原作前日常編
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夢主視点
「ペンギン兄ちゃん!」
風呂に入る時間は無かったのでシャツだけ着替えて、船長のお供を兼ねて船を降りるとコニーが駆け寄ってきた。
昨夜屋敷を出てから母親と先に脱出していた姉へと受け渡し、その後寝たのか寝ずとも休みはしたのだろうコニーは元気である。
「オレには挨拶も無しか」
「おはようヒゲの兄ちゃん」
「ぷふっ……」
一緒についてきていたイルカが顔を逸らして笑いを堪えていた。笑い上戸なので笑いを堪えるのは大変辛かろう。シルビとしては船長の髭は正直童顔なのを隠す為のものだろうと思っているのだが、自分も女顔を隠している訳なので下手なことは言えない。
「姉ちゃんが帰ってきたんだ! ……上の姉ちゃんは、死んじゃったけど」
コニーは気丈にも泣きはしなかった。二人いたらしい姉のうち、上の姉は数日前にやはり殺されていたらしい。残った下の姉が牢屋で出会った少女で、シャチ達の武器が捨てられた奥の部屋に、姉の死体が運ばれていく様も見ていたという。
その少女と一緒に脱出したシャチは、船長と同じく風呂に入って仮眠も取った後、一緒に捕まっていた少女達の診察をしているクルー達を手伝っていた。
流石に屋敷の惨状をそう何度も見せたくなくて、脱出後に屋敷へ出入りしたのはシルビだけだ。状態の良い死体を幾つか運び出し、住民に聞いてコニーの姉を探し出しエンバーミング処理の見本として無料で処置させてもらっても、クルー達に見せてはいない。
今から向かうのはその死体の安置場所である。
「付いていっていい?」
「ダメだぁ。子供が見るもんじゃねぇ」
「でも姉ちゃんはまだあそこにいるんでしょ? 会いたい」
死体になって姉に対して、『見たい』ではなく『会いたい』というコニーに複雑な気分になった。そんなシルビを察した訳でも無いだろうが、船長がコニーの頭へ手を置く。
「お前は生きてる方の姉の手伝いをしてやれ。そのほうが有意義だ」
「ゆーいぎって何?」
「助かるって事だ」
船長の言葉に納得したようではないが、住民に呼ばれてコニーが駆けて行った。
「死体を見るにはまだ早いよねー」
「一応眠ったように死んでる顔にしたぜぇ?」
「そんなに損傷酷かったの?」
「思ったよりは酷くなかったなぁ。子宮もあったし」
「ふーん……ペンギンはちょっと残酷に考えすぎじゃない?」
「そうかぁ? でも生きたまま子宮を抉り出して料理させて食べる年寄りを知ってると、なぁ」
宇宙海賊のいた世界で友人が受けた事件の事を思い出して言うと、イルカだけではなく船長まで気持ち悪げにしている。
甚だ心外だ。
その後、金を払うと決まった死体の処理も無事に終わった。本来の公的機関よりは随分と安い破格の値段だったが、その代わりハートの海賊団が居る間は海軍への通報はしないという事で話はまとまっている。
記録指針のログもそろそろ溜まるので、これ以上いる必要も無いだろうと出港の支度をしているところへやって来たのは、コニーとその家族だった。
シャチがそれに気付いて船を降りていく。出港の支度はもう殆ど終えていたのでシルビも船を降りれば、相変わらず顔へ包帯を巻いている母親がにこやかに微笑んだ。
「コニーだけでも助けてもらおうと思ったんだけど、結果的にこの町全部を助けてもらっちゃったね」
「結果的に、でしょう」
シルビには連れて行かれていた少女達まで助けるつもりは無かった。たまたま船長やシャチ達と同じ場所に居たというだけだ。
「娘の身体も綺麗にしてもらったしね。結果的にだとしてもありがたいよ、ほんと」
そう言ってシャチと話をしている娘達を見る母親に、シルビは手を伸ばしかけて止める。いつの間にか仲良くなったのかシャチがコニーに肩車をしていて、コニーの姉が微笑んでそれを眺めていた。
後ろから船長がワカメと一緒に船を降りてくる。それに気付いてコニーがシャチの頭を叩いてコチラへ戻ってきた。
「コニー肩車してもらってんの?」
「うん!」
元気良く答える子供に、曲がりなりにも海賊とそんな仲良くしていて今後の教育に問題は無いのだろうかと少し心配になる。だが母親からして生き延びさせる為に海賊船へ密航させようとする様な者だと思い出して、今更かと思いなおした。
「ねーねーヒゲの兄ちゃん。コニーも海賊で医者になりたい!」
「コニー! ご、ごめんなさい妹が!」
今更どころか遅かったらしい。相変わらず船長のことを『ヒゲの』と言うコニーに、母親が笑っている。姉がたしなめるように呼んだ理由も分かっていないらしい。
「だったら勉強しろ。とりあえずは姉に迷惑かけねえようにならねえとな」
「姉ちゃんにメーワクかけてないし!」
「オレはお前を連れ歩いて迷惑だったぜ? せいぜい並んで走れる程度にはでかくなれよ」
「でかくなったら船に乗せてくれる?」
「考えておく」
軽々しく口約束をするなと思ったところで、母親が思い出したように船長を見た。
「そうそう、これを言いに来たんだけどさ。あんた等のことを海軍へ密告はしてないけどあの領主のことでは報告したらしいよ」
「は――?」
「『領主を襲った海賊として、奪われた財産を取り返すんだ』ってさ。……あーあー、たまたま海に来たら海賊に尋問されちゃったよー」
死体処理をするに当たって払った金が惜しくなったか最初からそのつもりだったのか。
