原作前日常編2
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ロー視点
小さい頃に治すことが出来た、治した病気の苦しみを覚えている。それは体が刻一刻と死に近付く恐怖を未だに覚えているということだ。
苦しい。怖い。辛い。
それが切っ掛けで今の自分が居る。あの経験があってこその忘れられないこともあった。それでも苦しいものは苦しい。
病気なんてクソ食らえ。
「――っ」
「船長?」
声がした方を見ればベッドの端に座って不思議そうに顔を覗きこんでくるペンギンと、その向こうに見えるトレーを持ったバンダナの少し驚いたような顔。もう一度ペンギンを見ると相変わらず不思議そうな顔をしている。
ベッドで寝た覚えなんて無かったのに、ローの身体は自分のベッドへ寝かされているようだった。状況を理解しきれずに説明を無言で求めれば、ペンギンが肩を竦めてバンダナを呼んだ。
置かれたトレーの上には注射器。それをペンギンが器用に片手で薬を吸わせて、バンダナがローの腕の袖を捲くる。
「それ……」
「解熱剤ですよ船長。アンタイルカ達よりヒドイ熱出てんですからね」
熱、と聞いてやっと自分が普段より荒い呼吸である事や酷く寒く感じていることに気付いた。風邪を引いたのだとその時になってようやく理解して、ペンギンが腕に注射針を刺すのを見つめる。
僅かに感じた痛みに掴んでいるモノを握り締めた。すぐに抜かれたそれは、ペンギンの腕がいいのか抜く時には痛みも無い。トレーの上に使用済みの注射器を戻して、それをバンダナが机へと移動させる。
「昨日海に落ちて、その後温かい格好してなかったのが悪かったんでしょうね。船長なんだから体調管理くらい、ペンちゃんの手を借りねえでやったらどうですかい」
「まぁ机に突っ伏して寝落ちたのは怒りてぇところですかねぇ」
「ペンちゃん甘いよ。このお人はきっとまたやるよ」
「知らねぇところで野垂れ死にしなけりゃいいです」
「……イルカ、とシャチは」
尋ねると二人がローを見た。渋面になるバンダナとは対照的に、ペンギンは少し笑っただけ。
「二人よりアンタのほうがヒドイんですから、あいつ等の心配もいいけどまず自分の心配をしてくれやもらえませんかね?」
「……寝れば治る」
「じゃあ寝なさい。なんなら麻酔だって掛けてやりましょうか」
「バンダナさん」
宥める様に名前を呼ばれてバンダナが溜息を吐いた。仕事に戻るのか机に置いたトレーを手にとってヘアバンドの位置を直しながら扉へ向かう。
「早く治して、ペンちゃんの手を離してやったらどうです」
そう言って部屋を出て行ったバンダナに、どういう事だと思ってペンギンの手を見る。注射をした腕の先、汗を掻いたローの手がペンギンの手を掴んでいた。
無意識に強く握り込んでいたのか、爪が食い込んでもいて血が滲んでいる。ああだから片手で作業していたのかと理解した。
「魘されてたんです」
小さい頃に治すことが出来た、治した病気の苦しみを覚えている。それは体が刻一刻と死に近付く恐怖を未だに覚えているということだ。
苦しい。怖い。辛い。
それが切っ掛けで今の自分が居る。あの経験があってこその忘れられないこともあった。それでも苦しいものは苦しい。
病気なんてクソ食らえ。
「――っ」
「船長?」
声がした方を見ればベッドの端に座って不思議そうに顔を覗きこんでくるペンギンと、その向こうに見えるトレーを持ったバンダナの少し驚いたような顔。もう一度ペンギンを見ると相変わらず不思議そうな顔をしている。
ベッドで寝た覚えなんて無かったのに、ローの身体は自分のベッドへ寝かされているようだった。状況を理解しきれずに説明を無言で求めれば、ペンギンが肩を竦めてバンダナを呼んだ。
置かれたトレーの上には注射器。それをペンギンが器用に片手で薬を吸わせて、バンダナがローの腕の袖を捲くる。
「それ……」
「解熱剤ですよ船長。アンタイルカ達よりヒドイ熱出てんですからね」
熱、と聞いてやっと自分が普段より荒い呼吸である事や酷く寒く感じていることに気付いた。風邪を引いたのだとその時になってようやく理解して、ペンギンが腕に注射針を刺すのを見つめる。
僅かに感じた痛みに掴んでいるモノを握り締めた。すぐに抜かれたそれは、ペンギンの腕がいいのか抜く時には痛みも無い。トレーの上に使用済みの注射器を戻して、それをバンダナが机へと移動させる。
「昨日海に落ちて、その後温かい格好してなかったのが悪かったんでしょうね。船長なんだから体調管理くらい、ペンちゃんの手を借りねえでやったらどうですかい」
「まぁ机に突っ伏して寝落ちたのは怒りてぇところですかねぇ」
「ペンちゃん甘いよ。このお人はきっとまたやるよ」
「知らねぇところで野垂れ死にしなけりゃいいです」
「……イルカ、とシャチは」
尋ねると二人がローを見た。渋面になるバンダナとは対照的に、ペンギンは少し笑っただけ。
「二人よりアンタのほうがヒドイんですから、あいつ等の心配もいいけどまず自分の心配をしてくれやもらえませんかね?」
「……寝れば治る」
「じゃあ寝なさい。なんなら麻酔だって掛けてやりましょうか」
「バンダナさん」
宥める様に名前を呼ばれてバンダナが溜息を吐いた。仕事に戻るのか机に置いたトレーを手にとってヘアバンドの位置を直しながら扉へ向かう。
「早く治して、ペンちゃんの手を離してやったらどうです」
そう言って部屋を出て行ったバンダナに、どういう事だと思ってペンギンの手を見る。注射をした腕の先、汗を掻いたローの手がペンギンの手を掴んでいた。
無意識に強く握り込んでいたのか、爪が食い込んでもいて血が滲んでいる。ああだから片手で作業していたのかと理解した。
「魘されてたんです」