原作前日常編2
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夢主視点
バンダナに呼ばれた用事を片付けて部屋に戻ると、既にレミはぐっすりと寝ていた。トリップによる興奮と緊張で疲れていたのかもしれない。
見張り番をしに行くのに寒さ対策の外套を持って部屋を出る。食堂に声を掛けてから甲板に出て、鼻水を垂らしていたクルーと見張りを交代した。
昼間は暖かかったが夜ともなれば海の上は寒い。指を鳴らして周囲の空気を活性化させ、暖かくして見張り番についていると誰かが梯子を昇ってくる音がした。
「さむー……くない?」
「見張り当番じゃねぇだろぉ? どうしたシャチ?」
見張り台の空気が暖かいことに不思議がっているのをスルーし、シルビはシャチの座れる場所を作る。外套も羽織らずに来たシャチは長居するつもりはないと思いたい。
隣に座ったシャチがツナギのポケットからグシャグシャの紙を取り出した。水に濡れたのを乾かしたものらしく変に皺の寄った封筒だ。
差し出されたそれを受け取って見ればレミの名前が書かれている。
「木の棒拾いに行った時に、近くにあったから一緒に拾って来たんだけど、何て書いてあんのか分かんね」
「そりゃまぁ、そうかもなぁ」
日本語は主に海軍や世界政府、ワノ国が使う言語で、一般人は何処かの言語だとは思いこそすれ、何て読むのかまでは分からない時があった。ましてや全て日本語で書かれていたら読むのも大変だろう。
一度開けられた様子はあったので、既にレミが読んだ後なのだろう便箋を破かないように取り出す。目を通して、思わず苦笑してしまった。
「読めんの? っていうかそれレミので良かったの?」
「読んでやろうかぁ?」
「うん」
「『アナタのサッパリとした性格に惚れました。友達からでも構わないので付き合ってください』」
「付き合って……、え、これラブレター? マジ?」
驚くのも無理は無いだろう。文面はその後、学校のどこそこで待っているので返事はそこでくれと続いている。断るにしても受け入れるにしても相手に来させる時点で如何なものかと思うが、普通、手紙で呼び出して告白するものなのではとも思った。
なんだか変なラブレターだなと思いつつ便箋を封筒へ戻す。手紙の内容を理解したシャチは、封筒を返されてもまだ動揺していた。
「お前が貰ったんじゃねぇんだぜぇ?」
「わ、分かってるよ! そうじゃなくて……レミってモテるんだ」
「ラブレターを貰うんだし、そうなんじゃねぇの?」
生憎モテる基準が分からない。七股すればいいのかラブレターを一通でも貰えばいいのか。
余談だが前者はシルビの『兄』の話である。
「モテたところで恋人とか作れるとは思えねぇけどなぁ」
「なんで?」
「言っただろぉ。あの子はいきなり『飛ばされちまう』んだよ」
好きな人が出来て、デートとかをしているその最中にトリップする可能性が無いとは言い切れない。トリップ先で万が一死んでしまったら、レミはシルビの様に次に転生するかも分からなかった。
無論シルビだって今この世界はともかく確実に転生するという根拠は無い。そうして死んで、転生できなければそれで終わりだ。
レミとはちょっと事情が違うが二人ともそんな感じで、トリップ先から戻れなかったらと考えていつも不安になっている子が、他人に意識を向けることがあるのだろうかとも思う。せいぜい、誰かを好きでいるだけかもしれない。
「……レミって卑屈だよな」
「卑屈?」
「ペンギンに言われて迎えに行ったじゃん。そん時スゲー必死に助けてくれって頼んでくんの。別に船の中でいける場所限られてんだし、そこまで必死になる必要ないだろ?」
「シャチだって、暗い森の中は怖かっただろぉ?」
シャチが仲間になった頃の事を示唆して言えば、シャチが顔を上げる。いくら空気を暖かくしているといっても、外套を羽織っていない姿は寒そうに見えた。
「あの子にとって、周りは全部怖いものなんだろうなぁ」
原作を知っていようと、未来に何が起こるか知っていようと怖いものは怖い。むしろ知っているからこそ怖い時だってあるだろう。
羽織っていた外套を脱いでシャチへ被せ、シルビはシャチの頭を撫でた。
「気になるなら仲良くしてあげなさい。せっかく歳が近けぇんだし、俺よりきっと安心するだろぉ」
風邪を引くからとシャチに見張り台から戻るように言う。シャチは考えているようだったが、素直にシルビの外套を羽織って見張り台から降りて行った。
船内へ戻るシャチを見送って、シルビは見張りを再開しつつ考える。ラブレターの事ではない。
レミは『何か』をする為にトリップした。そしてそのトリップする場所や関わる人物などは、その『何か』に関わっている場合が多い。
だとしたらハートの船に乗る事になったレミの今回のトリップ理由は、ハートの船に関わる事なのではないのか。シルビの居場所は関係ない。あるのはレミの言動と、それによって起こる何かだ。
「……ハートの誰かが怪我する、とかだったら困るなぁ」
一人ごちるが可能性はある。とりあえず他のクルーならどうでもいいという訳ではないが、最悪船長は絶対に負傷させたくない。
