【瑞獣】
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唐瓜視点
唐瓜がソレに気付いたのは、少し前に鬼灯が現世から連れて来た座敷童子が、閻魔庁の柱を手も使わずに重力も無視して登っているのに気付いて何となく見た時だった。
「あ」
「どうしました」
「あ、いえ、座敷童子の髪型が違うなと思っただけです」
報告をしていた相手である鬼灯が、言われて気付いたとばかりに座敷童子の双子を見やる。改めて見やったその双子は、いつもの髪飾りを一つ付けただけのおかっぱでは無く、三つ編みを左右に二つ作りその先端を一つに纏めている髪形をしていた。
あいにく唐瓜にはその髪型の名前が分からないが、いつもと違ってもこれはこれで似合っていると思う。
鬼灯が二人を呼び寄せれば双子が無表情で寄ってくる。そうして揃って鬼灯を見上げる姿は、瞬きが少ないのでやはり少し怖い。ただ髪型でその怖さも多少軽減している気がした。
「それは誰かにやってもらったのですか?」
「偶蹄目がやってくれた」
「偶蹄目がやってくれた」
「……白澤さんが来たんですか」
桃源郷に住む薬剤師は唐瓜や茄子のことも会う度に頭を撫でてくれるが、どうやら座敷童子も可愛がっているらしい。子供好きなのかと思ったのだが鬼灯は違う事を思ったようだった。
「何か言われましたか?」
「座敷童子を嫌だと思ったことがあるか聞かれた」
「ないって答えた」
珍しく同じ言葉を繰り返さず言った座敷童子に、けれども唐瓜はそれより白澤が言ったらしい質問の方が気になる。座敷童子へ自分が座敷童子であることを嫌だと思ったことがあるのかを聞くと言うのは、なんというか、おかしい話だ。
だってそれは存在の否定だろう。座敷童子に限った事では無く、唐瓜が『唐瓜』として生まれた事を嫌がるような、自己否定も甚だしい。
「そしたら髪やられた」
「今度髪留めくれるって言った」
「そうですか……。ちゃんとお礼は言いましたか?」
「言った」
「言った」
双子自身白澤にやられた髪型が気に入ったらしかった。更には次の機会には髪留めをくれるとまで言われているらしく、無表情ながらも雰囲気が丸くなる。地獄の獄卒達は忙しくて二人を見てもそこまで手を出したりしないから、時々でもそう構ってくれる相手が嬉しいのかも知れない。
話は済んだのだと判断して座敷童子が飛び跳ねていく。その動きに合わせて小さく三つ編みが跳ねていた。女の子らしいというか、子供らしいというか。
「白澤様もああいう事なさるんですね」
「自分の髪が長いから他人の髪も弄るんじゃないですか」
そう言って無意識にか自分の髪を撫でた鬼灯を、唐瓜は見なかった事にした。
唐瓜がソレに気付いたのは、少し前に鬼灯が現世から連れて来た座敷童子が、閻魔庁の柱を手も使わずに重力も無視して登っているのに気付いて何となく見た時だった。
「あ」
「どうしました」
「あ、いえ、座敷童子の髪型が違うなと思っただけです」
報告をしていた相手である鬼灯が、言われて気付いたとばかりに座敷童子の双子を見やる。改めて見やったその双子は、いつもの髪飾りを一つ付けただけのおかっぱでは無く、三つ編みを左右に二つ作りその先端を一つに纏めている髪形をしていた。
あいにく唐瓜にはその髪型の名前が分からないが、いつもと違ってもこれはこれで似合っていると思う。
鬼灯が二人を呼び寄せれば双子が無表情で寄ってくる。そうして揃って鬼灯を見上げる姿は、瞬きが少ないのでやはり少し怖い。ただ髪型でその怖さも多少軽減している気がした。
「それは誰かにやってもらったのですか?」
「偶蹄目がやってくれた」
「偶蹄目がやってくれた」
「……白澤さんが来たんですか」
桃源郷に住む薬剤師は唐瓜や茄子のことも会う度に頭を撫でてくれるが、どうやら座敷童子も可愛がっているらしい。子供好きなのかと思ったのだが鬼灯は違う事を思ったようだった。
「何か言われましたか?」
「座敷童子を嫌だと思ったことがあるか聞かれた」
「ないって答えた」
珍しく同じ言葉を繰り返さず言った座敷童子に、けれども唐瓜はそれより白澤が言ったらしい質問の方が気になる。座敷童子へ自分が座敷童子であることを嫌だと思ったことがあるのかを聞くと言うのは、なんというか、おかしい話だ。
だってそれは存在の否定だろう。座敷童子に限った事では無く、唐瓜が『唐瓜』として生まれた事を嫌がるような、自己否定も甚だしい。
「そしたら髪やられた」
「今度髪留めくれるって言った」
「そうですか……。ちゃんとお礼は言いましたか?」
「言った」
「言った」
双子自身白澤にやられた髪型が気に入ったらしかった。更には次の機会には髪留めをくれるとまで言われているらしく、無表情ながらも雰囲気が丸くなる。地獄の獄卒達は忙しくて二人を見てもそこまで手を出したりしないから、時々でもそう構ってくれる相手が嬉しいのかも知れない。
話は済んだのだと判断して座敷童子が飛び跳ねていく。その動きに合わせて小さく三つ編みが跳ねていた。女の子らしいというか、子供らしいというか。
「白澤様もああいう事なさるんですね」
「自分の髪が長いから他人の髪も弄るんじゃないですか」
そう言って無意識にか自分の髪を撫でた鬼灯を、唐瓜は見なかった事にした。