原作前日常編2
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夢主視点
ベポとイルカに頼んで何枚も持って来てもらったタオルを、先ほどまでは船長が寛いでいたシルビのベッドへ敷き、その上に少女を寝かせる。空から降ってきて海へ落ちたにしては水を飲んでもいないので、そのうち目が覚めるだろう。
とりあえず寝かせて、シルビは部屋の外で待っていた船長に向き合った。廊下の先では他のクルー達がコチラの様子を窺っていたが、それはシルビが彼女を知っている様子を見せたからだろう。これから話す事はそれに関係しているので、無理に追い払うつもりも無かった。
「あの子は、俺がこの船へ乗る前に会った事のある子なんです」
「旅の医者だった頃か」
「医者じゃねぇです薬師です。それはまぁどうでもいいですけど。悪魔の実の能力者では無ぇんですけどちょっと変わった特質を持つ子でして、自分の意思とは関係なくいきなり違う場所へ飛ばされたりする子なんですよ」
「……飛ばされる?」
怪訝そうな顔をする船長にどう説明したものか。シルビだって流石に知り合いに彼女の事を話す羽目になるなんて思っていなかった。
彼女、レミはいわゆる『トリップ少女』だ。
自分の意思とは全く関係なく、ある日突然異世界へ飛ばされる。その世界で彼女が何かをするか、何かをされる事などの一定条件を満たす事によってでしか彼女は元の世界へ戻れない。そしてその条件は明確に分かるものではないので、結果的に彼女は条件を満たすまでひたすらその世界で生きねばならなくなる。
しかしながら彼女は非力で、シルビの様に『大いなる全知の亜種』なんて変なものでもなければ何か魔法が使えるなんてこともない、ごく普通の少女だった。それ故にトリップ先で死ぬ危険が絶えず存在している。
シルビはそんな彼女を危険から守るという約束をしていた。本来は別の者から頼まれたものだが、頼んだ相手などより『少女を守る』という約束が大事なのでどうでもいい。
問題は、彼女がこの世界へ来た以上シルビは『彼女を守らねばならない』事だ。
「彼女は無力で、自分の身を守る術どころか世間知らずなところもあるので、出会ったときはいつも俺が守るって約束してあるんですが、今の俺はこの船の副船長です」
船長は黙って続きの言葉を待っていて、むしろ廊下の影で盗み聞きしているクルー達のほうが煩い。
「ですから船長、迷惑だしわがままだとは分かっているのですが、彼女を当分この船へ乗せていてもいいでしょうか」
「……それは、あの女に関する責任を全部お前が取るって事か」
「はい」
レミについて知っているのはシルビだけで、もしシルビが知り合いでなかったらレミは意識を取り戻す前に拘束され、意識を取り戻してから尋問の一つでもされていただろう。海賊なのだから安易な見知らぬ者の乗船は認められない。
その理を今のシルビは副船長という役柄でありながら捻じ曲げている。最悪シルビもろとも船を降ろされても文句は言えないだろう。
けれども。
「俺は彼女が目の前にいる場合、彼女の安全を優先します」
「理由は? まさか好きな女だとかじゃないだろうな」
「彼女の言動が怖いからですよ。そんな馬鹿みてぇな理由じゃありません」
「怖い?」
「ええ、怖いです」
ローはシルビの言葉に怪訝そうにしていた。コレばかりは実際に目の前で聞いてその後の結果を確認しなければ分からないだろう。
彼女のトリップする条件は、その世界の『何か』を変えるのだ。彼女の存在は『改変する』もの。
故に彼女の言動一つとっても世界に何が起こるのか分からない。当人は気付いてはいないが彼女のたった一言の言葉で、世界が壊れる可能性だってある。
シルビが『怖い』と評したからか、ローは彼女に興味を持ったらしい。
「邪魔だと思ったら海のど真ん中でも、お前と一緒に降ろすからな」
「そうしてください。俺だって貴方に迷惑を掛けるのは本意じゃねぇ」
「その割にはあの女を降ろさせねェんだろ。良い様に使いやがって」
「貴方だって俺を良いように使ってるでしょうがぁ。たまには俺のわがままも聞いてください」
「見返りは」
「……貴方が欲しがってた最新型の心電図。俺の財布から買いましょう」
「あ、ペンギンオレオーブンも欲しい! むしろ心電図より先にオーブン!」
盗み聞きしていた料理番が思わずといった様子で名乗り出てくる。周りのクルーが慌てて引っ込めさせようとしているが、最初から気付いていただけあって怒る気にもなれない。
船長が視線を向けてくるので、諦めて肩を竦める。
「いいとよ。良かったな」
「やったー!」
ガッツポーズをする料理番に自分も欲しい物があるクルー達が羨ましがっていたが、そこまで買ってやるつもりは無かった。船長の心電図はともかくオーブンならシルビだって時々使うし、そもそも船の共用財産の一つなので言ってくれれば自腹を切らずとも備蓄から予算を出す。
今回はシルビのわがままを聞いてもらう形なので自腹でもいいが。
「目を覚まして、説明終わったら顔を見させに来いよ」
「当たり前です。むしろ会わねぇなんて言い出したら叩きますよ貴方」
