【瑞獣】
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夢主視点
夕食をとりあえず三人前作ってから、鬼灯にメールで『座敷童子保護中。明日帰宅』とだけ送る。向こうでも心配していたのか直ぐに『今すぐ返せ』と来たがそれは無視した。
今すぐ返したところで問題が解決するようには思えなかったからである。
夕方の桃源郷の、店からそう離れていない桃の木の下で一子が座って兎を撫でていた。近付くと気付いた兎が一子の膝から飛び降りて振り返りもせずに巣へと戻っていく。就業時間は過ぎていたから別にいいのだけれど、その途端の一子の寂しげな雰囲気くらいは読み取ってやればいいものを。
座っている座敷童子の前でしゃがむ。
「迎えに来たぜぇ」
何も言わずにアマネを見上げてくる子供は、妖怪でも子供だ。
「……何も聞かないの」
「聞いて欲しかったら話しなさい」
「……。けんか、した」
そうだろうなと思いつつ言葉の続きを促す。
「お香さんにお菓子貰った。でも数分けられなくて、二子にあげるって言ったらいらないって言われた」
その後の展開も簡単に想像出来てしまった。おそらく奇数のお菓子をどちらが多く食べるかで言い合いになったのだろう。お互いに相手へ多く食べてもらいたいと思ったのか、それとも双子故に起こり得る『自分は姉だから妹へあげるもの』という精神か。
どちらも自分が姉なのだと思っていると時々そういう事が起こるらしい。解決案は既に多くの双子が見つけているというのに、そこへ至るのは結構難しかった。
何故なら双子達は自分達で世界を作り上げている。案の定眼を潤ませながら一子が話すのは、アマネが想像した事と大して変わりない。
双子の座敷童子として生きてきても、今までそんな局面は無かったのかもしれないと思ってしまって、アマネは二人の『妖怪』としての生を苦々しく思う。
泣いてしまう前に両手を伸ばして抱き上げた。
「じゃあ今晩は一人っ子だなぁ」
「……お前みたいな父親ヤダ」
「父親にしちゃ歳取ってるもんなぁ」
口ではそう言っても一子の手はアマネの服を握り締めている。妖怪ゆえに親を知らない筈だが地獄で知ったのか。
肩口で揺れている黒髪に『娘』を思い出す。あの子はこんな小さい頃はなかったし抱き上げたとしても横抱きやおんぶや、肩の上へ座らせるくらいだった。
だからこんな、小さな手で触れてくることはなかったのだ。
店へ戻ると桃太郎が頼んでおいた盛り付けを終わらせたところで、アマネが抱いている一子を見て苦笑する。ソレを見て一子が不満そうな顔をするのに食卓の席へと座らせた。
「いただきます」
「……いただきます」
夕食をとりあえず三人前作ってから、鬼灯にメールで『座敷童子保護中。明日帰宅』とだけ送る。向こうでも心配していたのか直ぐに『今すぐ返せ』と来たがそれは無視した。
今すぐ返したところで問題が解決するようには思えなかったからである。
夕方の桃源郷の、店からそう離れていない桃の木の下で一子が座って兎を撫でていた。近付くと気付いた兎が一子の膝から飛び降りて振り返りもせずに巣へと戻っていく。就業時間は過ぎていたから別にいいのだけれど、その途端の一子の寂しげな雰囲気くらいは読み取ってやればいいものを。
座っている座敷童子の前でしゃがむ。
「迎えに来たぜぇ」
何も言わずにアマネを見上げてくる子供は、妖怪でも子供だ。
「……何も聞かないの」
「聞いて欲しかったら話しなさい」
「……。けんか、した」
そうだろうなと思いつつ言葉の続きを促す。
「お香さんにお菓子貰った。でも数分けられなくて、二子にあげるって言ったらいらないって言われた」
その後の展開も簡単に想像出来てしまった。おそらく奇数のお菓子をどちらが多く食べるかで言い合いになったのだろう。お互いに相手へ多く食べてもらいたいと思ったのか、それとも双子故に起こり得る『自分は姉だから妹へあげるもの』という精神か。
どちらも自分が姉なのだと思っていると時々そういう事が起こるらしい。解決案は既に多くの双子が見つけているというのに、そこへ至るのは結構難しかった。
何故なら双子達は自分達で世界を作り上げている。案の定眼を潤ませながら一子が話すのは、アマネが想像した事と大して変わりない。
双子の座敷童子として生きてきても、今までそんな局面は無かったのかもしれないと思ってしまって、アマネは二人の『妖怪』としての生を苦々しく思う。
泣いてしまう前に両手を伸ばして抱き上げた。
「じゃあ今晩は一人っ子だなぁ」
「……お前みたいな父親ヤダ」
「父親にしちゃ歳取ってるもんなぁ」
口ではそう言っても一子の手はアマネの服を握り締めている。妖怪ゆえに親を知らない筈だが地獄で知ったのか。
肩口で揺れている黒髪に『娘』を思い出す。あの子はこんな小さい頃はなかったし抱き上げたとしても横抱きやおんぶや、肩の上へ座らせるくらいだった。
だからこんな、小さな手で触れてくることはなかったのだ。
店へ戻ると桃太郎が頼んでおいた盛り付けを終わらせたところで、アマネが抱いている一子を見て苦笑する。ソレを見て一子が不満そうな顔をするのに食卓の席へと座らせた。
「いただきます」
「……いただきます」