そう言ってニヤリと笑った母親に、ワカメとシャチが船長の視線を受けて船へ走っていく。
「ペンギン兄ちゃん!」
風呂に入る時間は無かったのでシャツだけ着替えて、船長のお供を兼ねて船を降りるとコニーが駆け寄ってきた。
昨夜屋敷を出てから母親と先に脱出していた姉へと受け渡し、その後寝たのか寝ずとも休みはしたのだろうコニーは元気である。
「オレには挨拶も無しか」
「おはようヒゲの兄ちゃん」
「ぷふっ……」
一緒についてきていたイルカが顔を逸らして笑いを堪えていた。笑い上戸なので笑いを堪えるのは大変辛かろう。シルビとしては船長の髭は正直童顔なのを隠す為のものだろうと思っているのだが、自分も女顔を隠している訳なので下手なことは言えない。
「姉ちゃんが帰ってきたんだ! ……上の姉ちゃんは、死んじゃったけど」
コニーは気丈にも泣きはしなかった。二人いたらしい姉のうち、上の姉は数日前にやはり殺されていたらしい。残った下の姉が牢屋で出会った少女で、シャチ達の武器が捨てられた奥の部屋に、姉の死体が運ばれていく様も見ていたという。
その少女と一緒に脱出したシャチは、船長と同じく風呂に入って仮眠も取った後、一緒に捕まっていた少女達の診察をしているクルー達を手伝っていた。
流石に屋敷の惨状をそう何度も見せたくなくて、脱出後に屋敷へ出入りしたのはシルビだけだ。状態の良い死体を幾つか運び出し、住民に聞いてコニーの姉を探し出しエンバーミング処理の見本として無料で処置させてもらっても、クルー達に見せてはいない。
今から向かうのはその死体の安置場所である。
「付いていっていい?」
「ダメだぁ。子供が見るもんじゃねぇ」
「でも姉ちゃんはまだあそこにいるんでしょ? 会いたい」
死体になって姉に対して、『見たい』ではなく『会いたい』というコニーに複雑な気分になった。そんなシルビを察した訳でも無いだろうが、船長がコニーの頭へ手を置く。
「お前は生きてる方の姉の手伝いをしてやれ。そのほうが有意義だ」
「ゆーいぎって何?」
「助かるって事だ」
船長の言葉に納得したようではないが、住民に呼ばれてコニーが駆けて行った。
「死体を見るにはまだ早いよねー」
「一応眠ったように死んでる顔にしたぜぇ?」
「そんなに損傷酷かったの?」
「思ったよりは酷くなかったなぁ。子宮もあったし」
「ふーん……ペンギンはちょっと残酷に考えすぎじゃない?」
「そうかぁ? でも生きたまま子宮を抉り出して料理させて食べる年寄りを知ってると、なぁ」
宇宙海賊のいた世界で友人が受けた事件の事を思い出して言うと、イルカだけではなく船長まで気持ち悪げにしている。
甚だ心外だ。
その後、金を払うと決まった死体の処理も無事に終わった。本来の公的機関よりは随分と安い破格の値段だったが、その代わりハートの海賊団が居る間は海軍への通報はしないという事で話はまとまっている。
記録指針のログもそろそろ溜まるので、これ以上いる必要も無いだろうと出港の支度をしているところへやって来たのは、コニーとその家族だった。
シャチがそれに気付いて船を降りていく。出港の支度はもう殆ど終えていたのでシルビも船を降りれば、相変わらず顔へ包帯を巻いている母親がにこやかに微笑んだ。
「コニーだけでも助けてもらおうと思ったんだけど、結果的にこの町全部を助けてもらっちゃったね」
「結果的に、でしょう」
シルビには連れて行かれていた少女達まで助けるつもりは無かった。たまたま船長やシャチ達と同じ場所に居たというだけだ。
「娘の身体も綺麗にしてもらったしね。結果的にだとしてもありがたいよ、ほんと」
そう言ってシャチと話をしている娘達を見る母親に、シルビは手を伸ばしかけて止める。いつの間にか仲良くなったのかシャチがコニーに肩車をしていて、コニーの姉が微笑んでそれを眺めていた。
後ろから船長がワカメと一緒に船を降りてくる。それに気付いてコニーがシャチの頭を叩いてコチラへ戻ってきた。
「コニー肩車してもらってんの?」
「うん!」
元気良く答える子供に、曲がりなりにも海賊とそんな仲良くしていて今後の教育に問題は無いのだろうかと少し心配になる。だが母親からして生き延びさせる為に海賊船へ密航させようとする様な者だと思い出して、今更かと思いなおした。
「ねーねーヒゲの兄ちゃん。コニーも海賊で医者になりたい!」
「コニー! ご、ごめんなさい妹が!」
今更どころか遅かったらしい。相変わらず船長のことを『ヒゲの』と言うコニーに、母親が笑っている。姉がたしなめるように呼んだ理由も分かっていないらしい。
「だったら勉強しろ。とりあえずは姉に迷惑かけねえようにならねえとな」
「姉ちゃんにメーワクかけてないし!」
「オレはお前を連れ歩いて迷惑だったぜ? せいぜい並んで走れる程度にはでかくなれよ」
「でかくなったら船に乗せてくれる?」
「考えておく」
軽々しく口約束をするなと思ったところで、母親が思い出したように船長を見た。
「そうそう、これを言いに来たんだけどさ。あんた等のことを海軍へ密告はしてないけどあの領主のことでは報告したらしいよ」
「は――?」
「『領主を襲った海賊として、奪われた財産を取り返すんだ』ってさ。……あーあー、たまたま海に来たら海賊に尋問されちゃったよー」
死体処理をするに当たって払った金が惜しくなったか最初からそのつもりだったのか。
そう言ってニヤリと笑った母親に、ワカメとシャチが船長の視線を受けて船へ走っていく。