原作前日常編
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夢主視点
上陸した町の酒場で夕食を摂り隠しておいた船へ戻る途中、シルビは前方の森の中にふと見知らぬ気配を覚えた。
トラファルガー・ローへ勧誘されて彼の船へ乗り、暫く経っている。
懸賞金が懸かっているローのせいで昔ほどではないが賞金稼ぎへ襲われることが増え、女顔であるせいかシルビへと向かってくる雑魚が鬱陶しく、防寒帽を被るようになったのは前の島からだ。
まだシルビも含めて三人しかいないハートの海賊団はクルー集めに難儀しているものの、面倒事へ巻き込まれてはいない。年単位ではあれど短期旅行のつもりで島を出て来た為、いつかは故郷へ帰らなければならないのだが、近くにいてこそ分かるローの海賊船船長としての成長を見ているのも面白かった。
なので故郷へは、グランドラインを進むのであればいつかは近くを通るだろうしその時里帰りすれば良いかと楽観視している。いつでもローを見限って船を降りられるという余裕もあった。
とはいえシルビが近くにいるというのに、途中でローが無様に殺されてしまうのは面白くないし、自分がロー一人も守れやしないと思われるのは業腹である。
そう思って見知らぬ気配に注意してみれば、まだ遠いのでローもバンダナも気付いていないようだったが、気配も足音も殺せていない。
一応ローは賞金首であるので、その命を狙ってくる者は今までにもいた。手配書の写真でローを優男と誤認して掛かってくる考えの浅い者もいたが、こんなにも素人臭い賞金稼ぎは初めてだ。
むしろ初めて獲物を見つけたのかと思うくらいで、その実力でシルビが近くにいるローを狙うのは無謀すぎると思わず笑いが零れる。
「思い出し笑いかい?」
「いえ、……初心者賞金稼ぎが付いて来てるんです」
バンダナに聞かれて歩き続けながら答えた。
「へえ。……オレには分かんないけどねぇ?」
「まだ距離が遠いですから。どうします?」
「せっかくだし、顔でも見とくか」
隣を歩いていたローの言葉に、シルビはバンダナと視線を交わしてから靴紐を結びなおすフリをしてしゃがむ。二人は構わず歩いていく。
気配が確実にローだけに的を絞って、立ち止まったシルビなど意識すらしていないのを確認しシルビは脇の茂みへと入った。そこから木の上へと登り、枝を伝って歩いているローとバンダナを追い越す。
フクロウが慌てて飛び退けていくのを尻目に、茂みの中で息を殺しているらしい青年を見つけ、その背後へと音を立てずに降り立った。余程ローを倒す事へ集中しているのか、後ろへ立っても青年は気付かない。コレじゃ賞金稼ぎですら無いなと思ったところで、ロー達がのんびりと歩いてきた。
茂みから出ようとした青年の背中を蹴り飛ばし、道へと転がす。
カラン、と転がったのは青年が握っていた棍棒だ。そんなモノで賞金首の海賊に襲い掛かろうとしていたのかと、青年の背中へ足を乗せて抑え込みながらシルビは呆れた。
青年はいきなり蹴飛ばされた事にも、踏みつけられて立てないことにも驚いており、ローがそれを見下ろしながら声を殺して笑っている。
「! っくそ! 放せ!」
「放せといって放す海賊は居ねぇよ」
「放せ! オレはソイツを倒して賞金を手に入れるんだ!」
「目標はでかくていいと思うんだけどねぇ。ウチらも船長倒されたら困るんだよ」
バンダナも近付いてきて青年の顔のすぐ傍へ足を踏み降ろした。たったそれだけのことで黙る青年に、今度こそローが声を出して笑う。青年を逆撫でするようなことをするなとも思うが、この場合は仕方ないかもしれない。
笑われた青年は地べたからローを睨んでいる。その目に涙が溜まり、溢れて地面を濡らすのにバンダナが瞠目した。シルビも思わず抑えている足を僅かに浮かせる。
まさかこの程度で泣くとは。ローがニヤニヤと笑いながらしゃがんでその顔を覗き込む。
「オレを捕まえて、金を手に入れたらどうするつもりだったんだ?」
「い、妹とこの島を出て行くんだっ」
「妹がいるのか」
弱みにも繋がる家族のことをそう簡単に話しては駄目だろう。
「こんな遅い時間に出歩いてちゃ妹さん心配しないかい?」
「もう寝てる時間だから大丈夫だよ! っていうか海賊の癖して人ん家の心配するな!」
「言われてるぞバンダナ」
からかうように言ってローは青年を見下ろし、それからシルビへと視線を向けた。何が言いたいのかを理解して、青年に気付かれないように小さく息を吐く。
「殺せ」
「了解、船長」
片足を乗せたまましゃがんでナイフを首筋へ押し当てると、青年は信じられないというように暴れだした。
「なっ!? ま、待てっ、待ってくっ……!」
下手に暴れたら自ら首を切ってしまうことになるとは思わないのか。この様子だと首筋へ押し当てられているのが峰の部分だとも気付いていなそうだ。
死に物狂いで暴れる勢いが付いたところで、シルビは青年を抑えていられなくなったフリをして青年の背中から足を降ろし、地面へと転がる。流石にそのチャンスは見逃さずに立ち上がった青年は、足を縺れさせながらも一心不乱に町の方角へと逃げていった。
シルビは立ち上がってローを振り返る。
「自宅を突き止めるだけでいいですね?」
