逆襲の+α
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「始さん達を見ると頭痛がするっていうことは、もしかしたら幼少期に会ったことがあったりするのかも知れませんね。それで記憶が刺激されて頭痛がする、みてぇな」
「申し訳ないがオレ達に覚えは無いな」
「ふふ、真面目に考えなくていですよ。思い出した方が良いのは確かですが、急を要することでも無ぇのでぇ」
まだ出会って数日だというのに始は真面目だ。その真面目さが彼の長所なのだろうが、他人の事情に首を突っ込むのはあまりお勧めできなかった。
幼少期に彼等に会った事など当たり前だが無い。そんなことがあればそれこそ覚えている筈だ。
そこまで真剣に考える必要は無いのに、まだこの話題を続けるつもりらしい始が俯いていた顔を上げる。
「ちなみに、オレ達以外に見て頭痛を起こしたことはあるのかい?」
「あー、先日都庁に現れた竜とかぁ? 始さんと会う前に座り込んでたのも窓の外の竜と目が合ったのが原因でしたし。そういえばあの竜、どこに行ったんでしょうね?」
あの夜のことは、始と行動を共にしてからのことは特に朧気だ。意識が朦朧としていたのは分かっているが、その間に始達とどんな会話をしていたのかもはっきりしない。
妙なことを言っていなければいいが。
「ニュースじゃああの竜は人類の敵だなんて言われているのに、呑気だな」
「人類の敵だとしても世界の敵ではありませんからねぇ」
あの竜は世界の敵ではない。それは火を見るよりも明らかな事実だ。そして世界の敵ではない以上、完全に人類の敵だとも言い難い。
世界に住むのは人類だけではないのだ。他の生き物も内包している。
「怯えるのは勝手にすればいい。でも化物と呼ぶのは許さない。俺だけならいい。もう慣れている。でも竜王達は駄目だぁ。彼らはそう呼ばれるに値しねぇ子達なんだから――」
「アマネく――」
応接室の扉がノックされて、お盆を片手に続が扉を開けてきた。始とアマネを見て不思議そうに首を傾げるのに、アマネも少し戸惑いながら始を見る。
「俺、今、何て言ってました?」
「竜王達、と」
言い淀みながらもそう答えた始に、彼よりもアマネの方が戸惑いと困惑を隠せない。
今までの前世で『竜王』に関わった覚えなど無かった。なのにアマネは敵意無くその名称を口にしたのだ。
話の流れ的に『竜』であればおかしくないが、アマネの無意識は『竜王』と称した。であれば、都庁に現れた竜は『竜王』で、アマネはその竜王を知っていたのだろう。
やはり記憶がおかしい。アマネがそうだと思っているだけで、本当は抜けてしまっている記憶があるのか。
忘れてしまった記憶があるとすれば、それはどこで何をしていた時のものなのか。そこで関わった者達はアマネが忘れてしまった事を嘆くだろう。或いは怒る。
怒られてしまうから取り戻さなければならない。いや、違う。
怒られたって構わないが、大切だから取り返したい。
「……。竜王、といえば中国神話によく出てくるね」
呆然としていたアマネに始が口を開く。
「中国、神話……」
「竜堂家は先祖が中国から来たらしくてね、それもあって中国の文化や歴史には少し詳しいんだ。祖父が集めた文献も書斎には多くある。もし良ければきみも見てみないかい?」
「すみません。兄さんは歴史について調べるのが好きなもので。少しでもチャンスがあると話し相手が出来るかもと期待してるんです」
テーブルにお茶を置いた続が呆れ交じりに説明した。始が物言いたげな視線を弟へ向けるが、向けられた次男はやはり視線で兄を黙らせている。
正直興味はあった。しかしそろそろ帰って就職活動をしないとならない。やはり仕事が無くなったのは痛手だ。
「書斎を見せて頂きたいのは山々ですが、次の予定もあるので今日のところは失礼します。先日助けて頂いたお礼も出来たし、終君達にもよろしくお伝えください」
「次の予定があるなら仕方ないな。でも君は弟の友人だし、よければまた遊びにおいで」
「ありがとうございます」
出されるのが遅かったお茶を飲み干して立ち上がる。始に一度頭を下げてから、玄関まで見送ってくれるのだろう続に続いて応接室を出た。
前を進む続へ何の気と無しに話しかける。
「先祖の方は中国出身なんですか?」
「ええ、そう聞いてます」
中国。馴染みは無い筈なのにどこか懐かしい気がした。
玄関に着いたところで軽やかな足音がして終がやって来る。
「アマネもう帰るの? 桃とゼリーありがとな!」
「あの桃は丸かじり出来る品種じゃねぇから、いつもみたいに噛り付かずにちゃんと皮を剥けよぉ」
「分かってるよ! ――? オレ、お前の前で桃かじったことあったっけ?」
「……? 無ぇかもぉ?」
終と顔を見合わせて首を傾げた。終がアマネの目の前で桃を丸齧りしたことなど覚えが無いのに、何故そんな注意をしてしまったのか。