部屋に戻ると目を覚ます少し前なのか、レミがベッドの上で唸っていた。
ベポとイルカに頼んで何枚も持って来てもらったタオルを、先ほどまでは船長が寛いでいたシルビのベッドへ敷き、その上に少女を寝かせる。空から降ってきて海へ落ちたにしては水を飲んでもいないので、そのうち目が覚めるだろう。
とりあえず寝かせて、シルビは部屋の外で待っていた船長に向き合った。廊下の先では他のクルー達がコチラの様子を窺っていたが、それはシルビが彼女を知っている様子を見せたからだろう。これから話す事はそれに関係しているので、無理に追い払うつもりも無かった。
「あの子は、俺がこの船へ乗る前に会った事のある子なんです」
「旅の医者だった頃か」
「医者じゃねぇです薬師です。それはまぁどうでもいいですけど。悪魔の実の能力者では無ぇんですけどちょっと変わった特質を持つ子でして、自分の意思とは関係なくいきなり違う場所へ飛ばされたりする子なんですよ」
「……飛ばされる?」
怪訝そうな顔をする船長にどう説明したものか。シルビだって流石に知り合いに彼女の事を話す羽目になるなんて思っていなかった。
彼女、レミはいわゆる『トリップ少女』だ。
自分の意思とは全く関係なく、ある日突然異世界へ飛ばされる。その世界で彼女が何かをするか、何かをされる事などの一定条件を満たす事によってでしか彼女は元の世界へ戻れない。そしてその条件は明確に分かるものではないので、結果的に彼女は条件を満たすまでひたすらその世界で生きねばならなくなる。
しかしながら彼女は非力で、シルビの様に『大いなる全知の亜種』なんて変なものでもなければ何か魔法が使えるなんてこともない、ごく普通の少女だった。それ故にトリップ先で死ぬ危険が絶えず存在している。
シルビはそんな彼女を危険から守るという約束をしていた。本来は別の者から頼まれたものだが、頼んだ相手などより『少女を守る』という約束が大事なのでどうでもいい。
問題は、彼女がこの世界へ来た以上シルビは『彼女を守らねばならない』事だ。
「彼女は無力で、自分の身を守る術どころか世間知らずなところもあるので、出会ったときはいつも俺が守るって約束してあるんですが、今の俺はこの船の副船長です」
船長は黙って続きの言葉を待っていて、むしろ廊下の影で盗み聞きしているクルー達のほうが煩い。
「ですから船長、迷惑だしわがままだとは分かっているのですが、彼女を当分この船へ乗せていてもいいでしょうか」
「……それは、あの女に関する責任を全部お前が取るって事か」
「はい」
レミについて知っているのはシルビだけで、もしシルビが知り合いでなかったらレミは意識を取り戻す前に拘束され、意識を取り戻してから尋問の一つでもされていただろう。海賊なのだから安易な見知らぬ者の乗船は認められない。
その理を今のシルビは副船長という役柄でありながら捻じ曲げている。最悪シルビもろとも船を降ろされても文句は言えないだろう。
けれども。
「俺は彼女が目の前にいる場合、彼女の安全を優先します」
「理由は? まさか好きな女だとかじゃないだろうな」
「彼女の言動が怖いからですよ。そんな馬鹿みてぇな理由じゃありません」
「怖い?」
「ええ、怖いです」
ローはシルビの言葉に怪訝そうにしていた。コレばかりは実際に目の前で聞いてその後の結果を確認しなければ分からないだろう。
彼女のトリップする条件は、その世界の『何か』を変えるのだ。彼女の存在は『改変する』もの。
故に彼女の言動一つとっても世界に何が起こるのか分からない。当人は気付いてはいないが彼女のたった一言の言葉で、世界が壊れる可能性だってある。
シルビが『怖い』と評したからか、ローは彼女に興味を持ったらしい。
「邪魔だと思ったら海のど真ん中でも、お前と一緒に降ろすからな」
「そうしてください。俺だって貴方に迷惑を掛けるのは本意じゃねぇ」
「その割にはあの女を降ろさせねェんだろ。良い様に使いやがって」
「貴方だって俺を良いように使ってるでしょうがぁ。たまには俺のわがままも聞いてください」
「見返りは」
「……貴方が欲しがってた最新型の心電図。俺の財布から買いましょう」
「あ、ペンギンオレオーブンも欲しい! むしろ心電図より先にオーブン!」
盗み聞きしていた料理番が思わずといった様子で名乗り出てくる。周りのクルーが慌てて引っ込めさせようとしているが、最初から気付いていただけあって怒る気にもなれない。
船長が視線を向けてくるので、諦めて肩を竦める。
「いいとよ。良かったな」
「やったー!」
ガッツポーズをする料理番に自分も欲しい物があるクルー達が羨ましがっていたが、そこまで買ってやるつもりは無かった。船長の心電図はともかくオーブンならシルビだって時々使うし、そもそも船の共用財産の一つなので言ってくれれば自腹を切らずとも備蓄から予算を出す。
今回はシルビのわがままを聞いてもらう形なので自腹でもいいが。
「目を覚まして、説明終わったら顔を見させに来いよ」
「当たり前です。むしろ会わねぇなんて言い出したら叩きますよ貴方」
部屋に戻ると目を覚ます少し前なのか、レミがベッドの上で唸っていた。