【瑞獣】
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桃太郎視点
和気藹々とククリヒメの愚痴を聞いている白澤に、桃太郎は聞いたばかりの事実について考える。
神格が二つもあるなんて話は初めて聞いた。そんなことがあるのかとすら疑問に思うが、それへ答えてくれるであろう相手はククリヒメと話している。
桃太郎は室町時代当たりの物語の主人公であり、白澤ほど長くを生きてきた訳でもない。だから地獄や桃源郷の事はまだまだ知らない部分があり、神々の事情など尚更もって分からなかった。
ククリヒメが白澤の出した抹茶オレに機嫌を良くしている。やはり女性というべきか甘い物が好きらしい。
「いつもごめんねモリリン。アタシの愚痴にいつも付き合ってもらっちゃって」
「女の子の愚痴を聞くのも男の特権さぁ」
「もー、そんなことばっかり言う! 誰にでもそんな態度だとみんな勘違いするよ?」
「勘違いは困るなぁ」
「結婚しないの? 恋人は? 括ってあげるよ?」
「……難しいからいいんだよ、ククリちゃん」
白澤が寂しげに微笑むのに、無意識か意識的にかコイバナへ移行させようとしていたククリヒメが黙り込む。こっそり聞いていた桃太郎も思わず手を止めて聞き耳に集中する。
茶器が机とこすれる音。
「俺を“愛してくれる”存在は、みんな哀れだよ」
その言葉が少し耳に残った。
愚痴から移行しかけたコイバナをスルーしながら白澤とククリヒメの談笑は更に小一時間続き、日が傾き掛けた頃になっと満足したらしいククリヒメが立ち上がる。やっと帰るのかと薬を求めてくる者とは違う客が居るという状況に少なからず緊張していた桃太郎は、疲れを吐き出すようにこっそりと息を吐いた。
土産に、と白澤が奥の住居スペースへと入っていく。
「えっと、桃太郎君だっけ?」
「あ、はい」
「アタシが言えた義理じゃないけど、モリリンのことよろしくね」
彼女が来て初めて掛けられた言葉はそんなもので。
「モリリンは言わないだけですぐに一杯一杯になっちゃうから。でも放っておけない性質だし、アタシと違って吐き出すところもないみたいだし。昔なら女の子で遊んでたんだけど合わなかったらしくて」
「そうは見えませんけどね。狂ってるのは分かりますが」
「イザナミ様の話じゃ、昔はもっとマグロみたいだったって」
「マグロ?」
「止まったら死んじゃう、みたいな」
想像出来なかった。
「今のモリリンはね、『何も選べていない』んだって」
白澤がククリヒメに渡した土産は鬼灯へ渡すのだと言っていたチョコレートタルトで、愚痴を聞いているときは出し渋っていたのに渡して鬼灯には作り直すことにしたらしい。
店の出入り口で去っていくククリヒメを見送る白澤は、止まらずも死んでいるようないつもの白澤だった。
和気藹々とククリヒメの愚痴を聞いている白澤に、桃太郎は聞いたばかりの事実について考える。
神格が二つもあるなんて話は初めて聞いた。そんなことがあるのかとすら疑問に思うが、それへ答えてくれるであろう相手はククリヒメと話している。
桃太郎は室町時代当たりの物語の主人公であり、白澤ほど長くを生きてきた訳でもない。だから地獄や桃源郷の事はまだまだ知らない部分があり、神々の事情など尚更もって分からなかった。
ククリヒメが白澤の出した抹茶オレに機嫌を良くしている。やはり女性というべきか甘い物が好きらしい。
「いつもごめんねモリリン。アタシの愚痴にいつも付き合ってもらっちゃって」
「女の子の愚痴を聞くのも男の特権さぁ」
「もー、そんなことばっかり言う! 誰にでもそんな態度だとみんな勘違いするよ?」
「勘違いは困るなぁ」
「結婚しないの? 恋人は? 括ってあげるよ?」
「……難しいからいいんだよ、ククリちゃん」
白澤が寂しげに微笑むのに、無意識か意識的にかコイバナへ移行させようとしていたククリヒメが黙り込む。こっそり聞いていた桃太郎も思わず手を止めて聞き耳に集中する。
茶器が机とこすれる音。
「俺を“愛してくれる”存在は、みんな哀れだよ」
その言葉が少し耳に残った。
愚痴から移行しかけたコイバナをスルーしながら白澤とククリヒメの談笑は更に小一時間続き、日が傾き掛けた頃になっと満足したらしいククリヒメが立ち上がる。やっと帰るのかと薬を求めてくる者とは違う客が居るという状況に少なからず緊張していた桃太郎は、疲れを吐き出すようにこっそりと息を吐いた。
土産に、と白澤が奥の住居スペースへと入っていく。
「えっと、桃太郎君だっけ?」
「あ、はい」
「アタシが言えた義理じゃないけど、モリリンのことよろしくね」
彼女が来て初めて掛けられた言葉はそんなもので。
「モリリンは言わないだけですぐに一杯一杯になっちゃうから。でも放っておけない性質だし、アタシと違って吐き出すところもないみたいだし。昔なら女の子で遊んでたんだけど合わなかったらしくて」
「そうは見えませんけどね。狂ってるのは分かりますが」
「イザナミ様の話じゃ、昔はもっとマグロみたいだったって」
「マグロ?」
「止まったら死んじゃう、みたいな」
想像出来なかった。
「今のモリリンはね、『何も選べていない』んだって」
白澤がククリヒメに渡した土産は鬼灯へ渡すのだと言っていたチョコレートタルトで、愚痴を聞いているときは出し渋っていたのに渡して鬼灯には作り直すことにしたらしい。
店の出入り口で去っていくククリヒメを見送る白澤は、止まらずも死んでいるようないつもの白澤だった。