【瑞獣】
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夢主視点
顔と一緒に焼け爛れた服は処分するしかない。当て布をしてもこれは直せそうに無かった。
桃太郎と鬼灯の視界から外れた場所で、すぐに人の姿へ戻る。そうして自分の両手を見下ろしてから、箪笥から新しい服を取り出した。
『瑞獣』の姿が好きではない。その姿になる度アマネが『人とは違うのだ』と再認識させられる気がするからだ。
白澤というものに成ってしまった今のままでも充分に人らしくない気がしているというのに、見た目さえ人とは違ってしまうことは、それ以上の恐怖を覚える。人の姿であればまだ『自分は人なのだ』と言い訳が出来る気がするのに、『瑞獣』の姿ではそれすら出来ない。
過去に一度、鳳凰や麒麟に『獣の姿は嫌ではないか』と尋ねたことがあったが、あの二人はアマネと違って鳳凰や麒麟である己を受け入れているから、別にそんなことは無いと言っていた。正直羨ましいと思ったものである。
アマネには『白澤』が受け入れられない。だからその白澤である証拠のような『瑞獣』の姿など、受け入れられない最たるものだ。
だが、それでもまだ『嫌い』にはなっていない。
『もふもふですね』
誰もが皆アマネにとっては忌々しいあの姿を『神々しい』とか『美しい』と褒め称え、内心でアマネがどう思っているのかも知らずにいた頃。一人だけ見当違いな褒め方をした子が居た。
たったそれだけで今もまだあの姿を嫌いにはならない自分も、大概だ。
他の者の前では天帝の前であっても極力なりたくないあの姿を許せるのは、大人になってもまだ見当違いな褒め方をするあの子のせいだろう。今の鬼灯がそれを分かっていて、あえてそう言っているのかは分からないが、嘘だとしてもその言葉と態度へ救われているのだ。
着替えを終えて腕に腕輪を嵌める。髪を結わえて店へ戻れば鬼灯と桃太郎がお茶を飲んでいた。桃太郎が気付いてアマネの分のお茶を入れに行くのに、膝へ兎を抱いていた鬼灯の隣へ座る。鬼灯は嫌がるかもしれなかったが、空いている椅子がそこしか無かった。
白衣の襟を直していると横から手が伸びてくる。顔の焼け爛れていた部分に触れたその手は、風呂で触られたものより体温が低い。
「なに」
「いえ。綺麗に治ってしまったと思いまして」
「治らねぇほうが良かったかぁ?」
「治ってしまったらあの姿にはなってくれないでしょう?」
「まぁなぁ」
「モフモフしていて好きなんですがね」
「触りたがるのはお前くらいだろぉ」
あんな化物に。
「……お前が言えばなるよ」
顔に触れていた手が頬を抓る。鬼灯は軽く抓ったつもりなのかも知れないが、鬼神の握力は強いのだからもう少し手加減して欲しかった。
顔と一緒に焼け爛れた服は処分するしかない。当て布をしてもこれは直せそうに無かった。
桃太郎と鬼灯の視界から外れた場所で、すぐに人の姿へ戻る。そうして自分の両手を見下ろしてから、箪笥から新しい服を取り出した。
『瑞獣』の姿が好きではない。その姿になる度アマネが『人とは違うのだ』と再認識させられる気がするからだ。
白澤というものに成ってしまった今のままでも充分に人らしくない気がしているというのに、見た目さえ人とは違ってしまうことは、それ以上の恐怖を覚える。人の姿であればまだ『自分は人なのだ』と言い訳が出来る気がするのに、『瑞獣』の姿ではそれすら出来ない。
過去に一度、鳳凰や麒麟に『獣の姿は嫌ではないか』と尋ねたことがあったが、あの二人はアマネと違って鳳凰や麒麟である己を受け入れているから、別にそんなことは無いと言っていた。正直羨ましいと思ったものである。
アマネには『白澤』が受け入れられない。だからその白澤である証拠のような『瑞獣』の姿など、受け入れられない最たるものだ。
だが、それでもまだ『嫌い』にはなっていない。
『もふもふですね』
誰もが皆アマネにとっては忌々しいあの姿を『神々しい』とか『美しい』と褒め称え、内心でアマネがどう思っているのかも知らずにいた頃。一人だけ見当違いな褒め方をした子が居た。
たったそれだけで今もまだあの姿を嫌いにはならない自分も、大概だ。
他の者の前では天帝の前であっても極力なりたくないあの姿を許せるのは、大人になってもまだ見当違いな褒め方をするあの子のせいだろう。今の鬼灯がそれを分かっていて、あえてそう言っているのかは分からないが、嘘だとしてもその言葉と態度へ救われているのだ。
着替えを終えて腕に腕輪を嵌める。髪を結わえて店へ戻れば鬼灯と桃太郎がお茶を飲んでいた。桃太郎が気付いてアマネの分のお茶を入れに行くのに、膝へ兎を抱いていた鬼灯の隣へ座る。鬼灯は嫌がるかもしれなかったが、空いている椅子がそこしか無かった。
白衣の襟を直していると横から手が伸びてくる。顔の焼け爛れていた部分に触れたその手は、風呂で触られたものより体温が低い。
「なに」
「いえ。綺麗に治ってしまったと思いまして」
「治らねぇほうが良かったかぁ?」
「治ってしまったらあの姿にはなってくれないでしょう?」
「まぁなぁ」
「モフモフしていて好きなんですがね」
「触りたがるのはお前くらいだろぉ」
あんな化物に。
「……お前が言えばなるよ」
顔に触れていた手が頬を抓る。鬼灯は軽く抓ったつもりなのかも知れないが、鬼神の握力は強いのだからもう少し手加減して欲しかった。