ロー視点

泣きながら部屋へ飛び込んできては、寝台の上に寝転がっていたローの腹に飛び掛ってきたベポにローは一瞬息が詰まった。
最近大きくなってきたベポはしかし、まだまだ甘えたで感情が高ぶった時は自分の大きさを忘れて小さい頃と同じ勢いをつけてしまう。そのうち理解して制御出来るようになるとペンギンが言っていたので信用して何も言わないでいるが、よく考えると勢いをつけて飛び掛られるのはペンギンを除けば殆どがローなので、被害に会うのもローだった。

「っ……ベポ、思い切り腹に乗るなと」

それでも怒らず注意するように話しかけるも、ベポはローの言葉など聞いていないとばかりにしがみ付いて泣いている。何か泣くような事があったのかと尋ねるより先に落ち着かせるべきかと、読んでいた本を置いて起き上がりベポを撫でた。
こういう時真っ先に説明か宥めに来るであろうペンギンが来ない事を不思議に思ったが、ペンギンにだって都合があるだろう。
次第に落ち着いて泣き声が落ち着いてきたのを待って、ベポの頭を軽く叩く。

「何があったんだ？」
「……っ、ペ、ペンギンが、船室で寝ろって」

それはお前、そろそろ人とシロクマが寝るのにはあの部屋のベッドが小さいからだろ。とは言えなかった。
ローの部屋である船長室のベッドだって、ペンギンの部屋にあるものよりは大きいがベポと一緒に寝ろと言われたら窮屈に思うだろう。そろそろベポも一つのベッドを一人で使ったほうがいい程度には成長している。

「ベポは一人じゃ寝れないのか」
「寝れるよ！ 寝れるけど……」
「そうだな。今までにもシャチ達の船室で寝たりしてるしな。だったらペンギンのベッドが一人用だとも知ってんだろ。ペンギンがそう言ったのは別にベポと寝るのが嫌になった訳じゃなく、お前が狭い場所で寝るのが辛いだろうからじゃねェのか？」
「……でも、ペンギンと一緒がいい」
「じゃあペンギンに頼んで、一人で寝れるようになるまでは船室で一緒に寝てもらえばいいだろ。お前も海賊なんだからいつまでも母親と一緒に寝るな」
「……ペンギンはおかあさんじゃないよ？」
「そうだな。でもお前は海賊だろ？ オレの船の」
「うん……」

ぐずる様に鼻を啜ったベポの頭をもう一度撫でて、問題は一応解決したと思うことにする。馬鹿正直に部屋とベッドが狭いからだろなんて言える訳が無いが、おそらくローの考えで合っている筈だ。
それにしても、彼の発言が原因とは言え、追いかけてこないペンギンに珍しいと思った。