一人こっそり、気を配っていた方がいいのかもシルビには分からなかった。
バンダナに呼ばれた用事を片付けて部屋に戻ると、既にレミはぐっすりと寝ていた。トリップによる興奮と緊張で疲れていたのかもしれない。
見張り番をしに行くのに寒さ対策の外套を持って部屋を出る。食堂に声を掛けてから甲板に出て、鼻水を垂らしていたクルーと見張りを交代した。
昼間は暖かかったが夜ともなれば海の上は寒い。指を鳴らして周囲の空気を活性化させ、暖かくして見張り番についていると誰かが梯子を昇ってくる音がした。
「さむー……くない?」
「見張り当番じゃねぇだろぉ? どうしたシャチ?」
見張り台の空気が暖かいことに不思議がっているのをスルーし、シルビはシャチの座れる場所を作る。外套も羽織らずに来たシャチは長居するつもりはないと思いたい。
隣に座ったシャチがツナギのポケットからグシャグシャの紙を取り出した。水に濡れたのを乾かしたものらしく変に皺の寄った封筒だ。
差し出されたそれを受け取って見ればレミの名前が書かれている。
「木の棒拾いに行った時に、近くにあったから一緒に拾って来たんだけど、何て書いてあんのか分かんね」
「そりゃまぁ、そうかもなぁ」
日本語は主に海軍や世界政府、ワノ国が使う言語で、一般人は何処かの言語だとは思いこそすれ、何て読むのかまでは分からない時があった。ましてや全て日本語で書かれていたら読むのも大変だろう。
一度開けられた様子はあったので、既にレミが読んだ後なのだろう便箋を破かないように取り出す。目を通して、思わず苦笑してしまった。
「読めんの? っていうかそれレミので良かったの?」
「読んでやろうかぁ?」
「うん」
「『アナタのサッパリとした性格に惚れました。友達からでも構わないので付き合ってください』」
「付き合って……、え、これラブレター? マジ?」
驚くのも無理は無いだろう。文面はその後、学校のどこそこで待っているので返事はそこでくれと続いている。断るにしても受け入れるにしても相手に来させる時点で如何なものかと思うが、普通、手紙で呼び出して告白するものなのではとも思った。
なんだか変なラブレターだなと思いつつ便箋を封筒へ戻す。手紙の内容を理解したシャチは、封筒を返されてもまだ動揺していた。
「お前が貰ったんじゃねぇんだぜぇ?」
「わ、分かってるよ! そうじゃなくて……レミってモテるんだ」
「ラブレターを貰うんだし、そうなんじゃねぇの?」
生憎モテる基準が分からない。七股すればいいのかラブレターを一通でも貰えばいいのか。
余談だが前者はシルビの『兄』の話である。
「モテたところで恋人とか作れるとは思えねぇけどなぁ」
「なんで?」
「言っただろぉ。あの子はいきなり『飛ばされちまう』んだよ」
好きな人が出来て、デートとかをしているその最中にトリップする可能性が無いとは言い切れない。トリップ先で万が一死んでしまったら、レミはシルビの様に次に転生するかも分からなかった。
無論シルビだって今この世界はともかく確実に転生するという根拠は無い。そうして死んで、転生できなければそれで終わりだ。
レミとはちょっと事情が違うが二人ともそんな感じで、トリップ先から戻れなかったらと考えていつも不安になっている子が、他人に意識を向けることがあるのだろうかとも思う。せいぜい、誰かを好きでいるだけかもしれない。
「……レミって卑屈だよな」
「卑屈?」
「ペンギンに言われて迎えに行ったじゃん。そん時スゲー必死に助けてくれって頼んでくんの。別に船の中でいける場所限られてんだし、そこまで必死になる必要ないだろ?」
「シャチだって、暗い森の中は怖かっただろぉ?」
シャチが仲間になった頃の事を示唆して言えば、シャチが顔を上げる。いくら空気を暖かくしているといっても、外套を羽織っていない姿は寒そうに見えた。
「あの子にとって、周りは全部怖いものなんだろうなぁ」
原作を知っていようと、未来に何が起こるか知っていようと怖いものは怖い。むしろ知っているからこそ怖い時だってあるだろう。
羽織っていた外套を脱いでシャチへ被せ、シルビはシャチの頭を撫でた。
「気になるなら仲良くしてあげなさい。せっかく歳が近けぇんだし、俺よりきっと安心するだろぉ」
風邪を引くからとシャチに見張り台から戻るように言う。シャチは考えているようだったが、素直にシルビの外套を羽織って見張り台から降りて行った。
船内へ戻るシャチを見送って、シルビは見張りを再開しつつ考える。ラブレターの事ではない。
レミは『何か』をする為にトリップした。そしてそのトリップする場所や関わる人物などは、その『何か』に関わっている場合が多い。
だとしたらハートの船に乗る事になったレミの今回のトリップ理由は、ハートの船に関わる事なのではないのか。シルビの居場所は関係ない。あるのはレミの言動と、それによって起こる何かだ。
「……ハートの誰かが怪我する、とかだったら困るなぁ」
一人ごちるが可能性はある。とりあえず他のクルーならどうでもいいという訳ではないが、最悪船長は絶対に負傷させたくない。
一人こっそり、気を配っていた方がいいのかもシルビには分からなかった。