【瑞獣】
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夢主視点
巨大な扉に絡みつく鎖を、引きちぎろうとしているものの正体は『悪意』だった。
その悪意を生み出したのは人間だがその人間を創ったのは『神』で、神という概念を認知したのは人間だ。人に寿命があるのは神のせい。人の眼が綺麗なのは神の失敗。
愚かな人間を洗い流そうとした。けれどもその人間を土塊から創り上げたのが神だ。泥以外にも材料はあっただろうに。
世界に人を創る神の話は多々あれど、水や風から創られた人間はいない。
桃源郷の土の質が悪くなった。少し栄養の無くなった桃の幹を撫でながらアマネは思う。
「……信仰心が減ったのかなぁ」
誰にも認識されないものは存在しないのと同じように、神という存在は信仰されなくなるとその力を失っていく。座敷童子が家をなくすのと同じだ。
座敷童子は家に憑くとされている。その憑かれた家へ住まう者が座敷童子を敬い真面目に働けば富み栄えるというのが座敷童子に関わる話だ。逆に不真面目であれば富はどんどん減っていく。
神格というのはその富と似ている。人が敬い信仰すればどんどん神格は上がり神力も増すが、敬われず信仰もなくなればそれは“神ではなくなる”のだ。
神でないもの。妖怪や妖精、精霊や幽霊。人間や動物。
かつて中国に生息しているパンダは『獏』という神獣だった。だが人間がパンダのいる住処を暴き解明していったことによってパンダは神獣から動物に堕ちたのである。
今やもうパンダを神獣の『獏』として崇める者はいない。
「白澤様。店にお客さんが……どうかしたんですか?」
「仙桃を集めてただけだよ」
呼びに来たらしい桃タローへ振り返って返す。背負い駕籠にはまだあまり桃が入っていない。
「お客さん?」
「ええ。天女様です」
「最近天国の客多いなぁ。天人五衰がそんな頻繁にあるとは思わねぇんだけどぉ」
忙しいと今のアマネは心苦しくなる。漢方薬という本来は健康の補助をする為の薬を扱っているからだけではない。それが平穏でないという度合いを計るものにしているからだ。
桃タローと一緒に店へ戻ると薬を買いに来たのだろう天女が待っていた。他愛のない世間話を混ぜながら症状を聞いて、それに合った漢方を調合していく。桃タローがアマネを呼び戻したのは正解だった。まだ桃タローにはこの薬の精製法を教えていない。
薬を持って天女が帰っていくのを見送る。その上空から鳥の姿をした鳳凰が舞い降りてくるのが見えた。
この前来たばかりだというのにまた何か用かと思えば、人の姿に戻った鳳凰の手には天帝からの文書がある。
巨大な扉に絡みつく鎖を、引きちぎろうとしているものの正体は『悪意』だった。
その悪意を生み出したのは人間だがその人間を創ったのは『神』で、神という概念を認知したのは人間だ。人に寿命があるのは神のせい。人の眼が綺麗なのは神の失敗。
愚かな人間を洗い流そうとした。けれどもその人間を土塊から創り上げたのが神だ。泥以外にも材料はあっただろうに。
世界に人を創る神の話は多々あれど、水や風から創られた人間はいない。
桃源郷の土の質が悪くなった。少し栄養の無くなった桃の幹を撫でながらアマネは思う。
「……信仰心が減ったのかなぁ」
誰にも認識されないものは存在しないのと同じように、神という存在は信仰されなくなるとその力を失っていく。座敷童子が家をなくすのと同じだ。
座敷童子は家に憑くとされている。その憑かれた家へ住まう者が座敷童子を敬い真面目に働けば富み栄えるというのが座敷童子に関わる話だ。逆に不真面目であれば富はどんどん減っていく。
神格というのはその富と似ている。人が敬い信仰すればどんどん神格は上がり神力も増すが、敬われず信仰もなくなればそれは“神ではなくなる”のだ。
神でないもの。妖怪や妖精、精霊や幽霊。人間や動物。
かつて中国に生息しているパンダは『獏』という神獣だった。だが人間がパンダのいる住処を暴き解明していったことによってパンダは神獣から動物に堕ちたのである。
今やもうパンダを神獣の『獏』として崇める者はいない。
「白澤様。店にお客さんが……どうかしたんですか?」
「仙桃を集めてただけだよ」
呼びに来たらしい桃タローへ振り返って返す。背負い駕籠にはまだあまり桃が入っていない。
「お客さん?」
「ええ。天女様です」
「最近天国の客多いなぁ。天人五衰がそんな頻繁にあるとは思わねぇんだけどぉ」
忙しいと今のアマネは心苦しくなる。漢方薬という本来は健康の補助をする為の薬を扱っているからだけではない。それが平穏でないという度合いを計るものにしているからだ。
桃タローと一緒に店へ戻ると薬を買いに来たのだろう天女が待っていた。他愛のない世間話を混ぜながら症状を聞いて、それに合った漢方を調合していく。桃タローがアマネを呼び戻したのは正解だった。まだ桃タローにはこの薬の精製法を教えていない。
薬を持って天女が帰っていくのを見送る。その上空から鳥の姿をした鳳凰が舞い降りてくるのが見えた。
この前来たばかりだというのにまた何か用かと思えば、人の姿に戻った鳳凰の手には天帝からの文書がある。