【瑞獣】
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夢主視点
現世へ行くのはあまり好きでは無く、けれども医術や薬学の進歩を知る為にも数年に一回は行かねばならず、現世の服を用意する。
やっと知っている文化に追いついた現代の服装は、けれども今のアマネにはもう違和しか感じられない。きっと神代の時代が長過ぎたからだと思っている。
ハイネックにシャツを羽織り、黒いスラックスを履けば無難もいいところの格好だ。流石にスウェットで歩くのは遠慮したい。
桃タローに声を掛けて現世へと向かう。正体は当然話していないが懇意にしている漢方薬局をいくつか周り、二日目には医大に学生然として忍び込んで講義を受けてみて、本屋で医学書を漁って一通りの視察は終わり。
数日のつもりで来たというのに、二日で終わってしまった。予定より早く帰ると桃タローがちゃんとやる事をやってきたのかと疑うし、予定より遅く帰っても遊んできたのかと言われてしまう。
なのであと数日はどうにかして時間を潰さなければならない。生憎時間の潰し方なら、この八桁近くを潰し続けてきたが。
味も店員の質も大量生産な飲食店へ入って、購入した医学書を広げていると視界が暗くなる。
「カガチ君。久しぶり」
「どうも。こんな所で会うとは思いませんでした」
キャスケット帽子に額の角を隠した鬼灯がアマネを見下ろしていた。地獄の獄卒が時々現世へ視察に行くことは知っていたので驚きはしなかったが、一応広い現世で会えたことには動揺する。
寄ってきた店員へ勝手に相席でと告げ、向かいの席へ腰を降ろす鬼灯にメニュー表を差し出した。無言で受け取って広げる鬼灯を何とはなしに眺めているとメニューから視線だけを上げて睨まれる。
「なんですか」
「別に。どのくらいの若さを想定してんだろうと思ってぇ?」
「貴方とそう変わりませんよ」
昔は腹の高さくらいだった子鬼が、今やそんなことを言う。それをアマネが寂しいとか羨ましいと考えている事も知らずに。
鬼神とはいえ鬼灯は元々鬼火が子供の死体へ入っただけの存在で、『白澤』として生まれたアマネとは違うのだ。鬼火が消滅すれば鬼灯は死ねるのかも知れないが、アマネは分からない。
だから成長して鬼灯は大人になった。きっとこれから何千年も掛かるとはいえ、いつかは鬼灯だってアマネをおいて消滅してしまうかも知れない。
「……く……さん……白澤さん」
「――ぁ、何? 決まったのかぁ?」
店員呼び出しボタンへ指を添えて鬼灯がアマネを見ていた。アマネの注文した物はまだ来ていないだけなので、鬼灯の指ごとボタンを押す。
こうして一緒に座っていたら、周りからは友達だとでも思われるのだろうか。
現世へ行くのはあまり好きでは無く、けれども医術や薬学の進歩を知る為にも数年に一回は行かねばならず、現世の服を用意する。
やっと知っている文化に追いついた現代の服装は、けれども今のアマネにはもう違和しか感じられない。きっと神代の時代が長過ぎたからだと思っている。
ハイネックにシャツを羽織り、黒いスラックスを履けば無難もいいところの格好だ。流石にスウェットで歩くのは遠慮したい。
桃タローに声を掛けて現世へと向かう。正体は当然話していないが懇意にしている漢方薬局をいくつか周り、二日目には医大に学生然として忍び込んで講義を受けてみて、本屋で医学書を漁って一通りの視察は終わり。
数日のつもりで来たというのに、二日で終わってしまった。予定より早く帰ると桃タローがちゃんとやる事をやってきたのかと疑うし、予定より遅く帰っても遊んできたのかと言われてしまう。
なのであと数日はどうにかして時間を潰さなければならない。生憎時間の潰し方なら、この八桁近くを潰し続けてきたが。
味も店員の質も大量生産な飲食店へ入って、購入した医学書を広げていると視界が暗くなる。
「カガチ君。久しぶり」
「どうも。こんな所で会うとは思いませんでした」
キャスケット帽子に額の角を隠した鬼灯がアマネを見下ろしていた。地獄の獄卒が時々現世へ視察に行くことは知っていたので驚きはしなかったが、一応広い現世で会えたことには動揺する。
寄ってきた店員へ勝手に相席でと告げ、向かいの席へ腰を降ろす鬼灯にメニュー表を差し出した。無言で受け取って広げる鬼灯を何とはなしに眺めているとメニューから視線だけを上げて睨まれる。
「なんですか」
「別に。どのくらいの若さを想定してんだろうと思ってぇ?」
「貴方とそう変わりませんよ」
昔は腹の高さくらいだった子鬼が、今やそんなことを言う。それをアマネが寂しいとか羨ましいと考えている事も知らずに。
鬼神とはいえ鬼灯は元々鬼火が子供の死体へ入っただけの存在で、『白澤』として生まれたアマネとは違うのだ。鬼火が消滅すれば鬼灯は死ねるのかも知れないが、アマネは分からない。
だから成長して鬼灯は大人になった。きっとこれから何千年も掛かるとはいえ、いつかは鬼灯だってアマネをおいて消滅してしまうかも知れない。
「……く……さん……白澤さん」
「――ぁ、何? 決まったのかぁ?」
店員呼び出しボタンへ指を添えて鬼灯がアマネを見ていた。アマネの注文した物はまだ来ていないだけなので、鬼灯の指ごとボタンを押す。
こうして一緒に座っていたら、周りからは友達だとでも思われるのだろうか。