原作前日常編2
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夢主視点
「まぁ、君の知ってる潜水艦とこの船は違うからなぁ」
「潜水艦乗ったの初めてですよ」
「でも見たこととかはあるだろぉ?」
レミの世界はシルビが数回生きたことのある世界に近いので文化基準は似ているはずだ。それなら一般人は乗れないが潜水艦はあった筈である。船内は重要機密だったはずだが、時々テレビ番組とかで多少は明かされていた。
ハートの船に比べると随分と狭苦しい船だったが、偵察行動が主な目的の船で海賊とは違う。
ベポがレミの為にココアを持って来て船長の隣へ座った。船長がレミをシルビの隣へ座るように促し、レミが座ると頬杖を突いて見つめている。
目の下の隈や元来の雰囲気で怖がられやすいことを自覚しているくせに、今は意図してレミを怯えさせていた。
「船長、彼女怯えてます」
「わざとだ」
その会話の意味に気付いたのか、レミが真っ直ぐ船長を見返す。そういう事をすると気に入られるだけなのだが。
「度胸だけはあるらしいな」
「……ありがとうございます」
お礼を言うレミへ更に機嫌を良くしている船長に、シルビは呆れて溜息を吐いた。
「あまりこの子を苛めねぇほうがいいですよ船長。レミ少女は俺達が知らねぇことを知ってたりしますから」
「情報収集が得意なのか?」
「ちょっと違いますね。『知ってることは知っているが知らないことは知らない』?」
「何故に『化物語』ですか。っていうかペンギンさん知ってるんですね」
「読んだ事があるだけだぁ」
ここではない世界での書物の話は、当然ながら船長には分からない。シルビとしてはレミの世界にもあったことが意外で、尚且つレミがそれを読んだ事があるという事実に内心驚いた。小説だったのでレミは読んでいないと思ったのだが、実は意外と読書家なのか。
「何の話だ?」
「それじゃ一つ。レミ少女、船長しか知らない筈の何か知ってたりするかぁ?」
「えーと……あ、と怒らないでくれますか?」
「言ってみろ」
怒らないという言質を取ってから、それでもレミは直ぐにシルビの後ろへ隠れられるように身構える。
「『コラソン』さん」
「――!?」
言葉を無くし椅子を蹴倒して立ち上がった船長の、その反応に内心驚いた。スペイン語でハートを示すそれが誰かの事だというのは分かったが、シルビにはそれ以外分からない。
ただ船長の様子からして、船長とは浅はかならぬ関係の者なのだろう。
結局何も言わずに椅子を戻して座った船長は、レミを見つめたままだ。
「……“遊覧屋”、お前」
「言ったでしょう? 苛めると良くねぇって」
「お、おおお、怒らないって、約束したのにっ」
「……怒ってねえだろうが。だが“それ”は誰にも漏らすなよ。ペンギンにもだ」
「は、はいっ! ごめんなさい船長さん!」
本当に誰の事なのか。聞きたいような気もしたが、シルビにも言うなという忠告をしているところを見てしまっては、本当に重要な相手なのかと思い直して尋ねるのは止めた。
念の為覚えておこうとは思う。もしかしたらシルビにとっての『兄さん』か、逆に父親の様ないずれにせよ強い感情を向ける相手なのだとしたら、この船に乗って副船長でいるうちは覚えておいてもきっと損は無い。
掴んでいたシルビの腕を離したレミを振り返り、話題を変える。
「他に何知ってるんだぁ?」
「おいコラペンギン」
「え、えと、ゴールド・ロジャーは本当は『ゴール・D・ロジャー』ですよね」
「え、そうなの?」
ベポが聞いてくるのにレミが頷く。確かにロジャーの名前はそれが正しい。しかし今は世界政府が『D』のことを世間へ知らしめたくなくて故意に『ゴールド』と広めていた。
それはレミが『漫画』から得た知識なのだろう。なるほどレミの世界で描かれている『漫画』は確かにこの世界を舞台としているらしい。
「ペンギーン! バンダナが呼んでるよー」
食堂の入り口からクルーがシルビを呼ぶ。それで話は終わりだという意味も込めて立ち上がり、ふと思い出してベポを見た。
「ベポ、レミ少女を俺の部屋に案内してあげてくれるかぁ? レミ少女。君はこの船に乗ってる間俺の部屋で寝なさい。君の為だけに個室を用意するのも大変だし、かといって女の子だからクルーと一緒は心配だからなぁ」
この船に居る間、レミの寝る場所はシルビと一緒でいいだろう。今までにも一緒に寝た事はあるから気にしないだろうし、そもそも気絶していたとはいえ既に一度シルビのベッドで寝ている。
食堂を出たところでシルビを呼びに来て、今の会話を聞いていたらしいクルーが変な顔をしていた。
「んだぁ?」
「ペンギンってさ、時々突拍子が無いっていうか、デリカシー? 無いのな」
「じゃああの子を野郎の寝室に放り込めってかぁ?」
「そうじゃなくてさー。せめて部屋を明け渡してペンギンが違う場所で寝るとか」
「……明日からそうする。今日は夜番だしぃ」
「もしかして考えついてなかった?」
図星なので黙ることにする。レミの安全ばかり気にしていた。
「っていうかベポと寝かせりゃいいのかぁ? ベポは人間の女の子に興味無ぇし」
「それはレミちゃんに聞いてからのほうがいいと思うよ。シロクマだよ?」
「あの子ライオンよりデカイ肉食獣に寄りかかって寝た事あるぞぉ?」
「……意外と度胸あるね」
