでも無い相手から貰ったものならいいのかと、女子高生のあっけらかんとしたどうでも良さを実感する。
捨てるつもりだったという発言からして、読みはしても返事をしに行くつもりさえ無かったようだ。
それはそれで失礼だと思うのだが、シルビがそれを言ったら手紙を読んだ事がバレてしまう。プライバシーの問題もあるので黙っていることに決めた。
レミは大して気にした様子も無く制服を干している。が、干し方が杜撰だ。
「……レミ少女。制服はそうやって干すんじゃねぇよ。皺だらけになんだろうがぁ」
「え、アイロン掛けてくれるんでしょう?」
「アイロンをどんだけ過信してんだよ。ほら、貸しなさい。……ワカメ、叩かれる覚悟あんなら言っていいぜぇ」
「ありません! オレ倉庫掃除アルンダッター!」
棒読みで叫んで走っていくワカメは、後でもう一回叩こうと思った。
太陽も中天に昇った頃、昨日やりかけだった薬品の精製を部屋で行なっていたら、やっと起きたらしい船長がやってきた。一度振り返って視線を向ける以外のリアクションを取る事もせずに机へ顔を戻せば、肩にレミの木の棒の先端が乗せられる。
「何です?」
「苛々してると思ってな」
「そうですか?」
振り返れば船長がシルビへ向けて突き出していた木の棒を降ろした。昨日海に落としたので落ちたかもしれないが、それにはレミが撲殺した魔物の血がこびり付いてしまっていたりする。
その血液を採取する事が出来て、試したらこの世界で魔物を生成できるのだろうかとどうでもいい事を考えた。実際にやったらマッドサイエンティストも甚だしい。
船長はそんなシルビの考えになど気付いた様子も無く、木の棒を弄びながらベッドへ腰を降ろす。杖の様に木の棒を突いて両手を乗せる。
「まだ遊覧屋について隠してる事があるだろ」
口調は冗談交じりだが眼が真剣だ。
「どうしてそうお思いに?」
「アイツが言ったのは十年以上前に死んだ人の名前だ。シャチと同じくらいの年頃の遊覧屋が知ってる筈が無え。知ってたとしても、オレとの関係まで分かる筈が無い」
当たり前である。レミの持っている知識は何年前だとかそういうものではなく、『本で読んだ知識』そのものと言っても過言ではない。本に書かれていた事へ年代は然程関係ないだろう。
薬瓶に蓋をしてベッドの方へ身体を向ける。この部屋は座る場所が少ない。
「……気にするな、と言って済む問題ではねぇでしょうねぇ」
「説明できないのか」
答えられなかった。
船長が溜息の様に深く息を吐いて木の棒を脇へ置く。
「今話したいのはそれじゃねェからいいけどな。その『話せない事』があるせいで苛々してんなら吐き出せ」
「だから別に苛々なんて……いえ、そうですね。ちょっと余裕は無ぇかもしれません」
「言ってみろ」
「レミの言動が何を引き起こすのか、それによってクルーや貴方に害が出ねぇか不安です」
シルビはレミのことを『怖い』と船長へ言った。その怖い理由はまだシルビ以外誰にも分からないだろう。今はまだ何も起こっていない。
「そんなに心配なら降りればいいだろ」
「そうしたら、貴方はまたこの船へ乗せてくれますか?」
今度は船長が答えなかった。部屋の外から誰かが走ってくる足音が聞こえる。
「ペンギン! あ、船長も居た。敵船が見えるって見張りが!」
「襲撃するぞ。皆に伝えろ」
「アイアイ!」
返事をしてクルーがまた走っていった。ドアを開けっ放しは止めて欲しいと思ったが、どうせ部屋を出るので今回は許す。
立ち上がった船長が部屋を出るのに続いて、レミに渡すつもりで木の棒を持って部屋を出ると待っていた船長に頭を小突かれた。
「暴れてストレス発散させろ。最近暇だから変なことばっかり考えんだろ」
「変なことですか」
「変なことだな」