原作前日常編2
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夢主視点
解熱剤を打ちにバンダナと一緒に船長室へ来たら船長が魘されていた。脂汗を滲ませている様子に起こした方がいいのかと手を伸ばしたところ、手を掴まれてしまったのである。
無意識で力の加減がなっていないのか、指先への血流が気になるほどにきつく握られた手に、爪が食い込んでもシルビはどうしようもなかった。
一緒に居たバンダナもどうしようも出来なかったのでそのまま放置していたのだが、バンダナが出て行った後の船長室で、横になったままの船長が気まずげにそろそろと手を離す。
「……悪い」
バンダナも船長が気まずくなると分かっていて言っていったのだから意地悪だ。体調を崩した事にも、自分だって弱っているくせにクルーの心配をした事にも怒っているのだとは分かるが。
血の出た手の傷を軽く擦り、血が止まっていることを確かめてから今度はシルビから船長の手を取る。爪の先にシルビの血が付いてしまっているそれは、熱のせいで熱く汗ばんでいた。
「嫌な夢でも見ましたか?」
「……夢は、見てねェ」
「苦しかったぁ?」
「……どうだろうな」
自嘲する船長の言葉が嘘かどうかは分からない。ただ病気で弱っている時は、どんな者であっても人恋しくなるとシルビは思っている。それはきっと、普段どんなに冷酷ぶっている男だってそうだ。
シルビがもう何度も経験した、死ぬ間際でさえ本当は怖いのだから。
手を伸ばして船長の首筋に触れ脈拍と熱を測る。
「もう一眠りしたら何か食べましょう。粥とかになりますけど、何が良いですか?」
「……お前に始めて食わされた、リンゴのやつ」
「リゾットですか。いいけどリンゴ有ったかなぁ」
「……今日は甘やかしてくるな」
「病人ですからねぇ。シャチとイルカにも同じ感じですよ。むしろあの二人の方が甘やかしてますけど」
「……、もしオレが、不治の病だったらどうする?」
シルビが握るのとは逆の手を額に乗せた船長のそれは、冗談か風邪による弱音か。
「治してあげます。金丹でも賢者の石でも何でも使って」
「それは薬か?」
「ええ、伝説の薬ですけれど」
そう返せば船長は何か言いだけにシルビを見上げ、それから掛布を頭にまで被った。
冗談だと思ったのだろう。シルビにとってはどちらも見たことのある実在の薬だというのに。
からかわれたと思って不機嫌になるのは子供の様だと思いはしたが、口にはせずに掛布の上から身体を軽く叩く。
弟が病気で寝込んだ時は、寝るまでそうしてやっていたのを思い出した。多分成人男性相手にやる事ではないのだろうが、それでもやっぱりシルビの根底では『病気の時は人恋しくなる』という思いがあるから。
せめて寝息が聞こえるまでは、傍に居てやろうと思った。
解熱剤を打ちにバンダナと一緒に船長室へ来たら船長が魘されていた。脂汗を滲ませている様子に起こした方がいいのかと手を伸ばしたところ、手を掴まれてしまったのである。
無意識で力の加減がなっていないのか、指先への血流が気になるほどにきつく握られた手に、爪が食い込んでもシルビはどうしようもなかった。
一緒に居たバンダナもどうしようも出来なかったのでそのまま放置していたのだが、バンダナが出て行った後の船長室で、横になったままの船長が気まずげにそろそろと手を離す。
「……悪い」
バンダナも船長が気まずくなると分かっていて言っていったのだから意地悪だ。体調を崩した事にも、自分だって弱っているくせにクルーの心配をした事にも怒っているのだとは分かるが。
血の出た手の傷を軽く擦り、血が止まっていることを確かめてから今度はシルビから船長の手を取る。爪の先にシルビの血が付いてしまっているそれは、熱のせいで熱く汗ばんでいた。
「嫌な夢でも見ましたか?」
「……夢は、見てねェ」
「苦しかったぁ?」
「……どうだろうな」
自嘲する船長の言葉が嘘かどうかは分からない。ただ病気で弱っている時は、どんな者であっても人恋しくなるとシルビは思っている。それはきっと、普段どんなに冷酷ぶっている男だってそうだ。
シルビがもう何度も経験した、死ぬ間際でさえ本当は怖いのだから。
手を伸ばして船長の首筋に触れ脈拍と熱を測る。
「もう一眠りしたら何か食べましょう。粥とかになりますけど、何が良いですか?」
「……お前に始めて食わされた、リンゴのやつ」
「リゾットですか。いいけどリンゴ有ったかなぁ」
「……今日は甘やかしてくるな」
「病人ですからねぇ。シャチとイルカにも同じ感じですよ。むしろあの二人の方が甘やかしてますけど」
「……、もしオレが、不治の病だったらどうする?」
シルビが握るのとは逆の手を額に乗せた船長のそれは、冗談か風邪による弱音か。
「治してあげます。金丹でも賢者の石でも何でも使って」
「それは薬か?」
「ええ、伝説の薬ですけれど」
そう返せば船長は何か言いだけにシルビを見上げ、それから掛布を頭にまで被った。
冗談だと思ったのだろう。シルビにとってはどちらも見たことのある実在の薬だというのに。
からかわれたと思って不機嫌になるのは子供の様だと思いはしたが、口にはせずに掛布の上から身体を軽く叩く。
弟が病気で寝込んだ時は、寝るまでそうしてやっていたのを思い出した。多分成人男性相手にやる事ではないのだろうが、それでもやっぱりシルビの根底では『病気の時は人恋しくなる』という思いがあるから。
せめて寝息が聞こえるまでは、傍に居てやろうと思った。