やはりどうにも、記憶が曖昧だ。
「申し訳ないがオレ達に覚えは無いな」
「ふふ、真面目に考えなくていですよ。思い出した方が良いのは確かですが、急を要することでも無ぇのでぇ」
まだ出会って数日だというのに始は真面目だ。その真面目さが彼の長所なのだろうが、他人の事情に首を突っ込むのはあまりお勧めできなかった。
幼少期に彼等に会った事など当たり前だが無い。そんなことがあればそれこそ覚えている筈だ。
そこまで真剣に考える必要は無いのに、まだこの話題を続けるつもりらしい始が俯いていた顔を上げる。
「ちなみに、オレ達以外に見て頭痛を起こしたことはあるのかい?」
「あー、先日都庁に現れた竜とかぁ? 始さんと会う前に座り込んでたのも窓の外の竜と目が合ったのが原因でしたし。そういえばあの竜、どこに行ったんでしょうね?」
あの夜のことは、始と行動を共にしてからのことは特に朧気だ。意識が朦朧としていたのは分かっているが、その間に始達とどんな会話をしていたのかもはっきりしない。
妙なことを言っていなければいいが。
「ニュースじゃああの竜は人類の敵だなんて言われているのに、呑気だな」
「人類の敵だとしても世界の敵ではありませんからねぇ」
あの竜は世界の敵ではない。それは火を見るよりも明らかな事実だ。そして世界の敵ではない以上、完全に人類の敵だとも言い難い。
世界に住むのは人類だけではないのだ。他の生き物も内包している。
「怯えるのは勝手にすればいい。でも化物と呼ぶのは許さない。俺だけならいい。もう慣れている。でも竜王達は駄目だぁ。彼らはそう呼ばれるに値しねぇ子達なんだから――」
「アマネく――」
応接室の扉がノックされて、お盆を片手に続が扉を開けてきた。始とアマネを見て不思議そうに首を傾げるのに、アマネも少し戸惑いながら始を見る。
「俺、今、何て言ってました?」
「竜王達、と」
言い淀みながらもそう答えた始に、彼よりもアマネの方が戸惑いと困惑を隠せない。
今までの前世で『竜王』に関わった覚えなど無かった。なのにアマネは敵意無くその名称を口にしたのだ。
話の流れ的に『竜』であればおかしくないが、アマネの無意識は『竜王』と称した。であれば、都庁に現れた竜は『竜王』で、アマネはその竜王を知っていたのだろう。
やはり記憶がおかしい。アマネがそうだと思っているだけで、本当は抜けてしまっている記憶があるのか。
忘れてしまった記憶があるとすれば、それはどこで何をしていた時のものなのか。そこで関わった者達はアマネが忘れてしまった事を嘆くだろう。或いは怒る。
怒られてしまうから取り戻さなければならない。いや、違う。
怒られたって構わないが、大切だから取り返したい。
「……。竜王、といえば中国神話によく出てくるね」
呆然としていたアマネに始が口を開く。
「中国、神話……」
「竜堂家は先祖が中国から来たらしくてね、それもあって中国の文化や歴史には少し詳しいんだ。祖父が集めた文献も書斎には多くある。もし良ければきみも見てみないかい?」
「すみません。兄さんは歴史について調べるのが好きなもので。少しでもチャンスがあると話し相手が出来るかもと期待してるんです」
テーブルにお茶を置いた続が呆れ交じりに説明した。始が物言いたげな視線を弟へ向けるが、向けられた次男はやはり視線で兄を黙らせている。
正直興味はあった。しかしそろそろ帰って就職活動をしないとならない。やはり仕事が無くなったのは痛手だ。
「書斎を見せて頂きたいのは山々ですが、次の予定もあるので今日のところは失礼します。先日助けて頂いたお礼も出来たし、終君達にもよろしくお伝えください」
「次の予定があるなら仕方ないな。でも君は弟の友人だし、よければまた遊びにおいで」
「ありがとうございます」
出されるのが遅かったお茶を飲み干して立ち上がる。始に一度頭を下げてから、玄関まで見送ってくれるのだろう続に続いて応接室を出た。
前を進む続へ何の気と無しに話しかける。
「先祖の方は中国出身なんですか?」
「ええ、そう聞いてます」
中国。馴染みは無い筈なのにどこか懐かしい気がした。
玄関に着いたところで軽やかな足音がして終がやって来る。
「アマネもう帰るの? 桃とゼリーありがとな!」
「あの桃は丸かじり出来る品種じゃねぇから、いつもみたいに噛り付かずにちゃんと皮を剥けよぉ」
「分かってるよ! ――? オレ、お前の前で桃かじったことあったっけ?」
「……? 無ぇかもぉ?」
終と顔を見合わせて首を傾げた。終がアマネの目の前で桃を丸齧りしたことなど覚えが無いのに、何故そんな注意をしてしまったのか。
やはりどうにも、記憶が曖昧だ。
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