レミ曰く、ライガクイーンよりベポのほうがモフモフらしいが。
「まぁ、君の知ってる潜水艦とこの船は違うからなぁ」
「潜水艦乗ったの初めてですよ」
「でも見たこととかはあるだろぉ?」
レミの世界はシルビが数回生きたことのある世界に近いので文化基準は似ているはずだ。それなら一般人は乗れないが潜水艦はあった筈である。船内は重要機密だったはずだが、時々テレビ番組とかで多少は明かされていた。
ハートの船に比べると随分と狭苦しい船だったが、偵察行動が主な目的の船で海賊とは違う。
ベポがレミの為にココアを持って来て船長の隣へ座った。船長がレミをシルビの隣へ座るように促し、レミが座ると頬杖を突いて見つめている。
目の下の隈や元来の雰囲気で怖がられやすいことを自覚しているくせに、今は意図してレミを怯えさせていた。
「船長、彼女怯えてます」
「わざとだ」
その会話の意味に気付いたのか、レミが真っ直ぐ船長を見返す。そういう事をすると気に入られるだけなのだが。
「度胸だけはあるらしいな」
「……ありがとうございます」
お礼を言うレミへ更に機嫌を良くしている船長に、シルビは呆れて溜息を吐いた。
「あまりこの子を苛めねぇほうがいいですよ船長。レミ少女は俺達が知らねぇことを知ってたりしますから」
「情報収集が得意なのか?」
「ちょっと違いますね。『知ってることは知っているが知らないことは知らない』?」
「何故に『化物語』ですか。っていうかペンギンさん知ってるんですね」
「読んだ事があるだけだぁ」
ここではない世界での書物の話は、当然ながら船長には分からない。シルビとしてはレミの世界にもあったことが意外で、尚且つレミがそれを読んだ事があるという事実に内心驚いた。小説だったのでレミは読んでいないと思ったのだが、実は意外と読書家なのか。
「何の話だ?」
「それじゃ一つ。レミ少女、船長しか知らない筈の何か知ってたりするかぁ?」
「えーと……あ、と怒らないでくれますか?」
「言ってみろ」
怒らないという言質を取ってから、それでもレミは直ぐにシルビの後ろへ隠れられるように身構える。
「『コラソン』さん」
「――!?」
言葉を無くし椅子を蹴倒して立ち上がった船長の、その反応に内心驚いた。スペイン語でハートを示すそれが誰かの事だというのは分かったが、シルビにはそれ以外分からない。
ただ船長の様子からして、船長とは浅はかならぬ関係の者なのだろう。
結局何も言わずに椅子を戻して座った船長は、レミを見つめたままだ。
「……“遊覧屋”、お前」
「言ったでしょう? 苛めると良くねぇって」
「お、おおお、怒らないって、約束したのにっ」
「……怒ってねえだろうが。だが“それ”は誰にも漏らすなよ。ペンギンにもだ」
「は、はいっ! ごめんなさい船長さん!」
本当に誰の事なのか。聞きたいような気もしたが、シルビにも言うなという忠告をしているところを見てしまっては、本当に重要な相手なのかと思い直して尋ねるのは止めた。
念の為覚えておこうとは思う。もしかしたらシルビにとっての『兄さん』か、逆に父親の様ないずれにせよ強い感情を向ける相手なのだとしたら、この船に乗って副船長でいるうちは覚えておいてもきっと損は無い。
掴んでいたシルビの腕を離したレミを振り返り、話題を変える。
「他に何知ってるんだぁ?」
「おいコラペンギン」
「え、えと、ゴールド・ロジャーは本当は『ゴール・D・ロジャー』ですよね」
「え、そうなの?」
ベポが聞いてくるのにレミが頷く。確かにロジャーの名前はそれが正しい。しかし今は世界政府が『D』のことを世間へ知らしめたくなくて故意に『ゴールド』と広めていた。
それはレミが『漫画』から得た知識なのだろう。なるほどレミの世界で描かれている『漫画』は確かにこの世界を舞台としているらしい。
「ペンギーン! バンダナが呼んでるよー」
食堂の入り口からクルーがシルビを呼ぶ。それで話は終わりだという意味も込めて立ち上がり、ふと思い出してベポを見た。
「ベポ、レミ少女を俺の部屋に案内してあげてくれるかぁ? レミ少女。君はこの船に乗ってる間俺の部屋で寝なさい。君の為だけに個室を用意するのも大変だし、かといって女の子だからクルーと一緒は心配だからなぁ」
この船に居る間、レミの寝る場所はシルビと一緒でいいだろう。今までにも一緒に寝た事はあるから気にしないだろうし、そもそも気絶していたとはいえ既に一度シルビのベッドで寝ている。
食堂を出たところでシルビを呼びに来て、今の会話を聞いていたらしいクルーが変な顔をしていた。
「んだぁ?」
「ペンギンってさ、時々突拍子が無いっていうか、デリカシー? 無いのな」
「じゃああの子を野郎の寝室に放り込めってかぁ?」
「そうじゃなくてさー。せめて部屋を明け渡してペンギンが違う場所で寝るとか」
「……明日からそうする。今日は夜番だしぃ」
「もしかして考えついてなかった?」
図星なので黙ることにする。レミの安全ばかり気にしていた。
「っていうかベポと寝かせりゃいいのかぁ? ベポは人間の女の子に興味無ぇし」
「それはレミちゃんに聞いてからのほうがいいと思うよ。シロクマだよ?」
「あの子ライオンよりデカイ肉食獣に寄りかかって寝た事あるぞぉ?」
「……意外と度胸あるね」
レミ曰く、ライガクイーンよりベポのほうがモフモフらしいが。