【瑞獣】
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麒麟視点
白澤、という瑞獣がいる。
麒麟と同じく本来は仙界へ住まうべきモノだが、諸事情より桃源郷の管理守を引き受けて桃の園へ引きこもっていた。
その“諸事情”について詳しく知る者は少ない。中国では天帝陛下とその極限られた側近。日本では国産みの神話時代の数柱。それからイスラムとギリシャの古き神々。
そして麒麟や鳳凰の様な、『白澤という瑞獣』と同格の神獣が数名だけだ。だが神獣達のそれは“知らずに暴言を向けないように”という措置であって、同格故にという理由からではなかった。
全ての神々がそれを知っておく様にしないのは、白澤が狙われる可能性を下げる為である。
その事について天帝は危惧しておられるのだろうと麒麟は考えていた。上澄みの儀礼的な言葉しか交わせない立場であるから天帝はご理解なされぬのだろうが、白澤は“自身が狙われることは構わない”と考えている。
白澤の望みに自身の安全のことはない。あるのはあの『事象』が誰にも傷つけられぬことと、自身の死だ。
神は死ねない。神は殺されることしかできない。
麒麟には殺生が出来なかった。そういう生き物だからである。
同じように『白澤』という瑞獣も本来であれば殺生が出来ない。草花の一つも手折ることは出来ず踏み荒らすことも出来ず、ましてや自分の命を消すことなど無理なのである。
それを『慈悲深い』ととるかは人の信仰心次第だ。そして信仰がある限りは神は神のままである。
「白澤。おかわり」
「飲み過ぎじゃねぇ? トイレ近くなるぜぇ?」
「まだワシの膀胱はイケイケじゃ」
こぢんまりとした漢方薬の店。その気になればもっと宮殿の様な場所へ住むことも出来るだろうが、白澤はここが気に入っているらしい。日本の地獄へいる獄卒が来やすい距離なのだと言っていたのを聞いた覚えがある。
「上帝はなんと?」
「……西洋の動きが怪しいらしい。EU地獄のことは鬼灯にさりげなく聞いてはいるけど、あの子も興味あるのは地獄の事だけだしなぁ」
茶器をいじりながら白澤は答えた。その顔色からは何を考えているのかは分からない。
だから麒麟には白澤が本当は何を望んでいるのかは分からなかった。
「自分達も消えるやも知れんというに、浅はかな方々じゃのう」
「ふ――、当人達は真面目に考えてるんだよ。そう言ってやるなぁ」
まるでその浅はかな行動の先の結果を見たことがあるように白澤は笑う。
桃マンを頬張って、ずっと黙っていた鳳凰が口の中のものを飲み込んで白澤を見た。桃マンは白澤の手作りだ。
「この桃マンが食えなくなるのは困るな」
白澤、という瑞獣がいる。
麒麟と同じく本来は仙界へ住まうべきモノだが、諸事情より桃源郷の管理守を引き受けて桃の園へ引きこもっていた。
その“諸事情”について詳しく知る者は少ない。中国では天帝陛下とその極限られた側近。日本では国産みの神話時代の数柱。それからイスラムとギリシャの古き神々。
そして麒麟や鳳凰の様な、『白澤という瑞獣』と同格の神獣が数名だけだ。だが神獣達のそれは“知らずに暴言を向けないように”という措置であって、同格故にという理由からではなかった。
全ての神々がそれを知っておく様にしないのは、白澤が狙われる可能性を下げる為である。
その事について天帝は危惧しておられるのだろうと麒麟は考えていた。上澄みの儀礼的な言葉しか交わせない立場であるから天帝はご理解なされぬのだろうが、白澤は“自身が狙われることは構わない”と考えている。
白澤の望みに自身の安全のことはない。あるのはあの『事象』が誰にも傷つけられぬことと、自身の死だ。
神は死ねない。神は殺されることしかできない。
麒麟には殺生が出来なかった。そういう生き物だからである。
同じように『白澤』という瑞獣も本来であれば殺生が出来ない。草花の一つも手折ることは出来ず踏み荒らすことも出来ず、ましてや自分の命を消すことなど無理なのである。
それを『慈悲深い』ととるかは人の信仰心次第だ。そして信仰がある限りは神は神のままである。
「白澤。おかわり」
「飲み過ぎじゃねぇ? トイレ近くなるぜぇ?」
「まだワシの膀胱はイケイケじゃ」
こぢんまりとした漢方薬の店。その気になればもっと宮殿の様な場所へ住むことも出来るだろうが、白澤はここが気に入っているらしい。日本の地獄へいる獄卒が来やすい距離なのだと言っていたのを聞いた覚えがある。
「上帝はなんと?」
「……西洋の動きが怪しいらしい。EU地獄のことは鬼灯にさりげなく聞いてはいるけど、あの子も興味あるのは地獄の事だけだしなぁ」
茶器をいじりながら白澤は答えた。その顔色からは何を考えているのかは分からない。
だから麒麟には白澤が本当は何を望んでいるのかは分からなかった。
「自分達も消えるやも知れんというに、浅はかな方々じゃのう」
「ふ――、当人達は真面目に考えてるんだよ。そう言ってやるなぁ」
まるでその浅はかな行動の先の結果を見たことがあるように白澤は笑う。
桃マンを頬張って、ずっと黙っていた鳳凰が口の中のものを飲み込んで白澤を見た。桃マンは白澤の手作りだ。
「この桃マンが食えなくなるのは困るな」