「出来れば買い忘れた酒も買っ、痛!」
幻覚でハリセンを作り出しローをはたいた。
上陸した町の酒場で夕食を摂り隠しておいた船へ戻る途中、シルビは前方の森の中にふと見知らぬ気配を覚えた。
トラファルガー・ローへ勧誘されて彼の船へ乗り、暫く経っている。
懸賞金が懸かっているローのせいで昔ほどではないが賞金稼ぎへ襲われることが増え、女顔であるせいかシルビへと向かってくる雑魚が鬱陶しく、防寒帽を被るようになったのは前の島からだ。
まだシルビも含めて三人しかいないハートの海賊団はクルー集めに難儀しているものの、面倒事へ巻き込まれてはいない。年単位ではあれど短期旅行のつもりで島を出て来た為、いつかは故郷へ帰らなければならないのだが、近くにいてこそ分かるローの海賊船船長としての成長を見ているのも面白かった。
なので故郷へは、グランドラインを進むのであればいつかは近くを通るだろうしその時里帰りすれば良いかと楽観視している。いつでもローを見限って船を降りられるという余裕もあった。
とはいえシルビが近くにいるというのに、途中でローが無様に殺されてしまうのは面白くないし、自分がロー一人も守れやしないと思われるのは業腹である。
そう思って見知らぬ気配に注意してみれば、まだ遠いのでローもバンダナも気付いていないようだったが、気配も足音も殺せていない。
一応ローは賞金首であるので、その命を狙ってくる者は今までにもいた。手配書の写真でローを優男と誤認して掛かってくる考えの浅い者もいたが、こんなにも素人臭い賞金稼ぎは初めてだ。
むしろ初めて獲物を見つけたのかと思うくらいで、その実力でシルビが近くにいるローを狙うのは無謀すぎると思わず笑いが零れる。
「思い出し笑いかい?」
「いえ、……初心者賞金稼ぎが付いて来てるんです」
バンダナに聞かれて歩き続けながら答えた。
「へえ。……オレには分かんないけどねぇ?」
「まだ距離が遠いですから。どうします?」
「せっかくだし、顔でも見とくか」
隣を歩いていたローの言葉に、シルビはバンダナと視線を交わしてから靴紐を結びなおすフリをしてしゃがむ。二人は構わず歩いていく。
気配が確実にローだけに的を絞って、立ち止まったシルビなど意識すらしていないのを確認しシルビは脇の茂みへと入った。そこから木の上へと登り、枝を伝って歩いているローとバンダナを追い越す。
フクロウが慌てて飛び退けていくのを尻目に、茂みの中で息を殺しているらしい青年を見つけ、その背後へと音を立てずに降り立った。余程ローを倒す事へ集中しているのか、後ろへ立っても青年は気付かない。コレじゃ賞金稼ぎですら無いなと思ったところで、ロー達がのんびりと歩いてきた。
茂みから出ようとした青年の背中を蹴り飛ばし、道へと転がす。
カラン、と転がったのは青年が握っていた棍棒だ。そんなモノで賞金首の海賊に襲い掛かろうとしていたのかと、青年の背中へ足を乗せて抑え込みながらシルビは呆れた。
青年はいきなり蹴飛ばされた事にも、踏みつけられて立てないことにも驚いており、ローがそれを見下ろしながら声を殺して笑っている。
「! っくそ! 放せ!」
「放せといって放す海賊は居ねぇよ」
「放せ! オレはソイツを倒して賞金を手に入れるんだ!」
「目標はでかくていいと思うんだけどねぇ。ウチらも船長倒されたら困るんだよ」
バンダナも近付いてきて青年の顔のすぐ傍へ足を踏み降ろした。たったそれだけのことで黙る青年に、今度こそローが声を出して笑う。青年を逆撫でするようなことをするなとも思うが、この場合は仕方ないかもしれない。
笑われた青年は地べたからローを睨んでいる。その目に涙が溜まり、溢れて地面を濡らすのにバンダナが瞠目した。シルビも思わず抑えている足を僅かに浮かせる。
まさかこの程度で泣くとは。ローがニヤニヤと笑いながらしゃがんでその顔を覗き込む。
「オレを捕まえて、金を手に入れたらどうするつもりだったんだ?」
「い、妹とこの島を出て行くんだっ」
「妹がいるのか」
弱みにも繋がる家族のことをそう簡単に話しては駄目だろう。
「こんな遅い時間に出歩いてちゃ妹さん心配しないかい?」
「もう寝てる時間だから大丈夫だよ! っていうか海賊の癖して人ん家の心配するな!」
「言われてるぞバンダナ」
からかうように言ってローは青年を見下ろし、それからシルビへと視線を向けた。何が言いたいのかを理解して、青年に気付かれないように小さく息を吐く。
「殺せ」
「了解、船長」
片足を乗せたまましゃがんでナイフを首筋へ押し当てると、青年は信じられないというように暴れだした。
「なっ!? ま、待てっ、待ってくっ……!」
下手に暴れたら自ら首を切ってしまうことになるとは思わないのか。この様子だと首筋へ押し当てられているのが峰の部分だとも気付いていなそうだ。
死に物狂いで暴れる勢いが付いたところで、シルビは青年を抑えていられなくなったフリをして青年の背中から足を降ろし、地面へと転がる。流石にそのチャンスは見逃さずに立ち上がった青年は、足を縺れさせながらも一心不乱に町の方角へと逃げていった。
シルビは立ち上がってローを振り返る。
「自宅を突き止めるだけでいいですね?」
「出来れば買い忘れた酒も買っ、痛!」
幻覚でハリセンを作り出しローをはたいた。