【瑞獣】
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夢主視点
この“世界”では、アマネの『兄』は事象だった。大いなる封印であるあの人は今でも世界の果てを封印し続けているが、どうやらその封印より後から“創られた”らしいこの世界では、その封印が存在し続けている事は当然の摂理のようだった。
だから永い年月の最中には、その封印を“無駄なもの”だとして廃棄しようと言い出す者が現れる。その行為がどんな結果を及ぼすのかも想像できない、カワイソウな考えの持ち主が。
世界各国の主神はそれを是としない。アマネはそれを『好きにしろ』と言う。
好きにすればいい。だが、廃棄するのなら“それ”はアマネが貰い受ける。そう宣言していた。
一介の瑞獣如きが、という声はアマネ自身不思議な事だが聞こえず、白澤としての『名』を与えた中国と、『黄泉道守者』の立場を与えた日本。『ヘカテ』として三界に跨る権能を寄越したギリシャ。そしてアラビア周辺の神々はそれを既に了承している。封印の廃棄は今のところ行なわれていないが。
当然と言えば当然か。封印を廃棄すれば本格的な『死』がこの世界を覆うのだ。そうなれば生者も亡者も神々も関係なく“消えてしまう”のである。
なのに長い年月の最中に不定期ながら現れる愚者。アマネが『面倒臭い』と思わずにいられたのはいつの頃までで、『もう少し傍観してやろう』と思うようになったのはいつの頃からか。
薬研ですり潰した枯れ草の、筋の部分がまだ残っている。それを潰そうとして手を止めた。
店の戸口を振り返れば従業員である兎が鼻を動かしながらアマネを呼びに来ている。その向こうには老人の姿をした麒麟の姿。
「主上の呼び出しをまた無視しただろう。わしは貴様専属の配達係では無いぞ」
「……天帝の呼び出し? いつの話だぁ?」
「数週間前だ」
「記憶に無ぇけど……ああ、俺まで伝達が来てねぇなぁ」
こめかみを押さえて『×××』で調べつつ、麒麟を店内へ促してお茶の支度をする。麒麟が好んでいる茶葉へ手を伸ばせば、麒麟は勝手に椅子へ座って懐から手紙を取り出した。
肩越しに見たその封の装飾からして天帝直々のものだろう。麒麟は専属の配達係では無いが、けれどもそんな重要物を運ぶには麒麟ほどではないといけない。
お茶を盆で運んでアマネも座り手紙へ手を伸ばす。
「その時はアンタも呼び出されたのかぁ?」
「いや、貴様だけだ。おおかた“いつもの事”だろうよ」
呆れた様子で吐き捨てた麒麟に、アマネは手紙の文面へと視線を落とした。
麒麟の言う通りいつもと代わり映えの無い内容。進展も何も無いのに律儀に知らせてくる天帝は、アマネの事を考えているのか怖がっているのか。
「何と書いてある」
「……変わらねぇよ。大いなる封印を排除してぇ奴等がいるってだけだぁ」
この“世界”では、アマネの『兄』は事象だった。大いなる封印であるあの人は今でも世界の果てを封印し続けているが、どうやらその封印より後から“創られた”らしいこの世界では、その封印が存在し続けている事は当然の摂理のようだった。
だから永い年月の最中には、その封印を“無駄なもの”だとして廃棄しようと言い出す者が現れる。その行為がどんな結果を及ぼすのかも想像できない、カワイソウな考えの持ち主が。
世界各国の主神はそれを是としない。アマネはそれを『好きにしろ』と言う。
好きにすればいい。だが、廃棄するのなら“それ”はアマネが貰い受ける。そう宣言していた。
一介の瑞獣如きが、という声はアマネ自身不思議な事だが聞こえず、白澤としての『名』を与えた中国と、『黄泉道守者』の立場を与えた日本。『ヘカテ』として三界に跨る権能を寄越したギリシャ。そしてアラビア周辺の神々はそれを既に了承している。封印の廃棄は今のところ行なわれていないが。
当然と言えば当然か。封印を廃棄すれば本格的な『死』がこの世界を覆うのだ。そうなれば生者も亡者も神々も関係なく“消えてしまう”のである。
なのに長い年月の最中に不定期ながら現れる愚者。アマネが『面倒臭い』と思わずにいられたのはいつの頃までで、『もう少し傍観してやろう』と思うようになったのはいつの頃からか。
薬研ですり潰した枯れ草の、筋の部分がまだ残っている。それを潰そうとして手を止めた。
店の戸口を振り返れば従業員である兎が鼻を動かしながらアマネを呼びに来ている。その向こうには老人の姿をした麒麟の姿。
「主上の呼び出しをまた無視しただろう。わしは貴様専属の配達係では無いぞ」
「……天帝の呼び出し? いつの話だぁ?」
「数週間前だ」
「記憶に無ぇけど……ああ、俺まで伝達が来てねぇなぁ」
こめかみを押さえて『×××』で調べつつ、麒麟を店内へ促してお茶の支度をする。麒麟が好んでいる茶葉へ手を伸ばせば、麒麟は勝手に椅子へ座って懐から手紙を取り出した。
肩越しに見たその封の装飾からして天帝直々のものだろう。麒麟は専属の配達係では無いが、けれどもそんな重要物を運ぶには麒麟ほどではないといけない。
お茶を盆で運んでアマネも座り手紙へ手を伸ばす。
「その時はアンタも呼び出されたのかぁ?」
「いや、貴様だけだ。おおかた“いつもの事”だろうよ」
呆れた様子で吐き捨てた麒麟に、アマネは手紙の文面へと視線を落とした。
麒麟の言う通りいつもと代わり映えの無い内容。進展も何も無いのに律儀に知らせてくる天帝は、アマネの事を考えているのか怖がっているのか。
「何と書いてある」
「……変わらねぇよ。大いなる封印を排除してぇ奴等がいるってだけだぁ」