【瑞獣】
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桃太郎視点
風呂から上がってきた白澤は瑞獣の姿のままで、鬼灯が持っているバスタオルで毛並みを犬のように乾かされている。鬼灯も何をやっているんだと思ったが、彼は動物が好きらしいのでそういう事も好きなのだろう。となると完全に愛玩動物扱いな気がするが白澤は気付いているのか。
「鬼灯痛ぇ。目に入った」
「ああすみません複眼野郎」
「……ちょっと間違ってる気が」
ちょっとどころではなく間違っているが、白澤はそれ以上突っ込む気はないらしい。モサモサと白い毛並みから大人しく水気を払われている。黙々と手を動かしている鬼灯は鬼灯で、仏頂面ながら楽しげだった。
焼け爛れていた顔は既に治っている。ならばもういつもの人型へ戻ればいいのにと桃太郎は思うのだが、今の二人にその話を振っていいのかどうかも分からない。
棚の片付けを終えて、包帯の巻かれた兎を膝へ乗せて撫でながらそれを眺めている自分も、一番謎な気がする。だが仕事の指示を出す白澤があの調子では桃太郎も動けないのだ。
だからふと思ったことを口にしたのは、殆ど無意識だった。
「そういえば白澤さまってあまりその姿になりませんよね」
「好きじゃねぇからなぁ」
同じ瑞獣仲間である鳳凰などは、毎日テンション高くテレビの占いで鳳凰の姿を出しているというのに、桃源郷の監視守はそんなことを言う。
「この姿になるとより『化物』みてぇで嫌になる。ナミだってイザナギに見られて離縁の原因になった腐り落ちた姿には絶対になりたからねぇだろぉ?」
「や、それとこれは別なんじゃ」
「俺にとっちゃ同じだよ。自分が『化物』だと再認識させられて虫唾が走る」
吐き捨てるように言った白澤の、自己否定も甚だしい。彼は決して『化物』などではなく『瑞獣』だというのに。
「……じゃあ、今も本当は嫌なんですか?」
「今は――」
白澤の視線が白い毛並みをタオルで擦り続けている鬼灯へ向けられる。鬼灯はその視線に気付いているのか、そもそも桃太郎と白澤の話を聞いているのかどうかも分からない。
「――とりあえず平気だよ。まだ保てるなぁ」
その視線の意味は分からなかった。
満足するまで拭いたのか鬼灯が手を止めてタオルを畳む。そうして自分の努力の結果だとばかりに白澤の毛並みを手櫛で梳いて撫でた。今顔を埋めたら癒される気がする。桃太郎にそれをする度胸は無いが。
「終わりましたよ」
「謝謝。着替えてくる」
そう言って瑞獣の姿のまま奥の部屋へ向かう白澤を見送り、すっかり水気を孕んだタオルを桃太郎が鬼灯から受け取ろうとすると、鬼灯が口を開いた。
「あの姿を『神々しい』と思っているのなら、口にしないほうがいいですよ」
「え?」
思わず聞き返したが、鬼灯は意味ありげな視線をくれるだけで答えない。だから桃太郎も『聞かないほうがいいのだ』ともう一度聞き返すのはやめた。
風呂から上がってきた白澤は瑞獣の姿のままで、鬼灯が持っているバスタオルで毛並みを犬のように乾かされている。鬼灯も何をやっているんだと思ったが、彼は動物が好きらしいのでそういう事も好きなのだろう。となると完全に愛玩動物扱いな気がするが白澤は気付いているのか。
「鬼灯痛ぇ。目に入った」
「ああすみません複眼野郎」
「……ちょっと間違ってる気が」
ちょっとどころではなく間違っているが、白澤はそれ以上突っ込む気はないらしい。モサモサと白い毛並みから大人しく水気を払われている。黙々と手を動かしている鬼灯は鬼灯で、仏頂面ながら楽しげだった。
焼け爛れていた顔は既に治っている。ならばもういつもの人型へ戻ればいいのにと桃太郎は思うのだが、今の二人にその話を振っていいのかどうかも分からない。
棚の片付けを終えて、包帯の巻かれた兎を膝へ乗せて撫でながらそれを眺めている自分も、一番謎な気がする。だが仕事の指示を出す白澤があの調子では桃太郎も動けないのだ。
だからふと思ったことを口にしたのは、殆ど無意識だった。
「そういえば白澤さまってあまりその姿になりませんよね」
「好きじゃねぇからなぁ」
同じ瑞獣仲間である鳳凰などは、毎日テンション高くテレビの占いで鳳凰の姿を出しているというのに、桃源郷の監視守はそんなことを言う。
「この姿になるとより『化物』みてぇで嫌になる。ナミだってイザナギに見られて離縁の原因になった腐り落ちた姿には絶対になりたからねぇだろぉ?」
「や、それとこれは別なんじゃ」
「俺にとっちゃ同じだよ。自分が『化物』だと再認識させられて虫唾が走る」
吐き捨てるように言った白澤の、自己否定も甚だしい。彼は決して『化物』などではなく『瑞獣』だというのに。
「……じゃあ、今も本当は嫌なんですか?」
「今は――」
白澤の視線が白い毛並みをタオルで擦り続けている鬼灯へ向けられる。鬼灯はその視線に気付いているのか、そもそも桃太郎と白澤の話を聞いているのかどうかも分からない。
「――とりあえず平気だよ。まだ保てるなぁ」
その視線の意味は分からなかった。
満足するまで拭いたのか鬼灯が手を止めてタオルを畳む。そうして自分の努力の結果だとばかりに白澤の毛並みを手櫛で梳いて撫でた。今顔を埋めたら癒される気がする。桃太郎にそれをする度胸は無いが。
「終わりましたよ」
「謝謝。着替えてくる」
そう言って瑞獣の姿のまま奥の部屋へ向かう白澤を見送り、すっかり水気を孕んだタオルを桃太郎が鬼灯から受け取ろうとすると、鬼灯が口を開いた。
「あの姿を『神々しい』と思っているのなら、口にしないほうがいいですよ」
「え?」
思わず聞き返したが、鬼灯は意味ありげな視線をくれるだけで答えない。だから桃太郎も『聞かないほうがいいのだ』ともう一度聞き返すのはやめた。