【瑞獣】
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鬼灯視点
最近地獄が忙しい。現世で天変地異の様に竜巻が発生したり火山が噴火したりして人が多く亡くなっているからだ。
裁きを受ける亡者の数が増えててんてこ舞いだった。閻魔大王の睡眠時間を減らしても追いつけず、一日に裁ける人数を亡者が越えてしまっている。
僅かな休憩時間に見た現世の情報番組では、そうしている間にも生者が亡者になっているようだった。もはや神頼みしかないとばかりに、泣きながら手を合わせている老婆の姿がテレビへ映る。
どうやら日本はまだマシなくらいで、EUやアメリカはもっと悲惨らしい。そういえば最近あの蠅やその妻のリリスから連絡が来ていなかった。短い休憩を兼ねた食事を終えて裁判所へ戻れば、閻魔大王がイザナミと話している。
「どうかしたんですか」
「ああ鬼灯君。大変だよ。『■■■■』が亡くなられたらしい」
「――は?」
「だから、神が死なれたのじゃ」
一瞬聞き間違いかと思ったが、閻魔大王とイザナミの表情は冗談を言っているようには見えない。そもそもそんな不遜な冗談が言えるものか。
まず思ったのは『神も死ぬのか』という事である。神は信仰されている限りは神格を帯びて死ぬことはない。無論ある程度は殺せば死ぬだろうが、人間の『殺されて死ぬ』というのと神の『殺されて死ぬ』というのでは意味合いも違ってくる。それに大抵の神は不死身という性質を抱えていた。
神の場合再生する神もいるのだ。目の前にいるイザナミなどそのいい例だろう。彼女は国造りで一度死に、黄泉の国で生き返った。神格は失われていない。
最後に思い浮かべたのは、桃源郷にある極楽満月で見た白澤への手紙。
「わらわもまだ詳しいことは分からぬが、今イザナギが調べに行ってくれておる。しからば先にお前達へ伝えておこうと思うての」
「神が亡くなられたというのにその程度ですか?」
「■■■■は多神教の一人じゃからの。民間信仰は時として信仰者が少ない。アッラーが亡くなられる程にはいかぬじゃろう。ただ混乱はしておる」
頬へ手を押し当てため息を吐くイザナミも困惑はしているのだろう。鬼灯も本来死なないはずの神が死ぬなんてとはと思った。
「――ところで、なんて名前の神が亡くなられたんです?」
「だから■■……――あれ? なんて名前だっけ?」
さっきまではちゃんと名前を言っていた筈の閻魔が首を傾げる。イザナミが動揺を押し隠すように腕組みをした。
「覚えておらずとも仕方ない。信仰されなくなったという事は認知されなくなったという事じゃ。――存在すら、消えたのだろうよ」
最近地獄が忙しい。現世で天変地異の様に竜巻が発生したり火山が噴火したりして人が多く亡くなっているからだ。
裁きを受ける亡者の数が増えててんてこ舞いだった。閻魔大王の睡眠時間を減らしても追いつけず、一日に裁ける人数を亡者が越えてしまっている。
僅かな休憩時間に見た現世の情報番組では、そうしている間にも生者が亡者になっているようだった。もはや神頼みしかないとばかりに、泣きながら手を合わせている老婆の姿がテレビへ映る。
どうやら日本はまだマシなくらいで、EUやアメリカはもっと悲惨らしい。そういえば最近あの蠅やその妻のリリスから連絡が来ていなかった。短い休憩を兼ねた食事を終えて裁判所へ戻れば、閻魔大王がイザナミと話している。
「どうかしたんですか」
「ああ鬼灯君。大変だよ。『■■■■』が亡くなられたらしい」
「――は?」
「だから、神が死なれたのじゃ」
一瞬聞き間違いかと思ったが、閻魔大王とイザナミの表情は冗談を言っているようには見えない。そもそもそんな不遜な冗談が言えるものか。
まず思ったのは『神も死ぬのか』という事である。神は信仰されている限りは神格を帯びて死ぬことはない。無論ある程度は殺せば死ぬだろうが、人間の『殺されて死ぬ』というのと神の『殺されて死ぬ』というのでは意味合いも違ってくる。それに大抵の神は不死身という性質を抱えていた。
神の場合再生する神もいるのだ。目の前にいるイザナミなどそのいい例だろう。彼女は国造りで一度死に、黄泉の国で生き返った。神格は失われていない。
最後に思い浮かべたのは、桃源郷にある極楽満月で見た白澤への手紙。
「わらわもまだ詳しいことは分からぬが、今イザナギが調べに行ってくれておる。しからば先にお前達へ伝えておこうと思うての」
「神が亡くなられたというのにその程度ですか?」
「■■■■は多神教の一人じゃからの。民間信仰は時として信仰者が少ない。アッラーが亡くなられる程にはいかぬじゃろう。ただ混乱はしておる」
頬へ手を押し当てため息を吐くイザナミも困惑はしているのだろう。鬼灯も本来死なないはずの神が死ぬなんてとはと思った。
「――ところで、なんて名前の神が亡くなられたんです?」
「だから■■……――あれ? なんて名前だっけ?」
さっきまではちゃんと名前を言っていた筈の閻魔が首を傾げる。イザナミが動揺を押し隠すように腕組みをした。
「覚えておらずとも仕方ない。信仰されなくなったという事は認知されなくなったという事じゃ。――存在すら、消えたのだろうよ」