【瑞獣】
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鬼灯視点
茄子や唐瓜達と『鬼は死んだらどこへいくのか』という話をしたことがある。鬼灯にも答えは分からないことであったが、目の前のこの男なら知っているのだろうかと思った。
「これならギリギリ期限に間に合うだろうけど、出来ればあと一日延ばして欲しいかなぁ」
「無理ですか」
「桃タロー君に作らせてみてぇヤツだから、多少ミスってもいいように?」
白澤の店で薬の注文をしにきて話し合っている最中。当の桃太郎は畑に行っているらしく、店には白澤とウサギしかいなかった。
領収書や注文書の整理をしていたのか、机の上には薬ではなく書類が広がっている。鬼灯が来た際に邪魔だからと無造作に机の端へ押しやられたそれの中には、どう考えても注文書でも領収書でもないモノが混ざっていた。
鬼灯でも見ることは滅多にない。中国の天界を統べる天帝からの文書だ。
とはいえ中国の瑞獣なのだから、天帝から手紙が来ることは別に珍しくはないだろう。ましてや『白澤』は妖怪を統べる長でもある。
日頃はこうして一鬼神に過ぎない鬼灯と敬語も無しに話しているが、鬼灯と白澤は本来であれば話しかけることすら難しい。それをふとした瞬間に感じてはイヤになる。
「どうしたぁ?」
「あれ、天帝からの文書ですよね」
「ああ、この前麒麟が持ってきたんだよ。……そっか、天帝に会いにも行かなくちゃいけねぇのかぁ」
今思い出したとばかりに言うが、それはそんな気軽に忘れていい内容ではない筈だ。
「じゃあやっぱり一日延ばして」
「天帝のご用事を一日で済ますつもりですか」
「だって別に重要じゃねぇもん」
スケジュールの書かれたカレンダーから目線も上げずに白澤は言う。
「俺は別に『好きにしろ』って言ってる。それを勝手に怯えて警戒してるのは天帝やいくらかの神々達だよ。誰かが勝手に排除したらその残骸を一つ残らずかき集めて貰うけどなぁ」
何の話か分からなかった。ただ白澤が『その残骸を一つ残らず』と口にするところで少しだけ幸せそうな表情を浮かべた事に気付いて、鬼灯はいつもの様に何とも言えない気分になる。
この人はいつもそうだ。鬼灯には何も教えてくれない。
死にたがりの神の獣。とはいえ白澤も神なので死ねない。神を神たらしめているのは人間の認知と信仰心だ。信仰がなければ神は簡単に神格を失って神ではなくなる。神に限った事ではないが誰にも認識されなければ、それは存在しない。
「……かき集める作業で期限を破らないでくださいね」
お茶を飲みながら言えば白澤は微笑んでスケジュールを調整する。その姿を眺めながら『天帝や神々が怯えて警戒すること』とは何なのだろうかとぼんやり考えた。
茄子や唐瓜達と『鬼は死んだらどこへいくのか』という話をしたことがある。鬼灯にも答えは分からないことであったが、目の前のこの男なら知っているのだろうかと思った。
「これならギリギリ期限に間に合うだろうけど、出来ればあと一日延ばして欲しいかなぁ」
「無理ですか」
「桃タロー君に作らせてみてぇヤツだから、多少ミスってもいいように?」
白澤の店で薬の注文をしにきて話し合っている最中。当の桃太郎は畑に行っているらしく、店には白澤とウサギしかいなかった。
領収書や注文書の整理をしていたのか、机の上には薬ではなく書類が広がっている。鬼灯が来た際に邪魔だからと無造作に机の端へ押しやられたそれの中には、どう考えても注文書でも領収書でもないモノが混ざっていた。
鬼灯でも見ることは滅多にない。中国の天界を統べる天帝からの文書だ。
とはいえ中国の瑞獣なのだから、天帝から手紙が来ることは別に珍しくはないだろう。ましてや『白澤』は妖怪を統べる長でもある。
日頃はこうして一鬼神に過ぎない鬼灯と敬語も無しに話しているが、鬼灯と白澤は本来であれば話しかけることすら難しい。それをふとした瞬間に感じてはイヤになる。
「どうしたぁ?」
「あれ、天帝からの文書ですよね」
「ああ、この前麒麟が持ってきたんだよ。……そっか、天帝に会いにも行かなくちゃいけねぇのかぁ」
今思い出したとばかりに言うが、それはそんな気軽に忘れていい内容ではない筈だ。
「じゃあやっぱり一日延ばして」
「天帝のご用事を一日で済ますつもりですか」
「だって別に重要じゃねぇもん」
スケジュールの書かれたカレンダーから目線も上げずに白澤は言う。
「俺は別に『好きにしろ』って言ってる。それを勝手に怯えて警戒してるのは天帝やいくらかの神々達だよ。誰かが勝手に排除したらその残骸を一つ残らずかき集めて貰うけどなぁ」
何の話か分からなかった。ただ白澤が『その残骸を一つ残らず』と口にするところで少しだけ幸せそうな表情を浮かべた事に気付いて、鬼灯はいつもの様に何とも言えない気分になる。
この人はいつもそうだ。鬼灯には何も教えてくれない。
死にたがりの神の獣。とはいえ白澤も神なので死ねない。神を神たらしめているのは人間の認知と信仰心だ。信仰がなければ神は簡単に神格を失って神ではなくなる。神に限った事ではないが誰にも認識されなければ、それは存在しない。
「……かき集める作業で期限を破らないでくださいね」
お茶を飲みながら言えば白澤は微笑んでスケジュールを調整する。その姿を眺めながら『天帝や神々が怯えて警戒すること』とは何なのだろうかとぼんやり考えた。